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―西エリア―
[雑多な建物群を通り過ぎれば、視界が開ける。
周囲に広がるは、一様に薄く水を被り、如何にも足場の悪そうな湿地帯]
ここいらで良いかね?
[背後のユーディットに問い掛けながら、足取りは僅かに緩やかに、慎重さを持ったものになった。
靴底が水面に、そしてその下の泥に触れる]
(――成功だ……!)
[少女と鉄槌。二つの重量を支える右足は、湿地の泥にしっかりと支えられて立っていた。
正確には、湿地の泥を操る少女自身の『力』によって、だが]
さて……やるかいね、『万華鏡』さ。
[鉄槌の柄を両手でしっかりと握り、少女は向き直った]
[相手の蹴りを、飛び上がってかわす。駆け降りざまのため勢いがつきすぎ、ライヒアルトを飛び越えてしまう]
[振り返るのは、相手と同時。窓際の廊下、互いに手を伸ばせば届く、超至近戦]
(あいつもこっちも一撃必殺の間合いだ)
[考える暇も惜しみ、ナイフ、蹴りの連撃を放つ]
[その身体は青白く燐光を放ち、一撃一撃を帯電させていることが分かる]
野槌の娘 ロミが「時間を進める」を選択しました。
─中央部・廃墟─
ぬぅ、お姉さんと遊んでいるうちに、見ようと思ってた舞台には決着ついちゃってますし。
あー、直接観たかったなぁ。
[そうしてふらりふらりと歩いていたわけだが、]
…………げぇ。
[正面から歩いてくるのは、多分お互いに絶対的にそりが合わないであろう相手。
思わずスッゴイ嫌そうな声が漏れる。
こほん。ひとつ咳をすると、]
……何かご用ですかぁ?
[首を傾げ、にっこりとそう問いかけた。]
……ちっ!
[足払いの一閃はすり抜けられ、舌打ち一つ。
素早く向き直り、態勢を整える所に畳み込むようなラッシュが繰り出される]
だから、面倒だって……!
……っかたねぇな。隠し玉、見せてやるよ……!
[言いながら、手にした針を落とす。
繰り出されるナイフは、まともに受ければ大打撃は必至。
それに対し、翳される右腕は人ならざるモノ──鉤爪と鱗を備えし龍のそれ。
獣の神を求める者が鴉に与えた、異種の身体]
お題は、高くつくからなっ!
[龍鱗に覆われた腕でナイフを受け止めつつ、蹴りを何とか往なすべく、位置取りを変える。
背中には、窓。
勢いを殺しきれねば、飛び出すは必至か]
─中央部・廃墟─
[下品とも取れる嫌そうな声。探していたために、鉢合わせて顔を顰めることは無かったが、聞こえた声に軽く眉根が寄った]
この場に於いて用と言えば一つしか無いのではなくて?
[それでもすぐさま表情は笑みへと変わる。軽く首を傾ぐと、チリリとイヤリングが鳴った]
貴女に相応しい場所へご案内しようと思いまして。
わざわざ出向いて差し上げましたわ。
―西エリア―
…なるほど。
[少し盛り上がった土の上で足を止める。
泥濘の上にいるはずのロミの身体が沈んでいないことを確認すると、薄く微笑んだ]
ええ、良いですよ。
[左手を前方に構える。
黒瞳に白い光が走ると、手の中の髪ピンは長柄の鎌に変じ]
よろしくお願いします。
[三日月のような刃を上に構えて、軽くお辞儀をした]
/*
一体、あんたどないな状態なんですか。
→右目と右腕に、龍のパーツが埋め込まれてます。右の翼は切り取られて、龍翼に置き換えられているという。
普段は、ステルスさせてるだけでいつもちゃんと両翼使ってるのよー。
それはそれとして。
女の戦いがこわいよ、こわいよ(ぉぃ。
[巨大な爬虫類のように変化した腕の、金属で出来たような鱗にナイフが防がれる]
(厄介な…!)
