集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が5人、人狼が2人、占い師が1人含まれているようだ。
[一瞬]
[表情が強張ったことに]
[気付けただろうか]
[ゆるり]
[何気無い様で顔を]
[体ごと背ける]
急がなければならないな。
のんびりしていては出立出来なくなってしまう。
[あからさま過ぎる]
[話題の転換]
[ふと、締め切られていたはずの部屋で冷気を感じる]
[小さく口ずさんでいた歌を止め]
…何だか静か過ぎるわね。
[ポツリと呟いた]
…主。マイルズ様。
[名を呼ぶ声は普段より些か強く。
背ける主に手を伸ばすも宙を彷徨う]
俺は…
貴方の望むように、して頂きたいと願います。
そして、何処まででもそれに付き従おうとも。
[言いたい事は上手く言葉にならずに]
けれど。
…………その眼は。
[拳を握れば、僅かに震えを持つ]
ま……考えても、仕方ねーか。
……主義にあわねえ仕事なら……蹴っ飛ばすのもアリだしな。
[ひとまず、こんな呟きをもらして自己完結した後。
ゆっくり、集会場へと]
[息を吐く]
[背を背けた侭で]
……ああ、お前の察した通りだ。
[其れ以上は何も言わず]
[腕を組み]
[頭を垂れて]
……私の望むように、か。
[望みは]
[最初から唯一つで]
[けれど]
[決して口には出来ぬもの]
…今日は誰も居ないなって思ったら少し寂しくなっちゃって。
[小さな苦笑と共にそう答えて。
寒そうな様子に気が付き、慌てて台所へと。
あまり上手ではないけれど、温かい紅茶を用意しようと]
[少し濃くなってしまったかもしれないが、どうにか無事に淹れて。
扉の音に気が付けばカップは余分を持った数用意した]
こんばんは、カルロスさん。
紅茶、いかがですか?
[セットの乗った盆を軽く持ち上げて見せた]
[扉を閉めた所で、呼びかけに気づいて振り返り]
お、紅茶?
外、冷えたしな〜。ん、相伴するわ。
[軽く言いつつ、テーブルに近づいて椅子を引き]
……、
[小さく振られる首]
命を賭してでも護ると誓ったのに――
結局、俺は、…無力で。
[下りた腕は身体の傍らに。
血の滲む程、固く握り締め]
何も出来は、しませんでした。
[テーブルに着くのを見れば、ポットからカップへと注ぎ]
…苦手でなかったら、ミルク入れたほうがいいかもしれません。
[その色を見て思わず手が止まる。
自分の不器用さに少し落ち込みながら二人にカップを差し出した]
[僅かに香るのは]
[緋色の]
[背けた侭の顔を]
[彼へと向き直して]
[一歩近付き]
[垂れる腕を引いて]
[引き込むと同時]
[扉を閉じる]
……そうでもない。
此れでも私は、色々と感謝をしているのだがな。
[手を]
[抵抗が無ければ]
[開かせようと]
[注がれる紅茶の色に、僅か苦笑して]
ありがとさんっと。
とはいえ、俺、紅茶は必ずそのまんまで飲む主義なんで、心配御無用。
[それは一体、どんな主義なのかと]
……いっつも自分で淹れてるからなー、俺。
たまにゃ、人に淹れてもらって飲むのも悪くない。
[カップを受け取る瞬間、苦笑とは違う笑みが浮かぶ]
[引かれる腕。
閉じられた扉。
瞬かれる緑の瞳]
俺は、何も…
今だって、…望むように、などと言っておきながら。
貴方が危険に遭うくらいならば、家に帰って頂きたいと。
そう、思ってしまって、います。
[手を開けば落ちる緋。
穢れの色だと、思う]
[落ちようとする緋を]
[指先で掬い上げ]
[何を思ったか]
[口に含んで]
……危険、か。
お前は何を以って危険とする?
命の危険をと言うならば……
[更に伝おうとするのを]
[直接]
[舌で掬おうと]
何処に居ようと、変わりはあるまい?