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―暫く前・村から離れた都市―
[老婆が一人、町外れの建物を訪れた。
グルリと囲む高い塀に入口を見張る門番。
装飾入りの鉄柵がついている窓。
老婆は門番に一枚の木札を見せると中へと入ってゆく]
「叔母様!」
[居間へ通され暫くすると、一人の中年女性がやってきた。
嬉しそうに老婆に駆け寄り抱きついてくる]
「お久しぶりです、叔母様。
でもまだあの人は帰ってきていないのですよ。
この子が生まれる前にちゃんと帰ってきてくれるのかしら」
[女は全く膨らんでもいない腹を撫でながらクスクスと笑う。
老婆は女の頭を撫でる。その真白な髪を、ただ慈しむように]
「名前だってもう考えてあるのです。
男の子ならデーヴィド、女の子ならジュディス。
女の子にはアイリーンというのも捨てがたいのですけれど…」
[尽きることなく続く女の話を老婆は、ただ頷いて聞いていた。
女の育った国の言葉、向こう風の名前。
それらが今の姪の状態を表していた。
そう、過去の中で生きる女には、己の子供も認識はできない]
[集会場のほど近くの森の中を歩いていたら、大柄な男の人を見かけ。]
[瞬いて良く見れば見かけた人だと分かったので、ぺこりとお辞儀をして脇を通った。]
[ようやく集会場まで戻り中へと入ると、入り口に近くに立つ団員に軽く頭を下げた。]
[相変わらず向けられる視線は良いものではなかったが。]
[戻れば初めて見る顔が一つ。]
[ノーラがミハエルと呼んでいるのが丁度聞き取れたので、名前だけ先に覚え。]
[こんにちはと頭を下げた。]
[10年前。老婆が駆けつけた時には全てが終わっていた。
長男は客人を殺し、父親を殺し、妹を殺して。
生き残っていた客人によって返り討ちにあって。
母親である姪はその事実を受け止められずに正気を手放して。
残された末娘はまるで人形のような状態で。
老婆は知人に頼み、末娘の記憶を封じてもらった。
少女を引き取り、自分の孫娘として育てることを決めて。
全て表向きには、長男の錯乱による殺人事件として片付けられた。
それが真実で無いと知るのは、事後処理の中心にいた僅かな人数のみ]
[ノーラに自分の服も褒められ、少し頬を赤く染める。しかし、その後の何かを考える仕種から、先程マテウスも自分に気付いた事を思い出し、先手ではないがこう口にした]
ありがとうございます。
でも、そんなに高いものではないんですよ。それでもこの服とこの名前で、いつも領主様の次男様と間違われたりしますし。
ハハハ。服が良く見えるのも良し悪しかなと思ってたりしてます。
/中/
はい。入り直しとかすみませんでした。
よし、過去設定投下完了。
後は適当に他の人に付け足してもらおう(ぇ
やりにくくしてしまったのだったらそちらもごめんなさい。
うーむ、他の人と上手く絡めればいいんだけど…。
[続々と集まってくる容疑者達の様子に、本当に殺人事件の容疑がかけられているのか? と小首を傾げそうになりながら、新しく入ってきたブリジットに恭しく会釈した]
こんにちは。はじめまして。
私、ミハエルと言います。宜しくお願いします。
―現在・広間―
ミハエル様?
[ノーラの言い方に僅か首を傾げた。
けれどミハエルの言葉が説明と否定となったので、首を戻して]
あ、私はイレーネと申します。
よろしくお願いします。
[それでも身なりや物腰がどこか違ったから。
できるだけ丁寧に挨拶をした]
ジットも。
[またおかえりなさいといいそうになって。
どうして自分はこの呼び方をしてしまうのだろうと内心首を捻る]
紅茶、飲む?
[そろそろ入れ替えもした方がいいだろうかと。
ポットを手に立ち上がり、台所へ向かおうとして]
[自分の考えてることを読まれたみたいで驚いた]
[驚きを隠すようににっこり微笑んで]
あら、わたしも今、その間違いをする所でしたわ。
でもそれだけ、ミハエル様に品格や威厳が備わってるということかしらね。
そのお召し物、有名なお店のものかしら。
それとも専属の職人さんを召抱えてらっしゃいますの?
[ミハエルの洋服を眺めながら聞いた]
ブリジットです。ブリジット=クリングベイル。
宜しくお願いします。
[ミハエルに丁寧に会釈されて、慌ててこちらもふんわり笑って、深く頭を下げ返す。]
[彼が領主の息子と同じ名を冠している事には気づいていない。]
[そういえば何を宜しくお願いするのだろうかと、言った後で目を瞬かせたが。]
[イレーネに名を呼ばれ紅茶を勧められれば視線はそちらへと自然向き、こくこくと頷いた。]
[イレーネにも挨拶をされ、そこでようやく彼女とはまだ自己紹介を交わしていなかった事に気付いた]
あ、これはごめんなさい。マテウスさんと話している間に、自己紹介をしたものと思い込んでしまってました……。
[そう言って少し自分に失笑した]
改めて宜しくお願いします。
[そうした時に、台所に向かおうをした彼女を見て、ミハエルも動いた]
折角ですし、自分が紅茶を淹れましょうか?
