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ギュンターさま…。
いろ…が。
絵師様に封じられた、おとうさんたちのとは違う…。
[3年前に描かれた父母の絵。
それを記憶に呼び起こし、比べていた]
[いろ、といっても、物理的に目に映る色ではなく、
封じられた、心のもようを表した、とでも言うべきか]
[その違いに不安がきざす。胸をおさえた]
[そして、オトフリートの語った御伽噺には、ふぅんと反応し、]
へぇ、それは……興味深いっすね。
オトさんは『発想』と言うけど、多分実際にあったんじゃないんかな。
絵師様に限らず、誰かが生者の絵を描いた事件が。
何でもないって、どこがだ。
[俯く様子に、大げさなため息をついて、歩み寄り。
ぽん、と。頭の上に手を置く]
……何か、あったんだろ。
お前もいいとこ、隠し事、下手だからなぁ。
[その点、余り人の事はいえた義理ではないが]
あの、
見せていただいて、ありがとうございました。
あとはお見舞いも…
長様はどちらにいらっしゃるのだ?
[家人に向かって頭を下げる。
常識的には行動の順序が逆であろうが、
そこまで思い至らずに]
[横たわる長のもとまで赴くと、
しばし顔をのぞきこんでいたのだった]
[置かれる手に俯いたまま、びくりと反応し。
く、と下唇を噛み締めた]
…兄さんに言われたくない。
[ぼそぼそと、そんな抗議はするのだけど]
そう思うんなら、もっと上手く隠すか……でなきゃ、最初から隠そうとするな。
[抗議はさらりと受け流し]
で、一体どうしたんだ?
[ぽんぽん、とあやすような手つきで頭を撫でながら、問いを重ねる]
……。あ。
お見舞いの花束とか、持ってくればよかったのだ…。
[今さら気付いてももう遅い、
恥ずかしくて頬を染め、何度も頭を下げながら、
長の家を辞したのだった]
[至極尤もな言葉に、黙り込むしかなかった。
言わなきゃバレない以前に、態度でバレてしまえばどうしようもない。
それでも絵師本人を前にして、それを言葉にするのは躊躇い、暫く黙るも。
宥めるような手に、やがては耐え切れなくなって]
…『月』。
[ただ一言、落とした]
……今回の件とそのおとぎ話とやらとは、
発想の原点が異なるのではないか?
読んだものが絵筆を盗もうと思いつくとも限らない。
読まないものであれど、他の理由で――空を望んで、行ったことかもしれない。
どうにも話を逸らしているように思えるぞ。
[逸らし気味だった赤い瞳が、オトフリートを捉えた。
ユリアンの疑問に対しては口を出さない]
[オトフリートの言葉にこくりと頷くと、]
ひとつ。炎の無い所に煙は立たない。
今言ったでしょ。「そんな発想普通出てこない」って。
たしかに死者の心を留める絵筆で生者を描くと死ぬ……って発想が創作で出てこないとは言わないけどさ。
ふたつ。……なんか噺としては、オチが生々しいとは思わね?
確かに恋人の後追いってある意味美談かもな。でもそれにしては救いがない終わり方だと思ったんよ。
ついでにみっつ。記録を残すも消すも人次第。
「記録に残っていないから無かった」……なんてのは思考停止もいいところっすよ。
むしろ、こういう御伽噺から、美談やら脚色っていう尾鰭を取っ払ったら、そこに真実が潜んでる。
なんてこともあるんじゃないっすかね。
[っと自分の推理を言ってみる。]
―海―
―― あちゃ、怪我しちゃった ――
[目を覚ましたときに、痛いと思ったのと同時、そんなことを考えた。
それでも身を起こして、脳までゆさぶられたような感覚を振り払う。
タオルでしっかりと拭いて、そこに血がちょっと移ってしまったのを見て眉を顰める。
ばれたらミリィせんせーの沁みる薬が待っている。]
それで。
真実だったら、どうだと言うんだ。
この事件と関係があると言うのか。
[色恋沙汰が少なからず絡んでいるゆえか、
微か声には棘が混じれど、それよりも純粋な疑問が勝る]
……え?
[短い言葉に、最初に零れたのはどこか惚けた声。
浮かぶのは、氷面鏡の間で見た、二つの三日月。
一つは自分。
もう一つは、継承者たる『新たな月』。
ただ、その『月』が誰に昇ったかまでは、それだけではわからなかった]
お前が……『新たな月』……?
[問いかける声は、微かに震えて]
―長の家→外―
あ、ミハエルさ――
[数歩も踏み出せば、密色の髪の兄弟が目に入る。
対話する二人の様子から、
話の内容の深刻さを読み取れるようで]
[邪魔をすべきではなかろうと、その場を後にした]
……ま、理論としては弱いから、多分ってのは言い過ぎかもね。
……でも、可能性として無いとは言い切れないんだな、これが。
―道端―
あちゃー
[遠めに見えた姿が、ミリィだった。
思わず動きを止めて、タオルを抱えてうんうん唸る。
足は包帯を巻いておけば大丈夫だろう、ちょっと打っただけだし。
なんてことを、あの女薬師は許しちゃくれないのだ。]
…他に、何があるの。
[地面に目を落としたまま、低く肯定。
己より高い兄の目から見れば、襟の下、異質ないろが僅かに覗くのは見えただろうか。
遠く、少女の声に呼ばれた気がしたが。
そちらに顔を向けることはできなかった]
―道端―
あーっ、リディねえちゃん!
[ふと前方、見慣れた背中を発見し、声をあげた]
[駆け寄ろうとして一瞬、彼女が足を引きずっていたように見えて]
[近づきながら、まじまじとリディの足を眺めてみた]
[くちゃ、と蜜蝋を噛む音は聞こえたろうか。改めてまっすぐに向けられた薬師の赤い瞳を見つめ、その疑念には答えずに、ユリアンに再び視線を向ける]
なるほどな。
だが、絵師は代々、一人だけだ。
もしも、そんな死に方をした絵師がいれば、記録に残らぬはずがない。
絵師以外の者が、それを為したとしたら…それこそもっと危険な大事件だ。やはり残さぬ理由はないだろう。
俺は、一般の目には触れない記録も見知っているが、そんな記録は見たことがない。
あ、ビーチェ
大声ダメ!
[というほうが大声である]
えーと、えーと
大丈夫だよ!
[視線を追って、自分の右の足にいった。
へらりと笑ってみた。]
ビーチェはどっかいってたの?
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