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―外/墓標近く―
[しばらくハインリヒとフォルカー、ついでにオトフリートの様子を眺めていたが。
小さなため息を零して、目を閉じた。
口を開けば、紡がれるのは子供の頃に教会で教わった歌]
……What a Friend we have in Jesus,
All our sins and griefs to bear!
What a previlege to carry
Everything to God in Prayer!
O what peace we often forfeit,
O what needless pain we bear,
All because we do not carry,
Everything to God in Prayer.
……わ、
[頭に触れる手に小さく声をあげ、目を大きく見開いた。
ハインリヒの語る事柄に何かしらの相槌を打とうとしたものの、過去形であったがために、何も言うことは出来なかった。代わりにというわけでもないが、撫でる手には、大人しくしていた]
せんせい……
それで、エーリッヒさんが、
[人狼だと分かったのかと、内心、独り言ちた]
どう、なんでしょう。
それでも、僕は――……村が活気づくのなら、見てみたい。
[結果を出さない方がいいというハインリヒに返すのは、以前の問いに、答える形になるような台詞。
しかし、それについて深く語ることはせず、止まないどころか強まる胸騒ぎに焦燥感を覚え、集会所へと進む足は、自然、速まった]
Have we trials and temptations?
Is there trouble anywhere?
We should never be discouraged,
Take it to the Lord in prayer.
Can we find a friend so faithful
Who will all our sorrows share?
Jesus knows our every weakness,
Take it to the Lord in prayer.
Are we weak and heavyladen,
Cumbered with a load of care?
Precious Savior, still our refuge,
Take it to the Lord in prayer.
Do thy friends despise, forsake thee?
Take it to the Lord in prayer;
In his arms He'll take and shield thee,
Thou wilt find a solace there.
[歌い終われば、閉じていた目を開いて。
その場にいる中で、唯一声の届くオトフリートに視線を向けて首を傾げる]
………ねえ、オトちゃん。
まだ、終わらないのかな。
ハインリヒさん……傷つかないで済む、かな?
―二階・廊下―
そう、だけど。
[ヘルミーネから僅かに孔雀色を逸らす。
その先で、状況はまた一つ変化した]
ユリアン!?
[孔雀色が見開かれる]
―外―
……俺は、グラーツ殿が居なくなってほっとした。
[ぽつりと呟けば、頭のなかがすっと晴れるような感覚がくる。]
……でも、あんたを恨んだり憎んだりするのは……違うのかな。
[その呟きには、ずきりとした痛みがくる。
顔をしかめて、がんと頭を格子の傷がついた樹に叩きつけた。]
うっさい頭痛。
ちょっと黙っとけ。
[外からの痛みが強かったので、頭の内側の痛みには、暫くの間耐えられた。]
あんたを恨んだりしていいのって、あんたが殺した人か、その人の家族とか恋人とかだけなのかなって、ちょっと思ったよ。
……あーまー、なんだ。
とりあえずローザとかオトフリートさんに怒られてこい?
[一方的に話をしてると、ちょっと怪しい人に見えるかもしれない。いや誰もいないが。
そう思い、最後にそれだけ告げると、道具を持って集会場へと戻っていった。]
[歩き出そうとした矢先、聞こえたローザの声。
歩みを止め、振り返る]
……まだ、終わっては、いないようです。
[巡る血の疼き、それからは解放されたはずなのに、どこかがざわめく]
……できれば、ハインリヒさんも……フォルくんも、皆も。
傷つかないで、欲しいんですけど、ね。
[浮かべたのは、どこか、困ったような笑み。
それから、翠は集会場へ]
いずれにしろ、ここにいる俺たちにできるのは。
見守り、見届けるだけ──
[静かな言葉の後、ふわり。
その姿は、解けるよに、消えた]
23
[年齢について、端的にこたえ、飛び散ったカップから降りかかる紅茶が顔のかかるのを庇うように覆って]
ぁあ…疲れた…だから…終わりたいんだ。
なぁ?エリ兄が人間なら、俺はなんだろうな?
[頭を掴んだまま、取り出したナイフをその額目掛けて、突きたてようとする。その際、頭を掴んでる手の力が僅かに緩む]
―二階・廊下―
ッ、
[咄嗟にウェンデルを庇うように伸ばした手は、けれど届くことはなく]
ユリアン、お前…
[目を見張り、ユリアンを振り返る。
光る刃が見えた]
─二階・自室─
[近付いた先、カップを受け取ろうとした矢先にカップが宙に舞った。中身が腕にかかる]
───っ!
[伸ばしかけた手が引かれた。反対の手で腕を押さえ込む。予期せぬ痛みに縹色が金に光ったのは、刹那]
─二階・廊下─
[解けた姿が結ばれたのは、集会場の二階。
見えた光景は、予想外と言えるもので]
……!
ユリくん、何を……!
[とっさ、声は上がるものの。
死せる身には、止める力などはなく]
[オトフリートがなぜエーリッヒが人狼と察したのかに気付いたらしい様子に]
ああ、そうさ。
で、自分で突っ込んでいっちまった…
…無茶しやがって…。
[最後の呟きは本当に心底から悔やんでいたのがぽろっと漏れたもの。
ふう、と煙草をくわえたまま煙をはいた]
活気付く結果になるかどうかは…わからねえさ。
次期村長が、もちょっと調査させてくれんだったら―結果を出してみせるけどな。
[村の可能性についてはそんな風に言いながらも、集会場へ向かう足は早くなる。
不安に背中を押されるように、一歩、また一歩と。
集会場に着けばスコップをしまおうと納屋を覗き―ふ、と黙った。
そこには他のものに埋もれながら鈍い光を放つ、鉈の刃が見えていた]
[近くまで来ていたイレーネも視界には入っていた。
一瞬の違和感。何があったかわかるよりも前に、ユリアンの言葉を聞くために、視線を合わせる]
ユリアンさん、なんか
変です、よ?
