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アレクセイさんを信用しているのは、付き合いが長いから?
……人狼であることに意識が薄いのなら、見知った相手を、仲がいい相手を襲いたくはない気がする……から。
――ごめんなさい。アレクセイさんを疑っているわけではないのだけど。
[髪に触れる指にヴィクトールの方を見て。
こちらを見てくる視線に向けるのは翡翠色]
私は、人狼じゃ、ない。違うわ。
[言葉で否定したところで、何になるというのか。それから目を一度伏せて]
それで構わないとは言っただろう?
それに――…、命と引換にでも口にするのはタチアナと決めている。
[静かに笑う響き。
"彼女"はあんなにも切ない表情をしているというのに]
イヴァンは、あの様子だ。
そんなに難しいことでもないだろう。
[下手をすれば、一晩中でも地下室に居るのではないだろうかとそう推察して]
[痛みが強いのか、苦しそうな、或いは切なそうにも取れる表情。
眼差しを伏せて、しばし広間に居る。
今度は、地下室に遺体を運ぶ役目は出来ない。
話しかけられれば応じもするだろうが、体力が戻るまで2階に戻ることは*ないだろう*]
君が死ぬことがあるなら、
タチアナを襲ってからであれば良いな。
[ 口喧嘩にしては下手な言葉で。
もしマグダラが死ぬことがあるなら、
タチアナも共に死んでいる状況なのかもしれないと振る。
そんな状況が可能であるかは分からない。]
僕の場合は御免被るが。
……、
僕一人でやれと。
[ 質問とも確認とも取れぬ聲。]
[受け止める手に掛かる力が酷く重く感じられたのは、
タチアナが気絶していた所為であり、自身の腕が細い所為。
目を逸らさずに胸元を確かめれば、きちんと上下して見えて、
眠っているだけだとは察したから、安堵の息を吐く。]
………僕は彼女を、部屋で休ませてくる。
[それでもベルナルトの顔色は優れない。
それでも、己一人でも、彼女を抱き上げて階上へと向かう。
記憶を頼りにタチアナの部屋までなんとか辿り着いて、
ベッドにその身を横たえた。]
そうだね。
アレクセイとは家族包みの付き合いをしてきたんだ。
小さい頃から、まるで本当の兄弟みたいに。
彼の両親にもとてもお世話になった。
[ 束の間、遠くを見る眼差しになった。]
ごめん。
僕のも勘でしかないんだ。
でも、確信出来る勘だ。
[ 翡翠色の眸に烏羽色の眸が微笑んだ。]
こちらを見て。
僕の眸を。
[ 一度伏せたきり上がらない視線に、
フィグネリアに声をかける。]
兄弟……。そう。だからあんなに気安く見えるのね。
私そういった人がいたことないから、良くわからないの。
[ヴィクトールの視線が遠くを見る。
微笑みに、応える笑みは微かに。
それから伏せた眼は、ヴィクトールの声に再び開いて彼の眼を見た]
そうだな。
そうでなければ、俺は死んでも死にきれない。
[御免被る。
その言葉に、憐れむように呟く]
――…耐えるのは、かなり難しいと思うがな。
この香がある限り。
[反論が返るだろう事は予想しつつも口に出さざるを得なかった]
ふむ。
逆に聞くが、怪我人にやらせる気なのか?
まぁ、手伝いはするし、喰らいもする気ではある。
―二階/タチアナの部屋から―
[扉を閉ざせば血の香りは遮られ、代りに感じる香草の匂い。
疲弊もあって微睡みそうになるのを、辛うじて堪えた。]
僕がもし人狼だったなら。
このまま、彼女を喰らってしまうのかな――。
[ふっと低く零れ落ちた声。
けれど己の鼻を擽る空気に満ちるさまざまな香は、
この身に何の飢えをも、渇きをも齎すことは無い。]
…………。
[それでも、タチアナのショールを畳んで枕元に置いた時、
露わになって見えた肌を前に、微かに息を零していた。
やがて男は何も言わずに、彼女の部屋を後にした。
自室のベッドに倒れ込めば、意識は直ぐに落ちていく。**]
[ 翡翠色の眸から視線を離さず真っすぐ見つめ告げた。]
君を信じてみたいと思う。
[ 信じると押し付けるのでもなく、
信じろと信用を強制するのでもなく、
信じてみたいと告げる。]
[ フィグネリアの額の上に唇を触れさせ立ち上がる。
無論、払いのけようとすれば*可能な速度で。*]
…………。
[ マグダラの予想に反し反論は返らなかった。
自分が死ぬその時に、
アレクセイが自分に襲われていないとは言いきれない。
可能性は潰しきれないのを理解しながらも、今は無事を願う。
全ては、その時にならなければ分からない。
自分がその状況を選べるか分からないなら特にだ。
沈黙に疑問の聲があがる前に、聲を返す。]
怪我は深いのかい?
