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…考えるヒントにはなるかも知れないけど。
他人の思うことすら分からないのに、相手の考えを推測して、間違ってたら…。
確かめて真実が掴めたら良いけど、分からないままで正しい道から逸れちまったら…?
[不安げに瞳が揺れる。
はっきりと物を言うユーディットに、何故か逆に不安を覚えた。
分からないことだらけなのに、何故こうも真っ直ぐに居られるのだろう、と。
イレーネを心配するのもあって、ゆらゆらと心が揺れる。
行こうと言うユーディットに頷き、皆と共に*宿屋へと*]
そうだね。家かなぁ…
[考えていれば、ぎゅっと握り締められた手の感触を感じる。
微笑むイレーネの顔をみて、ゆっくりと*微笑み返した*]
[広場まで来ると、ブリジットが何やら演説をしているのが目に入った。小さく会釈をして、その横を通り過ぎる。
酒場の前に立つ。ちょうど扉を開けて、中からイレーネが出てくるところだった。一緒にティルも連れている。
口火を切ったのはユーディット。]
良かった。ここに居たんですね。
あの、少しお話したいことがあるんですが。あと、聞きたいことも。
――ここでは何ですから、中で?
[ちらと酒場の中を見遣った。]
…ふぅ。
[探そう、という意識を持って感覚を澄ませてはみたものの。
彼女の気配を探し当てることは出来なくて]
そんなことがあったのですか。
貴方にとって私は不幸の象徴でしかなかったですね。
[溜息交じりの声は今は届かぬ同胞へ]
中途半端な遺体が残ってしまったのです。
それを使って逃げてくだされば良かったのに。
[そうはいかないであろうことは、この場も示している。
悔悟はどこまでしても足りなかった。ただ、多を取るなら願ってはいけないだろうと思いつつも、狂気に染まってゆく同胞となった者達の無事を願わずにもいられなかった]
-宿-
[ティルと共に、宿を丁度出ようとした所でユーディットらと出くわした。
突然、しかも都合よく現れた人に少し驚きと―少しだけ不安げな表情を浮かべたが、後ろに他の人らも居たのを見て、軽く会釈する。ユリアンを見かければ、表情は和らいだ。]
あ、よかった。
ティルと二人で、みんな探しに行こうと思ってたんです。
聞きたい…あ、はい。
私も言わないといけない事が。
[聞きたいことは、おそらく視た事についてだろうかと察し。]
…はい。
[神妙にこくりと頷いて、再び中へと戻った。]
[中に入れば、イレーネに椅子を勧め、その正面に自分も座る。
その表情はあくまで、柔らかなもの。]
なんだか……こうやって、イレーネさんときちんと話すのがすごく、久しぶりな気がします。大丈夫、ですか。
[それは様々なことを含んだ質問で。]
ユリアンから聞きました。まだ、終わってないそうですね。
エーリッヒ様を視た、とか――
……結果は、いかがでしたか。
[たどり着いた宿からは、丁度捜していた相手が出てくる所。
中に入ると、主を亡くした空間は、どこかがらん、としているように思えた]
……ん、そいや。
あいつは、どこ行ったんだろな。
[ふと思い出すのは、不思議な白猫の事。宿にいるかと思ったが、その姿はどこにも見えなかった。
ともあれ、今はカウンターの側により。
懐に隠したものの存在を確かめつつ、イレーネの方を見る。
ユーディットが彼女に向けた問いは、自身にとっては最も興味のあるところでもあったから]
そう、ですね。
前話したのは何時だったかな…。
[ユーディットの柔らかな気配にも、こちらは僅かな緊張を崩さなかった。彼女はまだ『視ていない』からだ。]
ええと…。はい、それと昨日…
[エーリッヒとハインリヒ、そしてユリアンが居るのを見てから、ゆっくりと口を開く。]
昨日、視たひとはノーラさんでした。
ノーラさんは…人でした。
…言わなくても、分かる結果になってしまったんですけど。
今日はエーリッヒさんを見ました。
エーリッヒさんも、人、です。
[ぽつと、小さな声で告げる。
そしてこれで、自分が『視て』いない人は4人だ。そのうち一人は心から、信じているのだが。
この4人…むしろ自分の中では3人と思っている、中に人狼がいる。その事実に、少し震えた。]
[広場で一人演説するブリジットにはちらりと視線を向けるだけに留め。
エーリッヒ達と共に宿屋へと辿り着く。
そこには丁度宿屋から出てきたイレーネとティルの姿。
イレーネの無事な姿を見て、焦りの色が安堵の色へと変わる。
声をかけようとして、先にユーディットが口火を切った。
