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―台所―
っと、悪いなグラーツ殿…暖かい物よりは冷たいものの方が欲しくてな…。
ああ、オトフリートさんコップひとつ貰えるか?
[エーリッヒのおかげで倒れるような事はなく台所までたどり着くと、茶や菓子の準備をしていたオトフリートに頼んだ。]
─台所─
ええ、少しでも食べられた方がいいですし。
[エーリッヒの言葉に頷いて、作り置かれていた菓子の準備にかかる。
フォルカーが飛び込んできたのは、その直後か。
投げられた問いに、は、と一つ息を吐いて]
ええ。
ギュンターさんが……亡くなられました。
……それも、最悪の形で……ね。
―台所―
気にするな、それよりダーヴィー、お前自衛団員なんだろ…。
しっかりしろよな。お前が真っ先に倒れててどうする。
[そういいながら台所につくと、コップや水はオトフリートに任せて、
自分は準備の終わったお菓子等を広間に運ぼうとした。
直後にきたフォルカーへの説明はオトフリートが、
自分も初耳の話ではあるが、なんとなく想像はついていたこと。
それなりにショックな様子は少なかった、はず。
けれども最後の呟きに]
最悪っていうと……前に団長が言ってた…あれってことか。
[ダーヴィッドとフォルカーがこの場にいることを考えて、
直接その言葉は口にせず、伏せながらそう言った。]
[オトフリートの答えを聞き、まなこを見開く。
さいあくの、と小さく繰り返して]
……人狼、が?
[呟きの語尾は上がれど、疑問ではなく、確認めいていた。
俯いた少年の眦に涙が滲む]
―台所―
[オトフリートからコップを受け取ると、直接水を汲んで一気に飲んだ。
一息つければエーリッヒの指摘にちょっと視線を逸らしながら。]
いや何というか。あまりに予想外すぎて…心の準備がないと、どうにもこうにも。
[あっても倒れる事多々あったのだが。
そう言ってから、そうだ死んだのは団長だったと今更のように思い出し、ようやっと胸が痛んできた。
少しだけ鎮痛な表情を浮かべていると、フォルカーの言葉が耳に届く。]
…人狼、なのかな。
[こちらはやや不確定気味に呟いた。そうであって欲しくないという願望がそこには多分にあった故に。]
[エーリッヒが伏せた言葉。
確認めいた呟きにそれを乗せるフォルカーに、一つ、息を吐く]
……ええ。
俺は、鉱山夫の爺様の傷は見てはいませんが。
ギュンターさんの受けていた傷は……獣のそれとも、思えませんでした。
つまりは……『いる』、と。いう事なんでしょうね。
[団長の傷以外にも、確証は得てはいるが、今は口にはしない。
それを不用意に口にする事の危険さは、同じ『力』を持つ者でもあった主治医から聞かされていた]
―広間―
捜さなくちゃ…。
[小さく呟いたら、にぃという声が聞こえた。
黒猫はイレーネを慰めるように寄り添っている。
身体の強張りが少しだけ抜けた]
[三者の言葉に答える形になる、オトフリートの台詞。
やっぱり、と小さく口にした後、]
ご、めんなさ……い、
[堪えようとしていた涙と共に、謝罪の言葉が零れ落ちる]
……………爺さまは、まだ、外に?
[嗚咽を堪えて問いを重ね、答えを得る前に、台所の勝手口から外に出ようと足を向けた]
不測の事態に備えるのが……いや、まぁいいか…。
[人には向き不向きもあるのだろう。
そう思いながら、ダーヴィッドがよく自衛団員になれたよなとちょっと失礼なことも思ったり。
伏せた言葉は二人とも直接口にしていた。]
オトフは見たのか。
[オトフリートの言葉にそちらに視線が向き]
悲観もしていられないが、楽観もしていられないよな。
[呟くような声、ダーヴィッドとフォルカーの様子はどうだったか。
二人に視線を巡らせた]
─回想・納屋傍─
[目の前が真っ赤で、そこで何が起きたのかは理解し切れなかった。声をかけられても反応は無く、引っ張られて立ち上がることはしたが、ただ手を引かれるままに歩くだけで声も出さない。何も見ていないよな、ぼうとした様子で広間まで連れて行かれた]
─現在・広間─
[暖炉に近い椅子に座らされ、両手はだらりと横に垂れる。まるで糸が切れたマリオネットのよな姿。悲しい時は泣けばいいと言われて、少しだけぴく、と反応したか。けれど猫を膝に乗せられても両手は動きはしなかった]
[エリザベートに毛布をかけられても微動だにしない。ダーヴィッドに驚かれても反応を示すことは無かった。それ程までにショックは大きい。自分の中で状況を整理しきるまでにはまだ時間がかかりそうだった]
─台所─
……どうして、そこで君が謝るんですか。
[フォルカーの謝罪の言葉に、掠めるのは苦笑]
ええ、恐らくは。
今は、自衛団が検証と検死を行っているはずです。
……寒いですから。あんまり長く外にいてはダメですよ?
