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……出くわさなければ、その必要もない、とは。
楽観視に過ぎるか。
[イヴァンの言葉に浮かぶのは苦笑い。
事実、避けようとして出くわしている自分がここに、いる]
それが普通だ。
自ら、死を望むいわれは、ない……。
[それは、人狼にも相当するのだろうが。
敢えて考えには置かなかった]
[思考を繰り返し、ゆっくりと歩みを進め]
[辿り着いたのは一階の広間]
[中は人も疎ら]
[どちらかと言えば厨房の方に気配が多いだろうか]
[さして気にせずに広間のソファーへと近付き腰掛けた]
[思考を続けているために周囲への注意は薄い]
─ 一階廊下→広間─
―二階廊下―
[掛けられた声は、よく知る親友のもの]
おはよう、ナターリエ。
[こくりと頷くのは、手を上げるのに合わせて。
微かな匂いは気付いても、さして気にとめもせず]
…?
[ナターリエの前の扉が開いたのに、翠玉の眼差しを移す。
酷く、驚いた表情の人]
ああ、先生ど…
[扉が開き、中から出てきた人に声をかけかけるものの、どこか様子がおかしくて。]
どうかしたか?
[なにかあったかと姿を見ると、ブラウスに血がついているのが見えた。
怪我でもしたのかと、血痕箇所に視線が止まった。]
先生殿、それは。
[怪我でもしたのか?と、言おうとして。]
[廊下に出るとナターリエとゲルダの姿がみえて]
よぉ、ちょうど二人ともでるところか?
[ナターリエは部屋からでてきたというより、その部屋に向かったという感じで、
そこはゲルダの部屋の前でもなく]
どうかしたか?
[ふと鼻腔をくすぐるほのかな匂い、
自分にとってはなにかとかぎなれた匂い。
しかし今この場においてはあまり似つかわしくない。
ふとナターリエが前にたっている部屋から飛び出す人物に視線がいく。
たしかアーベルといったか]
っと。
[カップの片づけを始める様子に、一つ、瞬き]
ああ、そこは俺がやっとくから。
[とっさにこう言ってしまうのは、五年間の主夫生活の反応か]
指でも切ったらまずいし。
[言いながら、箒はどこだ、と周囲を見回す。
同時、カップを落としたウェンデルの様子も、気にかかり。
視線はふい、と上を向く]
[交わされる声]
[次々と][出て来る人]
あ、…ああ。
どうも。
[我に返るも]
…!
な、…何でも、ありません。
[血の痕]
[隠すように握り締め]
[扉を開け放したまま][横を擦り抜けようとし]
[名を呼ばれたことでハッと意識が戻る]
っと…おはようベアタ。
良く眠れたかい?
[先に居たことに気付けていなかったのが申し訳なくて]
[自嘲を含んだ笑みを浮かべて挨拶を返した]
[老婆の姿はいつも通り、広間の隅。
いつからいたのか、いつからいなくなっているのか。
そういう認識力がなくなってしまうような存在感。
老婆がずっと広間にいるのには理由がある。
ここからなら、全員の動きがどうなっているのか。それがある程度までなら分かるからだ]
……。
[2階で一体何が起きるのか。
それは、すでに予想はしていた。疑惑の種を振りまくために、自分が移動することも考えたが、自分などよりも、他の人が見つけたほうが効果は高い。
そう思った老婆は、やはり広間で座ったままだ。
穏やかな笑みを浮かべたままで]
[聞こえる話し声。
ふと、足元に目を落とす。
脱ぎ捨てた上着。
転がり落ちた万年筆。
ズボンのポケットに入れて、扉へと寄る。
白い袖の先には、覗く朱い花]
えへへ、実は、あんまり…
[わたしは照れたように笑いながら、自分の眼の下を示す。]
[クマができて少し色が悪くなってる。]
ゼルギウスさんは、今起きたところですか?
おはようございます、アーベルさん。
[何はともあれと、乏しい表情で挨拶を。
少しばかり、その様子を注視はしたものの、短い間のみ]
マテウス兄さん。
うん。あたしは、丁度部屋から出たところ。
[端的な言の葉を返す]
だいじょうぶ。
[ライヒアルトの申し出には、そう返して。子供はかけらを拾い集める。そして、中でも大きめのものを一つ、チュニックのポケットから出したハンカチに包んで仕舞い込んだ。特に動作を隠す様子もない]
何でも無いって。
怪我をしたなら、薬師殿あたりに見てもらったほうが。
[脇をすり抜け、何処かへ向かおうとするアーベルに手を伸ばすも、すでに自分からはやや遠い位置に。
講師の向かう先にマテウスの姿が見えたが。
こちらの会話は聞こえていただろうか。]
なら、いいが……。
[カケラを仕舞い込む仕種に、瞬きを一つ]
……なんに使うんだ、そんなもの?
[零れ落ちたのは、素朴な疑問]
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