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―回想・昨夜―
[マテウスから部屋の位置を聞き、それを頭の中に入れる。
二人分の美味しかったとの言葉と礼に翠玉を細め、首を振った。
食事が終われば、まだの人々に勧めに。
戻ってきたときに掛けられたウェンデルの言の葉>>149に二度瞬いて、声を零した]
すごい?
ウェンデルはそんな風に思うの?
…でも、あたしは。さっきのウェンデルに助けられた。
薬師様の分、どうしようかと思ってたから。
[ウェンデルが自ら進んで、渡しに行くと言わなかったのなら、途方にくれていたかもしれないと。
料理を手に階上へ向かうその背を見送ったあと、厨房へ行き、仕込みをし。
それから自室に戻って眠りに就いた]
それも『参考』にはなりましょうが。
[緩やかに首を振る]
私がお訊ねしたいのは、もっと実質的な事です。
どのように人狼を見つけ、滅ぼしたのか。
人狼は何処まで、人間の振りを出来るのか。
この中にいるというのなら、余程上手く化けている。
―自室―
うん…?
[微睡みを妨げるように、どこか騒々しく。
そして、空気に棘が孕まれているかのような居心地の悪さ。
部屋の窓から外を覗けば、慌しく走り回る自衛団の姿]
いい知らせでは、なさそう。
[溜息を吐き、身支度を整える。
ゼルギウスから預かった小さな薬箱も持って、広間へと]
でも、人狼って人間に化けてるって。
わたしたちの中に人狼がいるって。滅ぼすって、殺すってことでしょ?
わたしたちの中の誰かを殺すって…
[ふと気づいたように、わたしは言葉を切る。]
あ。そうか、イヴァンさん。
昨日言ってたのは、そういう、ことだったんだ…。
……見つけ、滅ぼす術、か。
[重ねられた問いに、しばし、瞑目して]
見つける手段として最も有効だったのは、見極める者の力だった……これは、言うまでもないな。
とはいえ、肝心の相手を見出すには至らんかったが。
[それは、苦い記憶の一つ]
奴らは、本性を示す時以外は、人となんら変わらない。
故に、外見だけでは判断しかねる。
……裏を返せば。
本性を示さねば、その力は人と大差ない。
ようは、『人と同じ方法』で、対処できる、という事だ。
[静かな言葉。
直接的な言い回しは避けてはいても、言わんとする事は簡潔なもの]
[途中擦れ違った自衛団は、何処かぴりぴりした様子で。
話しかける隙すら無い。
広間の中、見知った顔が幾つか有り、頭を下げた]
何かあったの?
[巡る翠玉が捉えたのは、エーリッヒの口の端の紅]
喧嘩?
…エーリッヒは喋らなくて良いから。
少し、そのままでいて。
[抱えた小箱から傷薬を取り出して。
細い人差し指で掬い、塗りこもうとした]
―二階自室―
[昨日ずっと起きていた為か。
かなり遅い時間まで眠っていたようだった。
目が覚めても、暫くぼんやりと。
震えは鈍い思考のおかげか、収まっていたが。]
『……意志強く。』
[ぽつりと呟く。だが心は未だ揺らいでいた。
揺らぎは小さな痛みを呼ぶ。振り払うように頭を振り、木箱を手にしたまま一階へと降りた。]
[入ってきたゲルダに気づいて、視線を軽く、そちらへ向け]
喧嘩と言うか。
八つ当たられて殴られ損、とでも言う所か。
[自衛団に殴られたのだと。
簡潔に、説明して]
…馬鹿で悪かったな。
[同居人にはボソリと返し。
したのは自分。あんな言い方をすればどうなるのかは分かっていたのだ。それでも止められなかった。
ともすれば、涙を見せてしまっただろうから。
後はベアトリーチェが辿り着いたであろう結果に、小さく頷いただけ]
ゲルダ。
あ、いや。
[伸ばされる指。少し避けるようにするも、座ったままでは大して動くことなど出来るはずもなく]
っ。
[小さな声を零した]
八つ当たったのは、俺の方かもしれないけどな…。
[低い声でボソリと呟くよに]
ありがとう。
[曇りを帯びた翠は逸らしたまま、ゲルダに礼を言った]
…人の姿のままであれば、人と同じ方法で対処が出来る、か。
[ソファーに座ったまま小さく呟く]
[昨日のウェンデルとの会話からは見出せなかった対処法]
[特別な方法が必要なのかと思ったらそうでも無く]
[かと言って難しいことに変わらないために溜息が漏れた]
変じた後に遭遇した場合は、どうしたら良いものやら。
八つ当たり?
殴られた…って。なんでですか?
[簡潔な説明では、尚更に疑問が浮かぶばかり]
確かに、自衛団の方々は苛立っていらっしゃったみたいですけれど。
そうですね。
[ベアトリーチェへの、短い肯定。
彼女の率直な言葉は、ライヒアルトの口にしなかった台詞の代弁のよう]
それなら、やはり……。
[口元に手を添え、思案の素振り。
現れたゲルダには軽く会釈をして、応対は他に任せた]
[エーリッヒの避ける仕草にも、手を止めることは無く]
沁みる?
でも、小さくても怪我だから。
[小さく零れる声に、少しばかり指の動きは優しくなって。
呟くようなお礼の言葉に、首を横に振った。
そっと頬を掌で撫で]
気をつけてね。
[塗り終えた薬を小箱へと戻す]
[ゼルギウスの言葉。
ため息混じりに呟き、右手を左肩に触れて、離す]
……ま、一応は。
倒せなくは、ない。
……もっとも、こちらも死ぬ気でかかる必要はあったが、な。
[過去形の言葉は、暗にそれと対峙したと告げて]
……最悪の方向に、事態が推移した、とでも言う所か。
[ゲルダには、短くそう返し。
後は任せた、と言わんばかりの視線を家主へと]
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