[勝手口に足を向ける少年を、止めるかどうかは悩んだものの。
状況は、「子供だから」と押し隠す事を許してはくれないだろうから、強く引きとめはしなかった]
―広間―
イレーネちゃん。
温かいお茶、いただきましょう。
[自分からは何一つ動けない様子のイレーネの手にカップを触れさせてみた。猫とは別の温もりは伝わるのだろうか]
[フォルカーの声、答える前にすでにその足は勝手口に向かっていた。
一緒に行くべきかどうか迷い、一瞬の間にすでにもうその姿は勝手口のドアを開けてるだろうか。
オトフリートが声をかける様子に、見送ることにして]
風邪ひかないようにな、あまり遅くなるようなら迎えにいくぞ。
[そうとだけ言っておいた]
[エーリッヒから向けられる視線にも、反応を示さない。
自衛団長の死は、少年に深い衝撃を齎しているようだった]
…………れ、なかったから。
[オトフリートの苦笑に、返す声は普段以上に小さい。
後の台詞に頷きを返して、すぐ戻ります、と断りを入れてから外に赴く。自衛団の姿があり、場所を特定することは容易だった。
近付こうとすれば団員に押し留められるも、凄惨な赤を取り除くことは出来ておらず、男達の合間からもその様子は見て取れる]
―台所―
[オトフリートの言葉からと自分の目で見た事柄からも、少なくとも元鉱夫と団長を殺したものが同一だろうという事は理解していた。だが人狼となると。どこか確信したようなオトフリートとフォルカーには少し戸惑った。
エーリッヒの言葉は途中でいいやと止まったので気にしなかった。もちろん心の中までは知る由もない。]
まぁ、楽観出来ないのは同意というか…少なくともここに殺人犯がいる事くらいは俺でも解るからな。そんなのと一緒で安全だ、とかは流石に言わないさ。
…なぁ、その人狼というか…団長を殺した奴ってのは、一体何のために団長を、それに元鉱夫の爺さん殺したんだろうな。
やっぱり腹が減ったから、とかかな。
[水を飲んで少し落ち着いたのか、考える余裕はあいてきた。とはいえ、フォルカーを止める事とかはすっかり忘れているのだが。]
ええ、団員各位が来る前に行ってましたから。
[見たのか、というエーリッヒの問いに頷く]
……楽観は、できませんね。
自衛団がどんなお達しを持ってくるか、なんとも言い難いですし。
……最低のケースは、何とか抑止したつもりですが、今の状況だと……。
[恐らくは、ここにいる者たちで何とかしろ、と。
そう、言われる可能性が高いだろう。
それを思うと、表情が暗くなるのは否めない]
……まあ、取りあえずは。
座って、落ち着きましょうか。
……久しぶりに走ったら、俺もちょっと、バテたようですし。
[軽く、頭を振った後、軽めの口調でこう告げる。
実際、胸の動悸は未だ治まっていなかった。
それが何に基づいているかは、今は考えたくはなかったが**]
腹が減ったからって…お前らしいな。
[ダーヴィッドの言葉にそう呟いてから]
衝動…とかな。
旅先で、なんかそんな話も聞いたことある。
普段はなにげない人の姿で、不意にその時だけ牙を剥くってな。
その話が本当なら何かトリガーとかあって、なるんじゃないか?
[もっともその聞いた話事態が噂のようなもの、御伽噺といいとこ勝負の信頼性ではあるが]
火のないところに、煙は立たない、噂もな…。
[その言葉は、現に不利益な噂を立てられている自分の身からでれば、
少しは信頼性もあったのかもしれない。]
─広間─
[エリザベートにカップを持たされる。持つと言うよりは、腿の辺りにカップを置き、転ばさないように支えるよな持ち方。口をつける仕草は見受けられない]
─────ぅ…………。
[しばらくの間何も言わず、何も言えず黙っていたのだが。突然呻くよな声を漏らす。はたと、縹色から零れ落ちるのは透明な滴。零れた雫はカップの中へと落ち、混じる]
団員達の判断ね…。
これで団員の中に犯人がいましたとかだったら笑えないな。
[そう言ってから]
ああ、わりぃ。ダーヴィーのことじゃねぇぞ。
他のやつらな。
[一応そう断ってから、オトフリートの言葉に頷き]
皿とか俺とダーヴィーで運んどく。
色々ありがとうな、オトフはゆっくり休んでくれ。
[その様子から、小さく笑いかけてそう言って。
同意を得られたならダーヴィッドと一緒に広間に菓子類を*運ぶだろう*]
……ッ
[垣間見えた光景に息を飲み、両の手で口許を覆う]
ぅ、え……………っ、
[込み上げる涙と嘔吐感を堪え、飲み込んだ。代わりに、息を吐き出す。
体が膝が震え、目を背けそうになりながらも、顔を動かしはせず、しっかとまなこを見開いて記憶に焼き付けた]
…………、ごめん……なさい、
ごめん、なさい、ごめんなさい……!
[謝罪を繰り返す少年に、団員の男は怪訝そうな眼差しを向ける。
なかなか止まないそれに業を煮やしたか、検視の最中だと言ってフォルカーの肩を押し、室内へと引き戻させた]
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