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あー、も、面倒なっ!
[走ることに苛立ちを感じ、取った手段は空間の跳躍。
その位の余力は常に確保してある。
跳んだ先。
場の様子に、感じたのは何故か頭痛で]
……人甘やかして手なづけりゃいいと思ってんのか、こんのロリコン野郎っ!
[その言い方は大概どうなのか]
[そっと腕の中の髪を撫でる]
案ずることは無い、生命の娘。
[オトフリートの声には、ぴくりと眉が上がった、かもしれない]
[選んだ、という言葉に。ふっと息を吐いて]
……ま、あんたはいつもそうだったな。
自分からは動かねぇ。
人にやらせて、自分はなにもしてない、と言い切る。
そうまでして、責任を負うのが怖いか。
自分から、何かを求めて掴むのが。
世の中には知らぬほうが良い事柄もあるのだよ。少し待っておいで。
[優しく微笑んで、イレーネを後ろへ下がらせると、オトフリートに対峙する]
面倒と言いながら、追ってくるとはご苦労な事だな、時の竜。そんなに私が嫌いかね?
……クレメンスさんも、さびしかったのかなぁ。
[「欠けた心を持つ者の苦しみ」という言葉が頭の中で繰り返される]
わからないよ……
[自分の経験としても。他者から聞いての知識としても。
彼女の中にそういうものはまだなくて]
寂しいから、力をつかうの?
[ぼんやりと、ここではないどこかを見つめるように]
私だって、ぜんぜんさびしくないわけじゃないもん……
[それは彼らの苦しみと比べればとても小さいものかもしれないが]
ナターリエさん、――エルさん……
[うつむいて、小さく声を震わせた]
……よーするに、ちょっと趣味がおかしいって事だ。
[イレーネにはさらっとこう言って]
……好かれてると思ってたんなら、相当なもんだな。
[問いには、呆れたようにこう返す]
[言われて後ろに少し下がる。
人の後ろに庇われる事の、なんと甘美なことだろう。
先ほどの転倒で、アーベルの上着がじゃぎじゃぎに裂けていたが、気にしなかった(気にしなさい)]
ちょっと趣味がおかしい?
[オトフリートの言葉には、軽く首を傾けてクレメンスを見上げたが、答えてくれなさそうだったので再びオトフリートに視線を戻した。]
[くつくつと喉の奥で嗤う]
常に求めているとも、心から。それが私だ。
私は他者の心を縛りはしない。お前にはそれが解らぬだけだ。
ああ、もう構わないだろう、お前もお前の心のままに振る舞ってはどうだ?
嫌いな相手ならば、滅ぼしてしまえばいいだろう?
出来るのなら、な。
滅ぼす、のは、いや…
[後ろから、クレメンスの服を少し握る。
クレメンスは勿論、オトフリートも滅ぼされるのはイヤだと思っている自分を、僅かに不思議に思った。]
変態…
[言われた言葉は、復唱する。
なんとなく、聞き返す事はためらわれた。
…へんたい。]
求めても、動かない。
縛らないんじゃなくて、縛れねぇんだろ?
……嫌いだから滅ぼす?
どこのお子様の理屈だ、そりゃ。
やれと言われればやれるさ。
だが、意味がない。
……あんたが、滅ぼしてほしいってんなら、話は別だがね。
自分で自分を滅ぼす。
そんな選択肢は、あんたじゃ選べまい?
[手から離れていったクレメンスの服を握った手を、胸元へと持っていってぎゅっと握った。
あぁ、殺さないで。
それは、どちらに向けた言葉なのか、自分にも分からなかった。]
ああ、心とはそうしたものだよ、無限の竜。
意味の無いところに意味を求める。
楽しくはないかね?
[笑いながら、剣を突き出す]
[「寂しいから力を使う」
その言葉は彼女の中を駆け巡り。
再び無意識の内に力を流し始めた]
どこ……?
[小さい呟きが力を動かす。
けれどその感覚に先に引っかかってくるのは]
またっ!?
[嫌な予感に、全身の力が入る]
『イレーネ、どうか二人を止めて……!』
……『混沌』であるが故に、か?
俺自身にやる事があり。
そして、あんたの死を望まない者がそこに在る状況で。
無意味な刃傷沙汰は楽しくねぇんだがなっ!
[苛立たしげに怒鳴りつつ、光鎖を舞わせて突きを弾く]
[声が聞こえた気がして、ふと周りを見渡した。
が、薄暗いこの場所で目に映るのは岩肌ばかり。
首を捻りつつ、ふたりに目を戻した。]
[高く嗤い声をあげる]
私は楽しい。お前も楽しむがいい。
もっと、楽しめるようにしてやろうか?
[ゆらりと陽炎のように、黒い姿がゆらめく]
[オトフリートがオトフリートに襲いかかる、弧を描いて揮われた白熱の剣の軌跡は、黒の鎖に対する白の鎖にも見えただろうか?]
[この姿では影を渡ることが出来ない。
けれどここで本性を開放してしまったら、今度は自分自身を保てる自身がない]
『お願い、イレーネっ!』
[必死に呼びかける。それがどこまで届くかは分からない。
影輝の力を僅かに含ませて、イレーネの元へ届くように祈る]
[ふたりのオトフリートを、息を呑んで見守る。
どうしたらいいか分からない。
が、止めようとその間に入れば、必ず真っ二つに裂けられるだろう事だけは、予感していた。
---止められは、しない。]
……だから、趣味悪いっつーのに!
[目の前に現れた自身の姿に、呆れたような呟きをもらして。
斬りかかる剣を再び光鎖で弾く]
……ちっ……エターナル・ロンド!
斬空刃!
[声に応じて、鎖が形を変える。
漆黒の光鎖は、漆黒の光の剣へと]
[再び、声が聞こえた気がした。
止められはしない、そう思った矢先。
その願いは、それこを願ってはいないだろうか。]
…誰?
[楽しそうに踊っているようにも見える二人を見つめたまま、呟いたのは割りと的外れなモノであった。]
[斬り下ろされた刃を弾き、態勢を崩させた所に蹴りの一撃を入れて、距離を取り直す]
……そうまでして。
何が、したい。
[答えがあるとは思えぬものの。低く、問いを投げて]
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