確かにこのご時世で、裕福と呼べる家に生まれましたが、そんな品格や威厳なんて……。
[元々物腰柔らかいと職場や館内では噂されてはいたが、だからと言って自分に品格や威厳があるなどとは思っていなかった。
威厳は兄であり、品格は妹のものだという認識しかないのだ]
この服は領主様のお屋敷のある町の、表通りから少し裏道に入った場所に、知る人ぞ知る仕立て屋がありまして、時々新作衣装のモデルをするんです。
そのお礼として頂いたものなので、有名かどうかは……。
あ、仕立ててくれた方はメイリンとかいう東方からやってきた方ですけど、ご存知ですか?
―回想・集会場―
すみません、少し出かけてもよろしいでしょうか?
[そう自衛団員に訊ねたのは朝食の後。
予想通りに難色を示す男に穏やかに微笑を浮かべて]
ならばついていらっしゃいます?
そう遠くはありませんけど、逃げるとか思われたくありませんもの。
[その問いかけに男は首を振り「そこまではしない」と返した。
その様子に軽く苦笑をして彼女は集会場を後にした]
―回想―
[さくさくと、雪の積もった道を行く。
道、とは呼べないかもしれないその先に目的の場所…物があった]
こうして間近で見るのは久しぶりですわね。
[白い息を吐きながら見つめるのは、石造りの慰霊碑]
[朝の祈りを終え、昨夜の話を思い返し、そして、思い出したこの場所]
[ここに来たばかりの頃、神父に話を聞いた。
この慰霊碑に纏わる、遠い昔の出来事を]
……だけど、それも「聞いた話」と仰っていましたけど。
[だけど、重なってしまう。
それは年寄りが話す、そして多くは語らない「昔話」にも似て]
そんな事は…ありません……。何も、起きない筈です……もう。
[雪があるから跪くのは出来ず、立ったままで祈りを捧げる。
どうか、何も起こらぬように、と]
[広間に入ってきたブリジットに頭を軽く下げた]
[イレーネの入れてくれたお茶を一口すする]
[戻ってきた時、おかえりなさいと言われたことを思い出す]
[イレーネを見ながら考えた]
[帰った時にそう言ってくれる人がいるのは幸せなこと]
[おかえりなさいを言う相手はもういないけれど]
マリアが大きくなったら、また毎日言えるのかしら。
[誰にも聞こえない小声でつぶやく]
[暫くの間そのまま祈り続けて。
吹く風の冷たさに気付き顔を上げる]
戻りましょう…もしかしたらもう集まっているかも知れません。
[手袋をしているというのに冷え切った手を擦りながら、
来た道を戻っていく]
[集会場に戻れば先ほどの男がまだそこにいて、彼女に会釈をする。
戻りました、と会釈を返し、人の集まりを問えば、
「何人かが自宅などに戻っている」との返事が返る]
では…自衛団長さんからのお話はまだ先のようですね…。
[自分も一度戻ろうか、とふと思い、
だけど、それで皆を待たせては、と思い直して]
[男に礼を言い、そのまま集会場に入る。
広間で話す人たちに新しい参加者を見つけ、
だけど邪魔はせずにそのまま挨拶だけをして*二階へと*]
[紅茶を淹れようとイレーネに視線を向けると、彼女は小さく頷いてお茶のセットを...に渡してくれた。
...はそれを笑顔で大切に受け取ると、台所へ行きゆっくりと蒸らして葉の開いた状態を作り上げて、暖めたカップに回すように注いだ]
さ、どうぞ。
イレーネの紅茶を飲んでいるノーラの前には、ポットに入ったものを。新たに入ってきたブリジットとイレーネには、カップに注がれた紅茶を差し出した]
[品格や威厳を否定するミハエルの言葉に]
ミハエル様、そんなに謙遜することありませんわ。
[謙虚な姿は好ましく映った][服の話を興味深げに聞いた]
メイリンさん、ですか。お客様から、お名前だけは聞いたことありますわ。何でも、いくらお金を積まれても、気に入った相手でないと服を仕立てないとか。一度お会いしてみたいですわね。
[顎に人差し指を当て]
[紅茶を入れて戻って来るミハエルを眺めていた]
[目の前にポットを置かれた]
ありがとうございます。光栄ですわ。
[恭しく礼をすると、しばし会話とお茶を*楽しんでいる*]
[ありがとうございますと、ミハエルからカップを取り空いた席へと浅く腰掛ける。]
[歳が近そうな人には普通に話しかけていたが、物腰から、ミハエルには何だか敬語をつかってしまう。]
[こんな人まで被疑者なんだろうかと。]
[すぐ近くに居るリディやイレーネ、ノーラ、先ほど上に上がっていった、確か教会の人、もそうだったが。]
[どうしても人を殺すような空恐ろしい人には見えず。]
[だったら他の違う人なんだろうかとも思ったが。]
[憶測で人を疑うのは良くないからと、カップに口をつけて、紅茶と一緒に喉に流し込んだ。]
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