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―東殿・氷破の部屋―
[心竜の姿が見えた時点で、袖に手を入れていて]
おはよう、かしらね。
正直、時間感覚が狂っているのだけれど……これも虚竜の王の影響かしら。
[息を吐いた所で、袖からとあるものを取り出し、両手で顔へと持っていく]
―東殿・氷破の部屋―
……、皮肉なものね。
貴方の為にと頑張って作ってたものを、こんな形で使うことになるなんて。
[それは、アーベルへと与えた物と同じ形をした眼鏡。
本来赤紫に見えるべき心竜の瞳は、紺碧の色に見えた]
―東殿/氷破の部屋―
[氷破の竜がかけた眼鏡に、青年の笑みが苦笑に変わる]
……迂闊でした。貴女は氷破なのに。
[足元で未だ眠りにある様子の大地の老竜に視線を落し、直にブリジットへと戻す]
時が移り、陽が消え、闇が隠れた。
時の流れなどもはや意味はない――…感傷も。
[完全に眼鏡を外し胸に落す。青玉の銀鎖が眼鏡を支えて揺れた]
―東殿・氷破の部屋―
氷破以前に、私はただのブリジットよ。
[ちらりと紺碧の瞳が老地竜の方へと動いて見えたが、直ぐに戻って]
例え巡る要素が薄れても、まだ命も心もあるわ。
感傷だって、それぞれの記憶。時間は――記憶の積み重ねだもの。
[眼鏡が、胸へと落とされる。刹那、心竜が肉迫し]
―東殿・氷破の部屋―
ッ!
[袖から取り出した、水晶の扇子で手を叩くように、回り弾く。
氷竜の身体能力は他竜と比べて高くない。
老地竜を守りながらの攻防では、明らかに分が悪いだろう]
―東殿/氷破の部屋―
[眼鏡だけを落そうとしたのが甘かったか、青年の手は水晶の扇子に弾かれた。次いで放たれた氷の波を後ろに飛んでかわす。下衣の裾に小さな氷の欠片が散り、動きに合わせ煌く]
――…眠れ!
[智に長けた青年は荒事に向いていない。しかしエインシェントの身体能力は備えていた。袖に手を入れて鱗をむしり、血のついた青を挟む二つの指が空中に陣を描く]
―東殿・氷破の部屋―
[青い光に包まれると、頭に靄が掛かったようになる]
……っ、う……。
[水晶の扇子は床へと落ち、氷破の竜は膝を着く。
眠気を封印しようにも、その思考すら眠気に覆い尽くされて行き――]
―東殿/氷破の部屋―
[包み込む青の光は、静かに氷破の竜を眠りへと導いた。膝をついた華奢な体が倒れきる前に片腕で掬い上げる]
おやすみなさい……今は、夢の中に。
[もう仔竜でない青年は耳元にそっと囁いて、氷破の竜の体を抱き上げてベットへと寝かす。薄い上掛けで体を覆い、眼鏡へと手を伸ばし取り上げた。
そうして、細い銀縁の眼鏡を片手に握り、力を入れる。玲瓏な音を立て、美しい封じの硝子は霧氷のように床へと降り積もった]
― 西殿・結界付近 ―
< 何時しか眠りについていたらしい。
時の移ろいは定かではないが、ゆっくり浮上した意識を外界へと向ける。
首ではなく腕に鎖を絡め、東へ向けて歩を向ける。
進むにつれて、熱を抱く石。
もう一振りの剣と、共鳴しているようだった >
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