[信じてみたい、と言うヴィクトールの言葉に見つめる翡翠が揺らぐ]
私、何かしたわけでも、ないわ……。
人を襲わないことは、約束出来るけど――――
[触れる唇に指先がぴくりと動く。
払いのけなかったのは、意識が追いつけなくて。
なぜ、と言う気持ちの方が大きく、離れれば指先で唇が触れた場所に触れる。
少し間が空いてから、、立ちあがったヴィクトールを見上げて、ありがとうございます、と礼の言葉を*かけた*]
[――…彼も薄々は気付いているのだろう、と。
返った沈黙に想いはすれど、指摘はしなかった]
怪我は――…。
アレクセイが言うところの、本を捲る位は出来る。
[ニキータには、あの様相からは分からなかったが、襲撃への備えが有った。
それが"彼"と"彼女"の傷を深くした]
人を喰らう分には、時間は掛かっても支障は無いだろう。
だから。
ヴィレムが準備をしたくないのなら、昨日と同じ様に頃合いを図って呼び出す事にするが?
[それでも問題ないのだと、何事も無いかのように口に*した*]
重症じゃないか。
………、
[ 黙っているのは素直に傷を案じられないからだった。
旅人の騒動がなければこんな事態にもならなかったが、かといって責めるのも違うように感じている。
やり場のない気持ちに蓋をすることもなく、かといって出す訳でもなく。]
― 自室 ―
[倒れる間際によぎったのは心配をかけてしまうと言うこと。
後でイヴァンと話そうと思った事。
重い身体は自らの意思では動けなくて、そのまま闇へと落ちる。
だからベルナルトが運んでくれたことも知らないまま。
くったりと力の抜けた身体をまかせることとなり]
――ん……
[ゆるゆると意識がもどったころには自室の中。
霞む視界を瞬かせてぼんやりと視線を彷徨わせる]
……あら……
[自室にいることに気づいて、一つ瞬き]
[身を起こせば着衣に乱れはなく、枕元に置かれたショールが見える]
誰が運んでくれたのかしら……
[ゆるりと瞬き。
ショールを手に取れば意識が途切れる寸前までを思い返して]
……ああ、ベルナルトかも。
――そうだとしたらお礼をいわないとね。
[小さく呟いて、ゆっくりと動き出そうとしたとき。
廊下が酷くざわめいている気がしてそっと、顔をだす**]
―朝―
[今日もまた、目覚めてから目許を指で拭った。
ぼんやりと視線が赴いた先、鏡に映る己の姿。
夢の中で綺麗だと撫でられた髪が、くしゃりと乱れていた。
目を伏せ、また何時ものように身支度を整える。]
………イヴァン、
[間接的にとはいえ、己もニキータの死に関わっている。
一瞬でも彼への疑いを抱いてしまったのも事実。
だから言い訳も、下手な慰めも、考えてはいない。
ただ、先日までのニキータに対するイヴァンの姿を見て
漠然と思い抱いていたことがある。]
共に居たのは、彼だったの、かな。
[ナイフを腰のポケットに収めてから、もう一つだけ。
ふたつの人影映す月夜の湖を描いたスケッチブックを
片腕に抱え、廊下へ出る扉をキィと開けた。]
[昨日と変わらず、二階の空気は生臭い。
否、昨日よりも更に濃い色にさえ思われた。
自室より少し離れた、昨日よりも近い処から伝う
鉄錆に似た匂いに、胸がとくりと鳴っていた。]
まさか、……
[その匂いの元は、訪ねようとしていた人の部屋の前。
息を呑み――扉に手を掛け、開け放つ。]
――――…、イヴァン。
[あかいいろ。動くことなくそこにあるもの。
スケッチブックが、ぱさりと床に落ちる。
男はその場に膝を突き、ただひたすら茫然として
その場の惨状を、言葉も無く見詰めていた。**]
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