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…退屈しないように置いて行ってくれたのかな。
[そういいながら小さく笑って。
そうしていればお互いに容疑者であるという事も忘れてしまう。
会話と調子は、普段なされるそれと大差がなく。
表情は変わらないものの、ユリアンのささくれだった不機嫌が段々消えていくのがよくわかった。
変わらないものが、嬉しかった。]
…ね、ユリアン。
[もうすぐ宿屋という所で、少し手を取引止める。]
ユリアンは、誰が人狼だと思う?
[じぃっと、見上げて尋ねてみる。
瞳の奥は、何か確かめるようなものを含んでいるようで。]
それだけ。
俺が心配するどころか、
ノーラ姉に心配かけるような事言って、ゴメン。
でも、こんなときだから。言っておきたくて。
[脳裏を過ぎった、別の可能性。
されど言葉を重ねる事はせず、姉から離れ]
碌に食事してないし、何か作ってくる。
[何時も通りの調子で、*カウンターへと向かった*]
[頷き返すユーディットの様子に、取りあえずほっとした様子になり。
こちらも、いつの間にか集まってきていた面々を見回す。
緑の瞳は、どこか静かに。
右の手は、ここの所癖のようになっている姿勢──左の腕を掴む、という形に自然、落ち着いて]
ううん、考えるより聞いたほうが早い。
[しかし割合あっさりと結論は出て、エーリッヒに「すみません」と声をかけた後、ブリジットの席へと向かった。]
あの、ブリジットさん。
ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが。
その……聴こえる、っていう話のことで。
…アーベル?
[弟の言葉に幾度か瞬いて、思い至るのはそのひとつ。]
そう、姉さんに加護があったように、あなたにも…。
[小さく頷く。]
イレーネちゃんは、偽者かもしれないけど、少なくとも狼じゃない…ってことね。
何故判ったのかまでは聞かないわ。
姉さんに聖なる痣があったように、あなたもなにかを与えられてるかもしれないもの。
…で、ユゥちゃんに…お医者先生?
[どうして?と小さく問う。]
俺もどーしていいか、さっぱりわかんねーからなぁ。
とりあえず、何でも下手な鉄砲数打ちゃあたる、だっけ?何でもいいから、やってみようかなーって程度だけど。
…子供だからって、足手まといとか、言われたくないし。
[最後の一言はぽつりつぶやくように言って、改めてハインリヒの方を向く]
ひどい目にあわないように終わらせる、かぁ。…そうできたら、いいよね。
何かいい案思いついたら、教えてほしいな。
[笑いながら、そう伝えた]
……お蔭で朝昼、飯食いっぱぐれたけどな。
[再び不機嫌な雰囲気を纏う。
しかしそれは先程のものとは少し違い、軽いもので。
普段時折愚痴を言う時のそれと同じものだった]
ん…何だ?
[手を取られ引かれると、歩みを止めてイレーネへと向き直る。
そして訊ねられる言葉にしばし考え込んでから]
……俺は、他の連中と普段深く話したりしないから、細かい変化とか分からない。
容疑者と呼ばれ始めてからも、専ら仕事してたから、他の連中ともあまり話してないし。
誰が、とははっきり分からない…。
けど。
少なくとも、イレーネが人狼だとは思ってない。
[最後の言葉は真剣に、イレーネの瞳を見つめて言葉を紡いだ]
……うん。痛い。
じんじんするよ。
手を引っ込めないのは……先生だから。
[嘘ではないが、本当でもない。
感覚は無く、ただ、痛覚のみが感じるのだが]
[宿の中を見渡した際、ユーディットの視線に気付いたようで。塔を積む手を一旦止めて歩いてくる様子を眺める。やがて傍に来て話しかけられれば、何だね、と言った後]
――ふむ。
聞こえる事について、かい。
何でもよい、聞きたければ聞きたまえ。
[頷いて片手で前の席を勧め]
[ティルの言葉に頷きながらも]
あー、なんか思いついた時はきっちり教えてやるから、情報料はらえよー?
ただ、まああれだ。鉄砲で撃ちまくった先に何がいるかもわかんねーのも確かだからな。
色々首突っ込むのはかまわねーが、引き際は心得とけよ。
ん、ああ……。
俺は、気にしないでいいから。
[ブリジットの方へと向かうユーディットに、軽くこう返す。
現場を立ち去った後の様子は知らなかったから、何かあったのか、と首を傾げつつではあったけれど]
[席を勧められれば、礼を言って腰を下ろす。]
何でも。それじゃ、えーと。
[机に転がっている林檎を何となく手にとって、包み込むようにしながら話し出す。]
……オトフリート先生から、貴女は何かが聴こえるのだ、と聞いたんですけれど。
何が、聴こえるんです?
