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……。
[明くる日の早朝。
彼女は、神社の中にある斎場において、真剣な顔で舞を舞っていた。
その動きは非常にゆっくりではあるが、その一挙一動全てに神経を注ぎ込んだ神妙なる舞。
傍から見れば、それはなんとも荘厳かつ、神秘的なものだろう。
これは、毎朝かかすことなく繰り返している日課の一つである]
神楽───舞う。
[神楽、とは神に捧げる舞のこと。本来ならこれに雅楽なども加わるのだが、現在この神社には彼女一人しかいないので、そこまでは出来ない。
だがそれでも、非常に完成度の高いものだと、他人にも窺い知る事の出来るものだった]
ふむ。
日課おしまい、と。
今日はまあまあかな。
[神楽を舞い終えると、額にじわりと汗が滲む。
それだけの集中力、精神力、体力を使うものだった]
さーて、汗もかいたし、朝風呂でも浴びてこよっかな。
いい加減、うちもお風呂とかつけなくっちゃダメだなあ。
夏の間は水浴びでもいいけど、他の季節は寒いし。
[汗の染み付いた巫女服を適当に洗濯籠に放り込み、新しい服に着込むと、彼女は朝の太陽がまだ燦々と輝いている街へと繰り出した]
───→繁華街
どもー。
じっちゃん、また入らせてもらうよー。
[向かった先は、繁華街の中でも奥まった一角。
一体いつからやっているのやらとでも言うほど古めかしい銭湯である。
ここの魅力はなんといっても、そんじょそこらにはまたとない程の安さである。
また、繁華街にあるということから、朝帰りの人間の為に早朝から開いているというのも魅力の一つだ。
今時、番台が男湯と女湯のどちらも見える古めかしいつくりなのは問題だが、そこに座っているのがすで枯れはてているような爺さんなので、誰も気にしていない]
『おー……ようきなすったのー』
じっちゃん。今日も元気に枯れているねー。
ま。美女の全裸を見れるから、今日は一日絶好調だね。
『……孫のようなやつの裸見てものう……』
いや。そこは素直に喜んでおこうよ。
[簡単なやりとりの後、手早く服を脱ぎ捨てて、持ってきたタオル片手に入浴。
石鹸?シャンプー?
そんなもの持ってきていませんが、何か?
石鹸は、洗い場にあるカスを集めれば1回分になる!シャンプーも使い差しで捨て置かれたものに水を入れれば何とかなる!
そんなところにお金を使っている余裕は無いのだ!]
『……脱ぎっぷりもそうじゃが、やっぱ色気が無いのう』
聞こえてるっての。
[言いながら、石鹸とシャンプーを集めて、手早く全身を洗い、ゆっくりとした入浴タイムを始めた]
/*
そこで、風呂に行くあたり。
……あの御方じゃろか。
[どんな予測しやがったくろねこ]
さて。
後二人、なんとかならんもんかねー。
とりあえず、広報広報。
/*
うぬ、雪夜の反応があったら場面転換しようかと思ったんだけど。
21時までは待つ、か…?
ところで伽矢と言い雪夜と言い、一発変換で出ないオレの箱。
学習機能が初期化されたっぽいのはあるが、そうなると元々辞書に入ってないと言うことに。
確かこれ、一発変換で出るのを優先に考えたんだよ、ね…?
オレの箱が馬鹿なだけだろうk
─中央広場─
[背を向けた相手からの言葉はあっただろうか。
オレはそのまま繁華街へ戻るべく、中央広場へと足を踏み入れた]
………。
[再び訪れたその場所には、紅を纏う女性は居なかった。
そのうちまた現れたりするんだろうな、などと考えながら、広場の中を横切る。
流石に戻らなきゃ拙いか、と足は真っ直ぐ自宅へと向かって行った]
─繁華街・スナック『桃』─
[テレビの方を意識する史人の様子は気づいていても突っ込みはせず]
普通じゃない世界に興味をお持ちなら、その内見かけるかもですねぇ。
[くすり、笑う。
特徴ある本名はそのまま筆名として使っているから。
イニシャルから辿ろうと思えば辿れるはず。
そんな感じでのんびりと時間を過ごしていたところに飛び込んでくるのは、ピアノの旋律──携帯の着信音]
……ち。
催促か。
[音を聞けば誰かわかる、というのも嫌な話だが。
漆黒の携帯をポケットから出して、届いたメールを確認する]
[差出人は、今書いている原稿の担当編集者。
内容を見れば、零れるのはため息]
『Sub:要・生存証明
──────
ひーちゃん、生きてるなら現在の進度報告を持って生存証明をせよ』
[書かれているのは、たったこれだけなのだが。
いつもながら、書かれている呼ばれ方は頭が痛い]
……だからその、『ひーちゃん』、というのはやめれってーのに。
[思わず、グチめいた呟きをもらしつつ、ぱちり、と音を立てて携帯を閉じた]
─繁華街・自宅近く─
[通りにあるいくつかの店を通り過ぎ。
未だ開店中の母親の店の傍までやってくる。
自宅と店は兼用。
二階に住んで居るのだが、勿論表から入るようなことはしない。
オレは裏から入ろうと、幼馴染の家と自宅の間の路地を入って行った]
……さて。
うるさい監視が騒いでるんで、俺は俺の現実に戻りますか。
史さんは、どーすんの?
[携帯をポケットに入れ、ジャケットの内ポケットから財布を出しつつ、問う。
返事がどうでも、払いは別、と突き放すのは予定調和なのだが。
どうにもならないようなら、多分、貸しにしてしまうのは妙な甘さ故のこと]
んじゃ、俺はこれにて。
ご縁がありましたなら、また?
[払いを済ませたなら、冗談めかした口調で言って、店を出て。
ふらり、足を向けるのは、広場方面]
─中央広場─
[夜の広場は静かなもの。
静寂の中、視線を向けるのは桜の大樹]
……桜、か。
季節外れの満開話と、そこに現れる謎の人物、とかってのはよく取材したが……。
[呟きながら、煙草を一本、口にくわえて火を点ける]
あんまり、いいオチは聞かねぇんだよなぁ……。
[そんな呟きを漏らした後。踵を返して自宅へと]
[余談ながら、自宅に帰ってから返したメールには、
『ひーちゃん呼ぶな』
の一言と、現在の執筆量だけが記されていた。
らしい]
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