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[使用人の少女の声に、館に来た目的を思い出し、顔を引き締めた。]
ええ。アーヴァインさんに会いたくて、ここに来たの。
先に手紙を出してもらったんだけど、私が来ることって誰も知らなかったみたいね……。
アーヴァインさんには今、会える?
[もう夜も遅い時間に、不躾だとは知っていた。
それでも口にしたのは得体の知れない不安と、焦りがあったからだ。]
[どこか陰ったようなトビーの様子に、ふと眉を寄せる。
何かしら不安を抱えていると察する事ができたのは、自分も似たような状態だからだろうか]
……そんなに、不安になるんじゃないの。
しっかりしなきゃ、男の子っ。
[からかうように言いつつ、ぽん、と頭に手を置いて]
[また、新しい人間だ。
同じくらいの年頃の少女を、不躾にならない程度に観察する。
どうやらここには最初思っていたよりも多くの人間がいるらしい。
こんな大きな館だ。不思議ではないけれど、それが、自分と同じ年頃の少女が二人と、怪我人が一人だと、なんだか違和感を感じてしまうのは何故だろう。]
―… → 広間―
[ 広間の近くまで辿り着いて中を見遣れば、怪我人騒ぎの時とは一変したメンバーの上、見慣れぬ顔が増えている。ちらと運ばれた男を見て息を吐くも、次の瞬間には何時もの人の良さそうな微笑を浮かべ、入り口に佇む少女へと声を掛ける。]
今晩和。
そんなところに居たら冷えるし、中に入った方がいいと思うけど。
…元からここに…。
[ドアから離れ、鍵がかけられるのを待つ。]
先日の、ですか?
…姉の蔵書から調べようとしたんですが…
あれ?あの本…何処へ置いたんだっけ…。
[新たに広間へ現れた年端の代わらぬ少女に、目を丸くする。
赤毛の少女も、金髪の少女も、彼は知らなかった。
蒼髪の青年も、茶髪の青年も、彼は知らなかった。
辛うじて、コーネリアスさんの事は、鈍い痛みと共に思い出したけれど。
――いったい、どうしてこんなに人が集まっているのだろう?]
…っ!
あ、うん、はい…そうだよね。
[ぽんと頭に乗せられた温かな手とからかいを含んだ声に、日常を感じて笑みが浮かぶ。次いで、余計な記憶も思い出す。]
あーっ、そうだ! 酷いじゃないですか昨夜騙してっ!
ボク本当に怖かったんですからね!
[怪我人を起こさぬよう、客人の少女たちに聞かれぬよう、小声で猛抗議。]
―広間―
[暫し傷ついた男の様子を眺めていたが、深く眠った様子に一つ息を吐いて]
眠る事は良い事だ。
何よりも体力の回復に繋がるから。
後は、食べられるようなら何か口にしてもらえると良いんだけどね。
[そう言って。
見ず知らずの者にこうも気にかけてとも思うが、これは性分。
そしてふと目をやればいつの間にやら人が集まっていて、それに気付かぬほどに怪我人が心配なのかと自問して]
おや、いつの間にか人が増えたみたいだね。
[そういって笑いかける]
[少女の言葉に相槌を打つように頷き返す。
今会えるか、という問いには難しい顔をし、上を見上げた]
今…ですか…
[この館の主人は今日はまだ姿を見ないかの女性と共にいるのかもしれず、少しだけ言い澱んだ]
今日はお客様が多いもので、少々お待ちいただけるとありがたいのですけれど…
……お急ぎ、でしょうか?
[二人の少女から声を掛けられれば、僅かにはにかみながら静かにドアを開け、中に入る。
その仕草は、周りから見ればやはり本来の歳相応ではなく、幼く見えるのだろう。]
[しかし少女はそんな事を気にも留めず、金糸を僅かに漂わせながら小さく会釈をして、薄紅色の唇を僅かに開き――]
皆さんも…ここにお泊りの方ですか?