中へと促す様子に、連れ立って自分も宿屋の中へと。
彼女らが椅子に座ると、自分はイレーネの傍へと]
ああ、ノーラさんを……。ん、でも、仕方ないですね。それは。
[エーリッヒが人間だという結果を聞けば]
そうですか。良かったです。
[ほっとしたように笑った。]
そうそう、朗報があるんです。イレーネさん。
ブリジットさんは人間です。
というのも。オトフリート先生が、亡くなる直前に「自分はブリジットさんと同じ、死者の声を聞く力を持っている」と私に話していたんです。
私だけじゃなく、エーリッヒ様もそれを聞いてらしたみたいで。
[ですよね、とカウンター傍の主人に確認し。]
同じ場所に、同種の力を持つ人が現れるというケースは殆どないそうです。
恐らくオトフリート先生は、その伝承を利用して、ブリジットさんの信用を落とそうとしてたんでしょう。
ブリジットさんが狼でオトフリート先生の仲間なら、勿論そうやって対抗する意味はありませんし。
ブリジットさんは人間の可能性がとても高い。
[滔々と話す。
周りに口を挟ませないような、そんな雰囲気を纏わせながら。]
これで、イレーネさん視点で……私視点でも、ですが……
狼候補はかなり絞れたはずです。
……ひとつ、お聞きしたいんですが。
[少し間を置く]
もし、人狼を見つけたら。
貴女は、どうしますか。
[自分の事を人、と告げる少女に向ける緑の瞳は静かなまま]
ああ、確かにそう聞いた。
……ま、その真偽は周知の通り、だけれどね。
[ユーディットの確認に、頷いて答える]
そして、過去伝承に関してもその通り。
少なくとも、俺の知る限り、見極めるものは同時に二人現れる事はほとんどなかった。
[補足するように、告げて。
ユーディットが投げかけた問いに、改めてイレーネを見やった]
え…そう、なんですか?
[ブリジットの事を詳しく聞いてはおらず、紡がれる事実に目を瞬かせた。
そして同種の力を持つ人が現れるケースの少なさにも。
ただ、そうだったんだと。
だが―手が止まる。ぎくりと。
だとしたら疑わしいのは、自分の中では二人。
狼が分かりかけているのは喜ばしい事ではあったが。
どちらかが人でない事に、微か青ざめた。
脳裏には、優しかったオトフリートの、恐ろしい死に顔が思い出される。]
狼を見つけたら。
………ころし、ます。
[青ざめながら、ユーディットに告げた。
誰かを殺さなければならない事実が、空恐ろしかった。だが。]
…終わらせないと、いけないんです。
そう、終わらせないと。
[それは少し前、ティルと交わした言葉でもあった。]
[宿のカウンターに、頬杖を突く。
現の物質に干渉することは出来ないはずだが、そもそも重力というものと無縁の所為か、すり抜けることはなかった。感触もなかったが。
まるで日常と変わりないように、彼の姿は其処に在る。
異なるのは、生者とは交わることのない世界に居るということ。
ブリジットならば己の声が聴こえるのかもしれないが、聴こえたとて、何の意味もないと思えた]
[エーリッヒの補足に、ありがとうございます、と礼を述べて、もう一度少女を見る。]
……そうですか。
ええ。そうですよね。
私も、そう思います。人狼は、あんな生き物は、許しちゃいけない。
例え、身近な誰かだとしても。
[すっと一瞬俯き、顔を上げる。]
もうひとつ、朗報があります。
朗報だと、私は思うのですが。
……恐らく、イレーネさんにもそう信じて貰えると思います。
[目を閉じる。大丈夫。そう自分に言い聞かせた。
目を開け、緊張した様子のイレーネを安心させるよう笑いかける。]
亡くなったアーベルも、貴女と同じ力を持っていたんです。
二人きりのときに、アーベルが教えてくれました。
皆に話すと人狼に襲われるかもしれないから、ってずっと黙っていましたが。
たぶん……あんな形でアーベルが死んだのは、狼だった先生を視ようとしたからなんでしょうね。
もし、アーベルが狼に味方する人間だったなら、あんな風には死なないと思います。
アーベルも、貴女と同じように本物でしょう。
さて、その占い結果なのですが。
[と言って、座っていた椅子から立ち上がる。
ゆっくりと、怯えさせないようにイレーネに近付いた。
一瞬、エーリッヒとハインリヒに視線を走らせる。]
[ユーディットから向けられた視線に、ほんの一瞬、瞬く。
何をするつもりか、と。
ただ、いつでも動けるように、僅か、カウンターからは身体を離して]
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