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取りあえず……どーすっかなぁ。
[額から、手を離して。
空を、見上げる。
一応、例の花冠は、持ってはいるのだけれど。
……周りからも散々突っつかれてはいるのだけれど]
悩んでても、仕方ねぇ、のかなぁ。
『……一度自爆してるしね、ユーリィ』
……言うな。
[相棒の突っ込みが。
ものすごく、虚しい]
[少女は、とぼとぼと、森から村へ向かう道を歩いている。いつも挨拶する、森の小動物や、道端の草花にも話しかけず]
はあ…
[らしくもなく、大きな溜め息]
[少女が、祖父の待つ森番の小屋に逃げるように戻ったのはゆうべのこと、そのまま閉じこもる気満々だったのだが、祖父に「祭りの火を貰ってきてくれ」と頼まれれば、断るわけにもいかなくて、結局、ランプを手に、元来た道を戻ることになったのだった]
[少女を送り出した祖父の顔が、何かいつもと違う笑みに彩られていたような気がするのは、気のせい…だと思いたい]
『で、ユーリィ』
……なんだよ。
『悩んでても、仕方ない気ー』
……お前も楽しんでんな……。
[肩の相棒を睨むように見つつ言えば、ネズミ、ゆらりと尻尾を振り。
それから。
青年より先に、回れ右する姿に気がついた]
『あー、ミリィだぁー。
おーい』
[両方に聞こえるように呼びかけるとか、どうなのかと]
[ユリアンの手に、ちらりと見えたのは花冠だったような気がする…気がするが、そんなことを気にする余裕は少女には無かった。精一杯の速度ですたすたすたと、柔らかい雪を踏みしめて…]
って……っとに、もう。
[ふと過ぎった嫌な予感が、的中した……と言えばいいのか。
雪に足を取られたミリィの様子にため息一つ。
……ふと、楽しげな視線を感じて。
その主を踏み潰したい衝動に駆られるものの、今は、それどころではなくて。
……帰るまでに思いっきり踏み潰してやる、と物騒な決意を固めつつ、ミリィの所へと、走る]
おーいっ!
大丈夫かあ?
[いや、人型ついてる時点で大丈夫じゃないから]
[わざとじゃない、わざとじゃないのよっ!何やら心で言い訳がましく叫びつつ、少女は埋もれた雪の中から起き上がる。かけられた声には振り返らずに]
だ、だいじょうぶです!一人で、立てますから!
[雪に手をつき、無理矢理すっくと立ち上が…ろうとしたが、当然よろけた]
一人でって、言ってる端から……っ!
[ぽふ、と。よろける体を受け止めて]
……なに、焦ってんだよ、っとに……。
[やれやれ、とため息一つ]
[受け止められて、少女の頭は一瞬、まっしろになった。また湯気を噴いてしまいそうになるのを、必死で持ちこたえ、体勢を立て直そうと試みる]
ご、ごめんなさい。ほんとにもう…大丈夫、だから。
[ふいに、何かが込み上げて、声が掠れる]
[少女は、ふるふると首を振る。ユリアンが鈍感で良かったと心の中で思ったとか思わなかったとか…そして、こくりと唾を飲み込むと、くる、と振り返って微笑む]
おとうさまとの話し合い、つきました?
[敢えて聞きたくないと思っていたことを聞く。そうでなければ、すぐにも泣き出してしまいそうだったから]
[向けられた笑みに、何か……押さえ込んでいるようなものを感じつつ。
それでも、それを問う事はせずに、一つ、頷いて]
……ああ。
まあ何とか、上手く収まった……かな。
取りあえず、森に帰って跡とる必要はなくなったし、ダーヴィッドさんの方も、最悪の事態は免れたって言えるし。
[そのための交換条件は頭痛のタネな訳だが]
……なんでかんで、この村から出てけなくなっちまったわ、俺。
[その頭痛はひとまず押し込めて。
ごく軽い口調で、それを告げて]
[「村から出てけなくなっちまった…」という言葉に、少女は大きく瞳を見開く。どんなに運が良くても、彼がここから出ていってしまうのは、確実だと信じ込んでいたので…それでもせめて、どこか同じ世界の空の下に居て欲しいと、それだけが唯一の願いだったのに]
…本当?
[どこか呆然と呟いて]
ああ。
迷惑かけた侘び代わりに、俺にここの守護者になれ、ってさ。
……まあ、親父引きずり出す時に力使いすぎてるから。
今、色んなイミで人とかわんねーし、どっか行くのも辛いし、それに……。
[ふと、言葉を切って。
目をやるのは、腕に引っ掛けた、銀の光をまとう花冠]
……これ、どーにかするのも、条件の一つだし、なぁ……。
[少女は俯いて、こしこしと目元を拭う]
私…あなたは、きっと…遠くに、行ってしまうって…
きっと、二度と会えないって…そう、思って…
[泣いてはいけない、と、ずっと思っていたのに、零れ落ちた想いは、止まらずに]
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