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うん。
[肩に魔獣の子を乗せたかの女は、歩いてゆく。
その後姿を見て、小さく息を吐いた。
それは、少し重たかったけれど。
そうして、少しの間を置いて、その後を追った。]
[絡みつくそれが、『複製』世界の干渉を受けた力なのは察しがついて。
振り払えなくはないものの、しかし、それが周囲に及ぼす影響は、読めず。
虚の力にて抑えようとしたのが、裏目に出たか。
弾き出されるような感触。
意識の、刹那の暗転──それを経て]
……ここは……。
[零れたのは、掠れた呟き。
周囲を見回せば、広がるのは緑の森。
しかし、そこが現実、であるのは、様々な要素から感じられた]
……弾かれた……か?
[顰めた眉は見えれど、振り払われることはなくて。
その痛み――狂いを、正しくあれと祈るよに宥めてゆく]
こちらも…
[道が開いたか、モニターの向こうが揺れて]
[機魔の言葉が終わると同時、大きな衝撃に身体が跳ねた]
――っ!
わわ、きゃ。
[唐突な揺れに、しばしおたおたわたわた。
それでも、保護者である時空竜が消える様子がモニターに映れば]
……時空竜!?
[上擦った声を上げて走り出そうとして──コケた]
[核を探査していたはずのオトフリートが空間から消えた。元の世界に戻ったと言う事なのだろうか。仮に別の時空へ飛ばされたにしても、それを司る彼ならば何とかなるだろう]
…『道』による送り出しはあのおっさん。
それ以外で外へ出せると言えば、核となった奴、だったか?
まだそれが出来る奴が居る、ってことか。
[この空間から自分達が出られていないことがその理由となるだろう。クレメンスが核だったのかも分からない。ただ、直前の口振りから何か知っているのは確かだった]
……ヘルガと、ブリジットか。
どっちかから話を聞くのが妥当かね。
[クレメンスが己に残した言葉。それを思い出し、ようやくその場から動き出した]
[動かされた腕は崩れるを留める程度、]
[短い揺れでは特に役も果たすまいか]
……。落ち着け。
[転ぶ仔竜を見て、ぽつり。]
[後ろから小さな足音が追ってくるのを、素知らぬふりして歩く。
足は先ほど出てきた窓のある館へと戻っていく。
時折、肩で小動物が鳴くのをあやしたりしながら。
靴が館の床を踏むまで、それほど時間はかからなかった]
いえーす、ざっつらいと
[にゅっ。やっぱり唐突にオトフリートの背後に登場]
お父さんなら、最後まで向こうに残ってるものだと思っていたけど
[にまにま]
うきゅう……。
[ふるる、と首を振りつつ、ぴょい、と立ち上がり]
だって、時空竜、落ちて!
それに、それに、ええと。
[何か上手く言えないみたいです。ちたちた]
なんか、おっきいのも、落ちてるし!
[おっきいの=心魔の事らしい]
とにかく、見てこないと、だよ!
[驚きに片手で胸を押さえ、機魔の言葉に瞬いて。
崩れかけた身体が倒れずにすんだは、なぜかを理解する前に。
彼の仔の上ずった声と、駆け出しコケた様子に振り返る]
セレス…!?
[反射的に指先を機魔から離し、セレスへと伸ばす]
……居ないようだな。
食後の散歩へ出た訳でも無いらしい。
元々が欠けたる三対だった、が。
[深く溜め息をついた。
台所あたりに行けば、食べかけの料理だか何かでも見つかるのではないだろうか。]
……お前、少しも感知出来なかったのか?
[突然背後に現れた気配。
とっさに飛びずさって距離を開けたのは、条件反射か]
……いきなり、背後に現れんでください。
[はあ、と。
零れ落ちるのは、疲れたようなため息]
こっちの意図とは関わりなく弾かれちまったら、どうにもならんのではないかと思いますが?
……。
余計なものは、拾わないでおけ。
[何が余計か、]
[其れは言うまでもなく。]
[天聖の獣が離れゆくを認め、]
[軋む腕で窓を開き]
[枠を乗り越えて下へと降りる]
[タン、]
[地に着く音は存外軽い。]
[時空竜が落とされし場所とは同じか異なるか、]
[其れは解ねど残存する心魔の力を辿り歩みゆく]
居ない、ね。
[困ったように返しつつ。
続いた質問には肩を落として]
うん、凄く揺れたから。空間そのものが。
今も何だか不安定な気がする、の。
[答えながら、フッと顔を上げた。
そんな中でも感じ取れる気配が一つ、館へと入ってくる]
[伸ばされた手と名を呼ぶ声。それに、保護者を振り返り]
ん、ボクは、へーき。
[にこぱ、と笑って。
窓から駆け出す機鋼の魔に向けて]
だって、落としとくと大変そうなんだもんー!
[何気に認識が酷いんですが]
[向かう先は館の広間。あそこにブリジットは居たはずだ。居場所が分かる者からまず話を聞こうと玄関の扉を潜り、真っ直ぐ広間へと向かう]
よぉ、ブリジット起きてっか?
[広間に居る者に訊ねながら確認をし。若干疲れた様子でソファーに腰掛けた]
[セレスの言葉に、目を見開く。
時空を司る彼の竜が"落ちた"としても恐らく無事とは思うなれど]
………アーベル殿、まだ…
[宥め終えてはいない左腕。そをそのままに出てゆく姿を見送る。
止められなかったか、止めなかったか、己が判らずに。溜息一つ]
[館へと入ってゆくヘルガを見る。
外で暫く、止まって。]
すすめたくせに、後悔なんて、しちゃいけないよね。
[困ったように呟いた。
命じていないのに、そっと花が出てきて、周りを舞う。]
ちゃんと、覚えてるよ。
僕は、……ティルの記憶を、遣り残したことを、後悔を、ずっとずっと、覚えてる。
だから、ここで―― ここの皆と話してるときくらいは、赦してよ。僕が、それを、心の隅においてしまうことを
[花の答えは、*彼にしか伝わらない*]
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