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[そして顔を上げてウェンデルを見る]
…花を持つもの、かな。
俺はそちらに関しては本当によく知らない。
ただ、証となるものがあるとしか。
[跳ね除けるような回答。
胸を押さえるような仕草に目を細める]
ウェンデル。
お前も、大丈夫か…?
[思考が霧に飲まれようとしかけた時に――かたと、箱が揺れた。]
…!
[箱の角、組み合わさった木板の僅かな隙間から、零れ落ちるのは銀色のきらめき。
立ち上がり、銀を追う。
それは窓辺から一度外へと流れ、粉雪に紛れて大気に溶けた。
再びそれが姿を現すのは、牙を持った獣の前。
銀の粒子は獣が触れえぬ結界となり、イヴァンのその身を守るだろう。
遠く、銀が動くのは感じ取れ。何が起こったのか理解できた。
イヴァンが起きていたか。牙を持つ者が一体誰なのか。
それは分からなかったが。
自分は、選んで、そして守れたのだと。]
…よかっ……。
[人知れず、部屋の中で膝をつき。
肩を抱くと、菫から零れた雫が、床に一粒、落ちて消えた。]
[マテウスの台詞は聞こえた。
しかし、何も口にはしない。
エーリッヒの問いかけにも曖昧に首を振るのみで。
無言のままに踵を返して、水場へと赴く。
付いて来る子供を、拒否することはなかった]
[エーリッヒの説明に]
なるほどな…、
[思案する姿はエ−リッヒにはどう映ったか]
これ、あいつが落としていったんだ。
[手にしてエーリッヒに見せたのは団長の鎧の欠片]
それと他に動物の毛玉、そっちはナターリエがもっている。
もし、その話が本当なら。
はめられたってことだな。
[床に横たわるアーベルを一瞥し大きく息を吐く]
[二階へ向かう途中の廊下]
[先程の騒ぎの痕が残る場所]
[そこにはウェンデルの姿]
[朱い痣とは別の紅を加えた手]
……っ!?
[不意に視界が揺らぐ]
[記憶の靄が、また少し薄くなった]
[今の彼と似た姿を、以前見たような気がする]
[あの時はもっと紅かった──]
[眩みに耐えている間にウェンデルは水場へと向かう]
[声はかけられず]
[眩みが治まった後に再び部屋を目指し二階へと]
[マテウスの声。ウェンデルの動き。
片腕は塞がったまま、階段の方を見た。
ベアトリーチェを抱えて階段を上がってゆくゼルギウスを見送る]
…わからない。
[毀れた呟きは、小さく。
疑っていたはずの少女。けれどもう一人疑っていた相手は人間だったという者が居る。
色々なものを見て。色々なものを聞いて。
そう、答えは変わる事だって、ある。
ならば]
─二階・ベアトリーチェの部屋─
[抱えたベアトリーチェをあやすようにしながら部屋へと辿り着く]
[扉を開け、中へと入り]
[寝台へ近付くとベアトリーチェを座らせ、その隣に腰を下ろした]
ベアタ。
大丈夫か?