私も、昨日からお世話になっています、ウェンディと申します。僅かな時間ですが、よろしくお願いいたします。
[当たり障りの無い挨拶を述べる。
途中、ツインテールの少女の視線を僅かに感じたが、さして気にも留めず微笑を向ける。それは旅の途中で得た処世術なのかも知れない。]
[浮かんだ笑みにこちらも笑みで返し。
それから、小声の抗議にわざときょとん、とした表情でまばたいて見せ]
えー、騙してなんてないよお?
幽霊と勘違いしたのはトビーくんだし。
コーネリアスさんが優しいのはほんとだし。
[少なくとも、嘘は言ってないよー、と。
平然として言いつつ、くす、と笑んで]
…ほんと、何処へ置いたものやら…。
癖なんですよねぇ、持ち出したものを何かの拍子に置き忘れるのが。
…姉にも、よく怒られたものです。
[やや寂しげに笑いつつ。]
戻りましょう。先ほどの方の様子も気になりますし。
こんなに人がいたの……!
[来た時は寒々しいとさえ思えた広間が、今では狭く感じられるくらいだ。
計ったかのように一度に訪れた男達を、ヘンリエッタはざっと観察した。
皆、比較的若い者ばかりだ。アーヴァインの年齢に該当しそうなのは一人だけ。
その一人は明らかに聖職者と判る出で立ちだ。
ここに、自分が探す人物はいそうにない。]
また人が増えていますね、今晩和。
[ が、中に入って早々に見えたのは懲りもせず首を動かそうとして悶絶するトビーの姿。思わず苦笑が浮かぶ。]
……お前な……、いっそ其の頭、押えててやろうか。
『ばらの下で』と言う言葉はね、今この時に使うべき言葉なんですよ。
[先ほど閉じた扉の方に視線を向けつつ。]
そうですね、戻りましょうか。
[新しく来たと思われる金髪の少女が、見た目よりも大人びた挨拶をするのに少し違和感を覚えながら。
それでもまだ挨拶をしていない者たちにと此方も挨拶を]
ウェンディっていうのかい?
あぁ、そう言えばまだ挨拶をしていない人たちがいるんだった。
俺はナサニエル=ウォーレス。
暫くの間よろしくな。
[きょとんとした表情に、この子悪魔ー!と内心で叫ぶも口にすればその報復は以下略で。]
ぅー、勘違いしてるって判ってたくせにー!
”優しい”コーネリアスさんにも悪い事しちゃったじゃないですかー!
[やや涙目なのは、首の痛みのせいだ。絶対にそうに違いない。
無駄と知りつつ、なけなしの意地で言い返しては見たものの。どんどん集まる客人の前で、これ以上己の恥を晒すのは耐え難く。]
……もーいいです。
お風呂行って来ます…。
[逆に今なら空いてるだろうと、*浴場へと向かった。*]
[ ウェンディと名乗った少女の挨拶を耳にすれば、再び人当たりの良さそうな表情に戻り会釈をする。同様に、彼女と同い年くらいに見える赤髪の少女にも。]
俺はハーヴェイ=ローウェル……
とは云っても、此れだけの人間が居ては覚えるのも大変でしょうから、まあ適当に。
[ 例の怪我人の様子を見ていたらしいナサニエルへと視線を移して、]
……其方の方の具合は?
[少し瞳に心配そうな色を宿して問い掛ける。]
[使用人の少女の困ったような表情に、少し逡巡した。
当り前だ。彼はこの館の主。見知らぬ人間が突然尋ねて来て会わせろと言って簡単に会えるものではない。けれど]
急ぎ…じゃないけど、大切なことなの。
[次の言葉を言うのに、震えないよう息を吸い込んだ。心臓が一つ、大きく打つ]
娘が会いに来たと、伝えて頂戴。
[金の髪の少女の挨拶にかしこまって会釈をする。やはり綺麗な方だと思う]
ウェンディ様、ですね。
ネリーと御呼びくださいませ。
[他のまだ紹介を済ませていなかった者たちにもどうぞお見知りおきを、と付け加えた]
[蒼髪の青年に声を掛けられれば、ふわりと微笑んで頷き]
はい。あなたは…ナサニエルさんと仰るのですね?
僅かな期間ですが、こちらこそよろしくお願いいたします。
[優雅に会釈をすれば、長い髪が一筋、頬に零れ落ちた。]
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