[その腕がカウンター気味に入りかけたのを紙一重でかわしつつ、しかしかわしきれずコートが少し削げたが、蹴りを放つ]
[身体の位置を少し入れ替えられた上、鱗の上からでは大したダメージは与えられない]
[しかし体勢を立て直す為に攻撃の手を緩め、戦闘のイニシアチブを渡したくない]
[無理な体勢のまま身体を預けると、力づくで窓に押し付け、ガラスを破ってもろともに飛び出した]
\ さいごのガラスをぶち破れ〜 /
\ 乱れた景色を蹴散らして〜 /
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し' \_/ i />  ̄ ̄ ̄ ̄
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―西エリア―
[対峙した『万華鏡』の薄い微笑みが見える。
そして相手の手には、手品のように大鎌が出現した。
彼女の異能の一つ、武器生成であろう]
ああ。こっちこそよろしく――
[微かに頭を下げながら、意識はユーディットに向かう直線の経路へ。
足場を固め道とするように、『力』を注ぎ――]
お願いするだっ!
[まずは相手の力を量るべく、鉄槌を構え懐へ駆けた]
─中央部・廃墟─
[笑顔に対して笑顔で返される言葉。それに苦笑いを浮かべる。]
ですよねー。
[だが、スッと目を細めると、ぺろり指を舐める。]
まあ、でも素直に案内される気は無いですし、むしろ貴方がそこに行けばいいと思いますわ。
お・ば・さ・ん♪
……げっ……!?
[ふ、と掠めた嫌な予感は的中する。
無理な体勢のまま、掛けられる力。
逆らう暇も、空間を転移して逃げる暇もなく、そのままガラスを突き破って押し出された]
……いよっと!
[外に出た、と感じた瞬間、開くのは翼。
擬態を解いた事で、普段は隠している右の翼も姿を見せる。
漆黒の皮膜翼──龍の翼。
アンバランスな漆黒の両翼で身体を支えつつ、やや当てずっぽうな蹴りを繰り出しながら、距離を開けた。
このフィールドであれば、距離を開けた方が有利、と知るが故に]
─中央部・廃墟─
良く吠えますわね。
消耗を隠すための虚勢かしら。
[挑発するように紡がれた最後の言葉には全く反応しない。それは既に聞き飽きた言葉]
年上の女性を前にしてそのような言葉しか出て来ないのでは、語彙力もたかが知れますわね。
言い合っても平行線を辿るのは貴女も理解しているのでしょう?
それとも口しか動かせないのかしら。
そうだとしたら……そのまま地に伏せなさい。
[最後の言葉は低めに。右手にはバズーカ。銃口を地面へと突き刺した状態で引き金を足で踏むと、天に向けて排気しながら轟音を立てる。地面からは砂煙。一見見当違いな使い方のように見えたが、2・3秒後にカルメンの足元で爆音が轟いた。それは地下潜行型の爆破砲撃]
(飛び出したのは失敗だったか…!)
[窓の外に飛び出した直後に、翼を展開した相手を見て、どうにかくらいつこうとする]
[しかし相手の蹴りであっけなく身体は離れ、翼を持たないこちらは落下を始める]
[加速がつく前に右手のワイヤーを伸ばし、適当なビルの鉄柵に結びつけると、高速で巻き取って高度を得る]
[そして眼下、左右非対称の、しかしともに漆黒の翼の中心へ向け、左手でナイフを投擲した]
―西エリア―
まともに打ち合うは下策。
[藍の混じった瞳が細められる。
鉄槌の届くだろう範囲を見た目から予測しながら右後方へと跳んだ。
爪先に意識を一瞬集中させ、足をつける。
即座に蹴って次の動きとはいかないが、湿地に深く沈みはしない]
いささか不利ではありますね。
[言葉ほど困っているようには見えない顔で、ロミの左肩を横から薙ごうと狙って腕を動かした]
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