[心配の色を浮かべ、少女の顔を覗き込むようにしながら声をかける]
そうだな。
疑惑の目を逸らそうと。
或いは、俺達の数を減らそうと。
[御伽噺。生き残るのは二つに一つ]
そういうことだと、思う。
[ゼルギウスの声は耳に届いたが、反応はしなかった。どこまでも平行線を辿り無意味だったからだ。
ゲルダに声をかけられ、翠をみやる。
問いには、間を置かず緩く頷き応えた。]
ああ。信じているよ。
イヴァンは、単純で馬鹿だけど。
嘘をついて人を陥れるような奴じゃない。
それくらい、分かってる。
[ずっと村に居たイヴァン。付き合いは、ゲルダと共に一番長い。
無条件で真っ先に信じらるのは、二人だった。]
ありがとうなエーリッヒ。
[考え込む様子に、邪魔をしないように簡潔な礼の言葉だけ述べ、
視線はイヴァンに向かう、
自分でもいけないとは思いつつも咎めるような視線となり、
話しかければきっとろくなことにはならないだろうと判断し、
イヴァンを避けるようにしながらもゲルダの傍へナターリエに向ける質問に視線がそちらへいく。]
[水に、手を浸す。
穢れを落とそうと。
冷たい。
冷えていく。
冷めてしまう。
手についた液体が流れ落ちても感触は消えず、朱い花も消えない。
それどころか、ますます、鮮やかさを増しているようだった。
替えたばかりの白いシャツにも、残る色。
あの男の衣服は、もっと赤く染まっていた。赤く、染めた]
墓守 ナターリエが「時間を進める」を選択しました。
傭兵 マテウスが「時間を進める」を選択しました。
うん。
ナターリエが、そういうなら的確、かな。
[ふ、と。
ゼルギウスとベアトリーチェの姿が無くなり、親友の保障が聞こえ。
緊張を解くように、息を吐いた]
良かった。
信じているのが、あたしだけじゃなくて。
[イヴァンを信じるのは、ずっと村に居たから。
ナターリエと同じ理由もあれど。
それとは別の要因の方が色濃いとは自覚している]
…休ませてくる。
[マテウスに頷き返し、そう告げた。
事ここに至っても右手で他者に触れるのには怯みがあって。
半ば肩に担ぐような形になってしまったが]
兄さん。
[抑揚に乏しい声で、呼びかける。
言葉を探すような沈黙。
決意したように、小さく口を開いた]
此処からじゃ、分からなかったけど…。
アーベルさんはどうなって、どうだったの?
[ウェンデルがエーファを伴い、場を離れるのと。
エーリッヒがライヒアルトを伴い、場を離れるのと。
翠玉の眼差しは、どちらをも捉えていた。
去る背に声を掛けたのは、]
エーリッヒ。
気を、つけてね。
[たったそれだけを言って、口を噤む]
――…く、ない。
悪く、ない。
僕は、悪く、ない………ッ
[押し殺した叫び。
これは『神』の下した命だ。
そう思う事で苛むような痛みは和らぐのに、何処かが軋む]
[凍えた指先は赤みを帯びる。
その色も今は異なるものに*思えた*]
[荒い息]
[危険なところにまでなっていたのが窺い知れる]
[呼吸を整え、声が発されるのを聞いてようやく少し安堵した]
良かった…。
…今日はもう休んだ方が良い。
何か食べたいなら、食べられそうなら、下から運んで来るけど…。
[結局二人とも食事をし損ねていた]
[食欲はあるかと一応訊ねてみる]
[ナターリエの返答、
それに安堵するゲルダ。
二人の様子に笑みをこぼして、頭をくしくしと撫でる]
二人が思ったより落ち着いて動けてるのは、うれしいな。
[ヨハナ、ライヒアルトと、エーリッヒの順に視線が向き広間の外にむかった面々を思いそちらに視線をやる。
エーリッヒの声が届けば]
ああ、今日はエーリッヒもゆっくりやすんだほうがいい。
無理でも休め。
[それは気遣っての言葉だが相手はどうとらえたか。
見送りゲルタの質問に]
殺された、ウェンデルに。
[飾りもなにもなく事実をそう伝え頭をゲルダの撫でる、しばし考えた後]
ライヒアルトがいうには人狼じゃないらしい。
そっか、ゲルダも。
[ゲルダがイヴァンを信じる、別な要因には気づいていないが。
自分もと、いう親友に柔らかに微笑む。
同じであることが喜ばしく。同時に、それなのに選んでしまった事に、少しだけ胸が痛んだが、奥底に隠した。]
…でも、だとしたら。
あの子は人狼、という事になるんだな…。
[視線を一旦ゲルダから外し、二階を見上げる。
この場からは既に消えた二人の影を追う。]
[ゼルギウスさんが、わたしの隣から去ろうとする。]
あ…。
[厨房に何か取りに行くだけ、というのは分かっていたけれど。]
[思わず、わたしはその服を掴んでしまう。気付くか気付かないか、それくらいの力で。]
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