[じっと、正面からブリジットを見つめる。]
イレーネさんと同じ力を持っている……ということでしょうか。
…ミリィ。
[篭めていた力をゆっくりと抜く]
すみませんでした。
ですが、嫌かもしれませんが、やはり包帯をしておきましょう。
少しでも傷が隠れるように。空気に触れて痛まないように。
[言いながら手にしたままだった鞄を見る]
貴女が辛い思いをするのは、私が、嫌です。
そっか。
[分からないというユリアンに、残念だとかそういう事もなく。ただユリアンらしいなと素直に思う。]
私も、分からない。
信じてる人は、…二人だけ。
[それが誰、とは言わなかったが。ユリアンの手を取るその手に微かな力が加わった。]
ユリアンにそう思ってもらえるのは嬉しい。
大丈夫、私は。
[きっと、ここに集まった誰もが同じ台詞を言うだろうけれど。]
私は、人狼じゃないから。
[そう、いつもの彼女らしい微笑みをみせてから、宿の中へと入っていった。]
包帯。
[思わず、復唱した。
それは、この傷が見えるたびに、ずっと、あのときのことを思い出すということ。
だけど―――それに、今更何の意味が無いことは知っていた。
だから]
うん。分かった。
痛みはあるけど、血は出てないからあまり意味無いかも知れないけどね。
[と、素直に頷いた]
……ん?
[そして、唐突に何かに気づく]
せんせ、せんせ。
私が辛い思いをするのが、嫌だってのは、どういう意味?
[ちょっとだけ期待を込めて、聞いてみた。少し、顔がにやけてる]
うんうん。引き際ね。わかったよ。おっちゃんありがとー。
[本当にわかってるのかわからない、軽い返事を返す]
[情報料という言葉に、思わず懐の財布に手を触れ]
えー、お金とるんだ…お酒1杯くらいで、いいかな。
[ごまかすように*笑った*]
[それぞれの会話をぼんやりと聞きつつ、考えを巡らせる。
忘れようにも忘れられそうにない、紅の痕。
あれをなしたものがこの中にいる可能性は、やはり信じ難くもあり。
しかし、目の当たりにした『現実』は、重くもあり]
……何れにせよ……か。
[零れ落ちる、小さな呟き。
無意識、右の手に力が篭り──痣の浮かぶ手首が、微かに痛んだ]
[答えをあげられないことに済まなそうに頭が垂れる。
しかし続く言葉と加わる手への力に、ふ、と視線を上げた]
……ああ、信じるよ。
[イレーネからの笑みに、ほんの僅か笑みが浮かんだ。
彼女には信じる者が二人居ると言う。
己には誰が居るだろうか。
おそらくは己自身と、目の前の少女だけだろう。
他の者を無条件で信じられるほど、付き合いは深くなかった]
[イレーネが宿に入るのに続き、己も足を踏み入れる。
浮かんだ僅かな笑みは当の昔に消え去っていた]
[姉の問いには、明確には答えず。
ややして、店内に戻って来ると、ハインリヒとティルという、年の離れた組み合わせへと歩み寄る]
そっちは食事、何か要らないの?
[エーリッヒに訊かない理由は、言わずもがな]
何が。
呼び声が、意思が、聞こえるのだよ。
残骸の欠片が。
[ユーディットの瞳を見返しながら、曖昧に答えるが、イレーネの名が出ると少しく思案した風で。相手の掌に包まれた林檎を一瞥してから、ぽつりと]
……イレーネとは、違う。
私を呼ぶ声は地からの物だ。呼び声は、残骸の物だ。
残骸の……死者の、声だ。
私には死者達の声が聞こえる。
[常にはない具体的な言葉を紡ぐ。また相手と合わせる視線は、真っ直ぐながら虚ろな物。およそ普段通りにも見えるだろうが]
常態であった。それでも常態ではなかった筈なのだ。
だが…… 塔は崩れてしまった。
いらっしゃい。
[訪れた二人へと、視線と共に声を投げる]
大分、揃って来たかな。
ゼーナッシェさんは診療所として……
ミリエッタの姿、見てないけど。
知ってるのかね。
[食事について問われない事には、気づいているのかいないのか。
それでも、新たにやって来た人の気配にそちらを見やり、や、と短く挨拶だけは投げて]
[新たに入ってきた二人に挨拶をしつつ、歩みよってきたアーベルの問いに答える]
あー、俺はとりあえず鶏肉のサンド。野菜抜きで。
後、ビールな。ビール。
しっかし、商売熱心な野郎だな、お前もよ。
[テーブルの上に代金に見合った金額を置きながら苦笑する]
はい、それでは。
[鞄を開ける。
取り出していた道具を、つい落とした]
失礼。
…それは、その。
[目が泳ぐ]
貴女は命の恩人でもありますし。
大切なお嬢様ですからね。
[僅かに弾む声には軽く口元に手を当てて。
誤魔化すようにそう言うと、手際よく包帯を巻いてゆく]
[宿に入ると、人がいることにほっとした。
全員容疑者という括りではあったが、それでも誰も居ないよりは良いように思えた。]
ミリィは…少し前まで家にいたよ。一緒だったから。
…お医者先生、様子見に行ったのかな。
[アーベルには、そんな事を応えた。]
[そして一度、宿の中を見回して、いる人の顔を確認する。]
[宿屋に入れば居る面々に会釈を返し。
空いているテーブル席へと腰掛ける]
…先生もミリィも俺は見てない。
工房に籠りっきりだったし。
[アーベルに返しながら、いつもの、と料理の注文]
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