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あー、本業っつーても。
親父もまだバリバリの元気だしなぁ。
俺の出る幕なんてまだまだ……
[そこで向こうの方から掛けられる声。]
んあ? 絵師殿って兄ちゃんのことだよな。
あー、なんとなく把握。いってらー。
[図書館へ駆けていくミハエルを見送り。]
まあ、若いのは無茶してなんぼでしょ。
いいのいいの、死なない程度に無茶すれば。
[へらり、と笑いながら言って。
続いた言葉、笑みを帯びた部分には、むぅ、と眉を寄せ]
……お前が言うと、妙に現実味があるのは、なんでなんだかねぇ……。
[肺活量は兎も角として、だが然程体力があるわけでもなく。
図書館の入口の手前で一度立ち止まり、息を吐いてから]
失礼します。
[声を掛けて、扉を潜った]
[きゅんきゅんいうユリアンの腹の音に
きょとりと周りを見渡す。]
…何のおと?
[笑顔で、駆け出すミハエルの背中を見送った。]
―大衆食堂―
うっはー おいしそー!
「がっつくなこら。で、お前まーたもぐってたんだって?」
う゛。食べてるときに言わないでよおっちゃん。
良いじゃんか別にへるもんじゃないしー
ちゃんと貝殻だって置いてきてまーす!
「そういうことじゃねーだろ?」
ああんもー、仕方ないじゃんー!
そこに『海』があるんだよ!
『海』の向こうに何があるか、おっちゃんは気にならなかったのー!?
ユリアンは『空』なんだし、被ってないから良いじゃーん
無茶した挙げ句死んだ、馬鹿兄貴もいたがな。
[さらりと言ってから、現実味があるという言葉に、肩をすくめた]
経験則だからな。・・・絵師殿の幻の記憶とはわけが違う。
……それは言わない、言わない。
[さらりと言われる言葉に、掠めたのは苦笑]
幻、と言っても、過去の積み重ねに変わりはないけどねぇ。
俺が見てない、ってだけで。
[軽く言った所で、耳に届いた声に。
早めに手当てをしてしまおう、と動き始める]
む、し?
虫を飼っているの?
なんていう虫?
それは可愛いのかしら?
見たいわ、見たいわ?
[アーベルの言葉に、ぱっと顔を綻ばせ
ユリアンに、期待の眼差しで詰め寄った。]
まあさ、もう糸のお仕事は終わらせたんだよ!
だから良いじゃんー。
「その前にやってたと聞いたが?」
う、うっさーい! 気のせいだよ!
それに早く糸できるんだから良いじゃんかー
サボってないよ、絶対サボんないよ!
あ、そういえば、さっき絵師さまがいらしたんだけどね。
……あーあ。ご挨拶くらいしたかったのになぁ。
あ、ごちそーさま!
[何か言いかけたおじさんに、少女は元気に言うと食器を置いて話を打ち切った。]
いっつもながらに美味であった。なーんてね!
図書館の先生のところ行ってこよっと。
「あ、こら待てお前」
[2人を探して見回していると、声が掛かる]
ああ、済みません。
[頭を下げて、姿の見えたほうへ。
荷物は入口の脇に、なるべく邪魔にならないように置かせて貰った]
ええと。
何がどうしたんですか?
[近くまで来て、オトフリートを見上げ問い掛けた]
[無邪気に顔をほころばせるエルザをみて罪悪感が…]
そう、虫だ。こんな形の。可愛いかどうかはわかんねーけど
[罪悪感がわかずに、桶を頭に乗せ直し。空いている手で菱形のような形まで作ってみせる。]
9人目、薬師 ミリィ がやってきました。
― 診療所 ―
[床に胡坐を掻いて座りこみ、鉢を抱え込む。
ごりごりと干した草を擂る音が支配していたが、不意に動きが止まる]
くしゅんっ!!
[思い切り前のめりになり、大きなくしゃみ。
手が滑り、内の粉が舞い上がった。ぱらぱらと緑が舞い落ちる。
横を向くとずれ落ちかけた眼鏡を押さえ、眉を寄せた]
はぁ!? ちょ、アーベル。おまっ!!
[エルザの疑問に目線を逸らしていたわけだが、アーベルのキラーパス(死ぬのは俺)に思わず声を上げる。
そして向けられるエルザの期待の眼差しに、あーうーと唸っていたわけだが、]
あー、そのー。うん。
勘弁してください。
[そういって土下座。]
[読書室の外、弟と幼馴染のやり取りを聞きつつ、手早く上着を脱いでぶつけた所を見やり、湿布を当てる]
……あー、いてて。
次の『月』が昇るまでは、死にゃしねぇとはいえ……。
痛みとかは、人並みに感じるからなあ……。
[小声でぶつぶつと呟きながら手当てを終えて、脱いだ服を着込む。
薬はとりあえず、上着のポケットに入れておいた]
ん、と。
動けそうかねぇ。
……むぅ。しまった。
[黒地の服に纏わりつく緑を払う。
その色は、薬と言うには少々毒々しい]
私に限って風邪ということもない、となれば、
誰ぞが噂をしているのか。
[妙な自信を持っての、自己完結。
町の医療を担うものとしては当然とも言えるかもしれないが、その言いようと、見た目の幼さは相反するものであった]
…………歳の事ではないだろうな。
[すりこぎ棒を持ち直した手に力が篭る。ぱき、と微かに音。
微かに纏った負のオーラは、少女のものとは思えない]
…それはまた、兄さんらしいというか。
お手数お掛けします。
[少しばかり呆れた顔をした後、謝罪を込めて頭を下げ。
読書室を覗き込んだ]
[アーベルの説明に、更に目を輝かせる。
菱形を描く指を黒目が追い、
そしてユリアンへとまた目線は戻る。]
見たい、見たいわ?
可愛くないかもしれない虫さん?
[キラキラと目は輝くが、土下座するユリアンにきょとん、とその目は瞬かれる。]
どうしたのかしら?
[首を傾げ、疑問と視線はアーベルへ。]
…まあ、いい。
そのときに備えても、しっかり準備をしておこう。
[ふ、と息を吐いて呟くと、作業を再開する。
薬師、ミルドレッド=ハーヴェイ。
*――今年で32歳の彼女は、微妙な御年頃だった*]
……と。
[覗き込む気配に振り返れば、目に入るのは見知った顔]
よ、どした?
[かける言葉は、ごく軽いもの。
というか、御気楽至極]
10人目、少女 ベアトリーチェ がやってきました。
[水晶花の花畑。
細い声が叫んでいる]
ねぇえ、降りてきてよぉ。
[清水のつたう岩肌、
薄桃色の小さなトカゲがはりついている。
平均的な成人男性の頭上の高さあたりか]
降りてきてってばぁ…
[苔を舐めてでもいるのか無視される。
二つ三つ、跳ねて手を伸ばしても、トカゲに届かない。
少女の双眸がうっすら涙をたたえた*]
俺は構わないが、お前も苦労するな。
アレが兄で、しかも絵師ときては。
[心底気の毒そうに言って、読書室を覗くミハエルを見送る]
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