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ああ。
無事だったかね、ヨハンくん。
いいや、
ヒルダは無事ではないのだったか。
メルセデスくんに聞いたよ。
いったい、どうしたというのかね?
村娘 マルガレーテは、おまかせ を力(襲う)の対象に決めました。
どうした、って言われても、俺にも何がなんだか。
神父様と一緒に、ヒルダとホラント探しにきたら、ヒルダが木の下に座り込んでて……。
その時には、もう、こうなっちまってて。
……なんか、ホラントも、なんかあったみたいっす。
姿は、どこにもないんだけど……森ん中に、あいつのお気に入りのランタン……壊れて、散らばって、て……。
……森で、ヒルダさんが……。
[言おうとして、迷い]
…あ、覗いては──!
[扉の先を覗こうとするのなら、慌てながら阻止しようとマルガレーテへ手を伸ばす]
そうですか。
[問いの答えには、楽しげな音を乗せて微笑みを浮かべた]
それでは後で味見はしてみませんとね。
時間が経ってしまうと硬くなってあまり美味しくなくなってしまうのですが…。
…けれどこの調子では、この村は直ぐに食べ物が無くなってしまいますね。
そうなったら、別の場所を探しませんと。
──貴女も、一緒にいらっしゃいますか?
[問いは甘く、優しく、少女へと投げかけられる]
ランタンが?
壊れて、
散らばって?
……。
大方、単に思わせぶりな噂をばら撒くだけじゃあ、
人の気を引けないと思ったのだろう。
ヒルダに関しては、そうだな、貧血でも起こしたんじゃないかね。
黒い森は謂れのある場所だ、
しかしだからと言って、些細なことに惑わされては、いけないよ。
御伽噺は、御伽噺に過ぎないのだからね。
そうは思わないかい、ヨハンくん。
非常識と思えることは、大抵、人の妄想から出来ている。
無事じゃないよ。
青いのと気付けと…野菜パンもかな。
おなかの中でぐるぐる、悪いものに変わっちゃった。
[ふよふよ、くるくる。二人の周りを巡る。
ヒルダが戯れても髪の一筋も揺らせやしない。]
…黒い森にいたせいかな。
今までヴェルナせんせのお薬で、こんなの聞いたことない。
ヒルダの情報網にかからないなんて、ないもん。
そりゃ、御伽噺は御伽噺かもしなんいっすけど!
俺も、弟寝かしつけるのに、使ってましたし……。
でも、あいつ、あのランタンは大事にしてたし。
いくら気を引くためとはいえ、壊すとか……。
服の切れ端みたいなのも、散らばってて。
……やっぱ、なんか、おかしいっすよ。
……ふむ。
まあ、何にせよ、だ。
今、これ以上、あの場に踏み込むのは、
それこそ森に喰われに行くようなものだ。
あの森も広い。そして、夜の闇は深い。
ひとまず、今は、ヒルダを連れて行くのが先だ。
君一人で支えて行けるかね?
私はこの通り、灯りが邪魔だ。
美味しくなくなるんですか?
残念…。
[視線を落とすも]
あ…。
そう、ですね。この配分で食べてたら。
もう、一週間も持ちません、ね。
…え?
は、はい…っ!
私も、神父様と…。
[其の声は歓喜と。別の色が混ざり]
…すみません、声を荒げてしまって。
ええ、見ない方が、良いです。
[そこにあったのは綺麗に半分欠けた、ヒトの形をしたもの。
これ以上人目に晒されぬよう、一度診療所の扉を閉める。
自分を落ち着かせるためか、マルガレーテを落ち着かせるためか。
彼女の頭を優しく撫でた]
……そう、っすね。
夜に踏み込むのは、止めた方が、いいかも知れない……。
[少しだけ、森を振り返って。
それから、村長に向き直って]
ああ、支えるのは大丈夫っすよ。
力仕事は、慣れてますから。
ずっと見ていたら、また食べたくなってしまいますから──。
[続く呟きは紅い世界に零れ落ちた]
食事は新鮮なうちに済ませなければ、ね。
ふふ、折角仲間となったのですから。
このまま置き去りにして餓死させてしまうのは忍びないですし。
では、食事が出来なくなったら共にここを出ましょう。
二人なら、食べるモノも得やすい。
[歓喜の混じる返事に瞳を細め。
優しくその頭を撫でてやった]
[くぅ。
小さなお腹の音。
見てしまったから、お腹が空いてしまった]
新鮮なウチ…ナマモノ、だから…?
はい、食べ物が、無くなったら。
一緒に…
[その呟きは紅に染まる。
微かに頬に宿る色と同じように]
いいえ、私も直ぐに扉を閉めれば良かったことですので…。
謝らないで下さい。
…けれど、どうしましょうか…。
ヒルダさんもそうですが、ヴェルナー先生がこのようなことになるなんて…。
ヨハンさん達も、大丈夫でしょうか。
[灯りを翳す。ゆら、ゆら、ゆら。診療所から漏れる光と混ざる]
……ああ、
そこにいるのは、メルセデスくんかね?
どうしたのかね、入り口で突っ立って――
[聞こえた小さな音には変わらぬ微笑みを]
そう、ナマモノだから。
やはり新鮮な物の方が美味しいのですよ。
[少女から漂う僅かな香りが食欲を掻き立てる。
今残りの食事を腹に収めてはいけないと自制しつつも。
先程舐めた余韻を探るように舌が自分の唇をなぞった]
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