人間、じゃ、ないですか。
[さっきまでの様子と違うのに、思わずそんな事を言って。
だけれど、ナイフを見てさすがに息を飲んだ。
落ちたマグカップは、割れているのも見て取れる。
あ、殺されるのかもしれない。
そんな風に思った瞬間、ふっと頭にかかっていた力がゆるんだ]
――っ
[目をぎゅっと瞑って、しゃがみこむ。手の感覚が頭に残っている。髪の何本かは、ナイフの刃に散ったろうか]
な、んで! いきなり!
[命が無事だった、と分かれば、下からユリアンのことを睨みあげる]
[分かっていても反射的に止めようと手は伸びてしまう。
当然のごとくすり抜けるだけ]
何で。なんで。
[疲れた。終わりにしたい。
泣き出しそうな顔になった]
その話は、いずれ。
[オトフリートに関する話題のときには、僅かの間、背後に視線を投げたきりで、黙り込んでいた。
可能性についてを語るのは後に――未来に、回す]
……ウェンデルさんに、レーネのこと、お願いしてたんです。
先、行っています。
[納屋に向かおうとするハインリヒに声をかけ、一足先に、室内へと入る]
[オトフリートの去り際の台詞に、痛みを堪えるような表情でハインリヒを見上げて。
ハインリヒが集会所に戻ろうとするなら、ぽてぽてとその後ろについて歩いていく。]
………ハインリヒ、さん?
[納屋を覗いて動きを止めたハインリヒに、きょとんと首を傾げるが。当然返答などある筈がない。]
─二階・廊下─
[ふ、と思い返すのは、始まってからの事。
誰かの死に接する際に、青年が見せていた様子]
……君は、何を知っていて。
そして、何を求めて……?
[問いかけても、きっと、答えは返らない。
けれど、問わずにはいられなかった]
ぁーあ。逃げちゃった。
[突きたてたナイフはぎぃんと揺れている。予想以上の力がこもってるのが察せられるだろう。それを抜く気は起きない。変わりはあるし、めんどうくさい]
…人間か。
…ってか俺ってば元々ウェンデルから見たって変なやつじゃないのか?
というか…なぁ?…そろそろ察しろよ
[呆れたというような態度でしゃがみこんだウェンデルを蹴り飛ばそうと足を振るう。
それは階段から落とされるほどではないが、相当な痛みを被るだろう]
─二階・自室─
[金は直ぐに消え、元の縹色へと戻る。腕を押さえ込んだまま、再び床に座り込んだ]
ユリ、さん、何を……。
[ナイフを振るう相手にかける声。震えたのは表層の意識。訝しんだのは深層の意識]
[ハインリヒの後ろについて集会所に戻り、ユリアンの行動を見たなら。
目を瞬かせてから、小首を傾げ]
えーっと。
フォルカーの次は、ユリちゃんがグレた…の?
[などと呟くかもしれない**]
―集会場・納屋―
[道具を納屋にしまおうとしたら、ハインリヒと出くわした。]
ルディン殿。そっちも丁度終わったのか。
[言いながら、こっちも穴掘りに使った道具を中にしまう。]
後で俺もそっちの墓に顔出しに行くよ。
オトフリートさんとヘルミーネさん…ちゃんと見てなかったしな。
[それは魂を見る、という意味よりは、見送る的な意味合いが深かった。]
―二階・廊下―
[何時来たのか、昔馴染の声が聞こえた。
ローザの声も続く。
けれど目が向くのはそちらではない]
…なんで。
[ユリアンが足を振るう。
動くことはできなかった]
終わったんじゃ、ないのか…?
―納屋―
あぁ……気をつけろよ。
[先に集会場の中へいくフォルカーへ、どうしてそんな言葉を向けたのかはわからない。
しかし、あの時声が聞こえてから、じっとりと嫌な汗が掌に滲んでいた]
―何考えてるんだ、俺は。
[スコップを置いて、鉈に手をかけようとした自分に思わず苦笑した。
それでも胸の不安は取れぬままならば、何か身を守るものをと見回した。
丁度、そこへダーヴィッドがやってきたか]
ああ、まあな。…埋めてきたのか。
[誰をとは聞かずともわかる事。
答えを求めぬ問いを投げ、集会場のある方を目線で示し]
…嫌な予感がするんだ。あんた、なんか感じないか?
その、なんだ、俺なんかよりも妙な力があるんだから―
[また、妙な力と言った。
しかしそう思っているのだからしょうがない]
背に腹はかえられねえか。
[そう呟いて鉈の刃を掴んで引きずり上げる。
小振りのそれは、思ったよりぼろかった]
[踏み入れた集会所内は静寂に包まれていて、数日前の賑わいが嘘のようだと思った。
視線を彷徨わせた後、ひとまずは上へ行こうと、階段へと足を向けて上っていく。
近付くに連れて、一室での出来事も意識のうちに入って来ようか]
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