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きみは自らの正体を知った。さあ、村人なら敵である人狼を退治しよう。人狼なら……狡猾に振る舞って人間たちを確実に仕留めていくのだ。
どうやらこの中には、村人が4名、人狼が2名、占い師が1名、霊能者が1名いるようだ。
[リーンと鈴の音が広い座敷に鳴り響き、すうと音も無く襖が開く]
ようこそおいでになりました。
[現れたのは、真白の装束、紅の肩巾、真白の髪の麗人一人。莞爾として笑むと静かに人々を見渡した]
私は紅露(くろ)。この隠れ里を預かる天狗の神巫。皆様を、ほしまつりからお呼び致しましたは、我が鈴の音。人は、神隠しなどと呼び習わしておりますが、おいでになったは、皆様の御霊が我が鈴に応じてくださったため。
決して無理強いしてのことではないことを、どうぞお心に御留め置きくださいませ。
[柔らかな声音でそう告げて、手にした白銀の鈴を、リーンと鳴らす]
我らが皆様をお招きしたは、人の世を逃れて、我ら天狗の一族として暮らす方をお迎えするため。
しばしこの里に留まられ、一族にお迎え出来ると判じた方は、ここより異界の狭間を通り、我らが里に御連れ致します。
二日を過ぎると、お迎えの用意のために私は異界の狭間に下がらさせて頂きます。その後は一族の者がご案内を致しましょう。
どうぞ、その間、ごゆるりと御過ごしなさいませ。
[そうして、三度、リーン、と鈴の音が鳴くと、眠りの帳が人々を包み、後に残るは静けさばかり]
〔縁の外に放り出されし足は宙にて遊びて、
襖へと向けし紫黒は出でし者を認めるも、
鈴音が耳の奥に響く毎に瞼は下りてゆく。
麗人の声は届けども言の葉は返せず、
眠りの波に流されて意識は闇へ落つ。
りぃん、りぃん、りぃん……
*柔らかな声色は子守唄のやうに。*〕
…ゑゐか。…えいか。
[似通った姿の名を知れば、再び繰り返して自らのうちに落としこむ]
……?
[しんと響く鈴の音色に蜜色を少し翳らせ一つ瞬き、そして現われた神巫に僅かに瞳も細めよう]
…そち、は…… …
[嗚呼、と小さく声が振るえやがて鈴の音に吸い込まれるように意識は静かに──静かに落ちてゆく。
ぱたり、と細い指先は膝の海藍の上に*落ちようか*]
[天狗の神巫の告げし言葉に、琥珀はゆらりゆらと揺れ、]
神隠し…ああ、そうであったか……
[白の姿もゆらり揺れ、ふわり眠りの淵へと*誘われ*]
[眠りに捕まった後、何が起きたか知るよしもなく]
[しっかと掴んだ小兄の着物]
[用意された布団に、大兄によって寝かされた]
[……顔が歪むのはどれほど後か]
[声ならぬ悲鳴が喉の奥でひきつれる]
[先は酒精による眠りであったのに、今は悪い夢精がいたづらを仕掛けたか]
[飛び起きて、首筋に手をやる]
……あらん
[かすれた声がこぼれて]
[あわてた様子であたりを見回す]
[童子たちは働いている]
[大兄、ねえや、それから小兄]
[みんな寝ている]
……ゆ、め。
[ふると震えて]
[小兄を起こさぬように]
[*再び布団へ身を戻した*]
――――。
[ゆるり、ゆるり、静かの内に、眠りの内から引き上げられる、そのさなか、幽かにみゆるは―]
――
[呼ばわりし名は何処にも*届かず*]
[音もなく睫毛が震え、ややして琥珀が現れる。
ぼんやりと身を起こせば肩から薄布が滑り、ぱさりと落ちる。
その音にびくと辺りを見やれば、昨夜のまま眠りの淵にある姿。]
……ああ。
夢か現か幻か…天狗の掌の上たれば、何処に違いがあるのじゃろ。
[諦めを帯びし声音は、かすれて小さく。
目覚めたと気付きし童たちがさざめきつつ朝餉に誘えば、逆らうことなく席へつく。]
[温かな粥が胃の腑へ落ちれば、人心地もついて。
僅か柔らかくなった眼差しで礼を言う。]
馳走になった。
…身を清めたいのじゃが、何処で…
[言い終わらぬ内に、手に手を袖を引かれて。
館の隅の一角へと誘われる。]
[*しばし小さな水の音*]
[音彩が目覚めるよりも前の事。
ゆる、と夢に囚われて]
……やぁ……だよ。
[小さな小さな声がもれ、鞠抱く手には力がこもる。
目覚めに至るは*まだ先のよう*]
[身を清めて戻れば、縁側へと腰掛けて。
何をするでもなく、ぼおと流るる雲を眺めやる。
いつの間なにやらその傍に、童の運んだ冷茶と干菓子。]
…かたじけない。
[見守るように、隠れるように。
さざめく笑い声は聞こえずとも、ちらりちらりと垣間見えし衣に短く礼を告げ手を伸ばす。]
[朝顔・貝殻・せせらぎと並ぶ可愛らしき一粒を口に含む。
僅か顰められし眉は甘さゆえか、袖に染みし花の香りゆえか。]
〔部屋の一つを借り和紙を貰い受けて、
右には筆を持ち左では頬杖を突きて、
外の景色を覆う真白を眺めつつ物思う。
書きしものは多様なりか、否、唯一なりて、
あやめにアヤメに菖蒲に文目に綾目にと、
同じ言の葉を幾つもの文の字にて綴れり。
けれども何れが真実なるかはわからずに、
唯ただ茫と記憶の水底を漂うばかりなり。〕
〔筆を置きて立ち上がり襖を開きて廊下ゆく。
陽は昇りしか沈みしか移ろうか、
或いは変わらずそこにありしか、
時を知らせぬ空は何の色とも見ゆる。
咲笑ふ童子らが歩む女の傍を通り抜ける。〕
[喉を潤す冷たき緑茶に、撫子色が微かに綻ぶ。
誰もいないを良い事に、やや濡れた唇に親指を押し当てて、]
…甘露じゃな。
[行儀悪く舐め取れば、も一つと花の形に手を伸ばし。]
[閉ざされていた目が開き、小柄な身体が跳ねるように起き上がる。
抱えていた鞠が手から離れ、ころり、転がるのにも気づかぬまま。
瞳はしばし、芒と周囲を見つめ]
……ぁ……れぇ?
[零れたのは、小さき声]
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