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―― 結界の傍 ――
[ずっと立っていることは出来ずに、地面に座り込んで、結界の壁に生身の右手を沿わせる]
ああ…感じるもの、なんだ。
[或いは結界を強化した虚竜王の力のせいなのか]
―中庭―
[自身の姿似のような影を、青年は口元に笑みを浮かべて見つめた。その瞳は真意を覗くように紫紺から赤紫へと変わっていく]
あなたの『願い』は――…何?
[エレオノーレ、と音なく青年の唇が紡ぐ。影ではなく個の名を]
─西殿・食堂─
[扉傍は騒動の真っ最中。ティルが元気にクレメンスをしばいて居る。
しかしそれを止めることなく視線はエルザへと。この二人はとりあえず大丈夫だろうと思ってるとか。一応は気にかけつつエルザに]
声じゃと?
剣からの声が聞こえたのか?
――…、
< 紡がれる名。影はまた、容を変える >
“私”を知りたい。
< 右半身は暗い影の侭。
左半身は、皆の前で取っていた「エレオノーレ」の姿を取る。
影竜王の影であることを、旧き記憶の器であることを命じられ、僅かに王の姿を似せて象られたそれは、真に、己自身と言えるか定かではない >
[複雑に絡み合う、結界の術の中に、織り込まれた術者の想い…いや、意志か]
自由…でも…
[他者を封じることによって得る自由とは、何?]
ああ。
考えてみれば、水で探知すれば……って、床が乾いていますわぁ!
も、もう探知出来ない……。
私の栄光は短かったですわねぃ。
[大げさに、肩を落としてうなだれたが]
まあ、いいわぁ。
歩き続ければ、誰か見つかるでしょう。
[すぐに復活して歩き出した。
それにしても、大雑把である]
─西殿・食堂近辺廊下─
[予想よりも容易く捕まえられた事にやや、拍子抜けしつつ。
しかし、ここで気を抜く訳にはいかない、と力は抜かない。
成長途上で悩み中とは言え、竜としてはれっきとした成人。
力はそれなりにあるんです]
……離せ言われて離すのがいるかああああ!
[軽い物言いに、ぴくりと何か反応したようですが。
物理的な突っ込みいれる前に、ピアがキックにいきました。
疾風竜に比べれば、全く軽いだろうけど]
前ほど、明確には聞こえませんでしたけれど。
確かに聖魔剣の意思でした。
[ザムエルに頷き、倒してしまった椅子を直す。
クレメンス周りの攻防戦が止まるのを見て]
多分こちらから。
行きます。
[表情を引き締め、食堂から*出ようとする*]
あなたがあなたを知る為に、何を求める?
[暗い影の半身と、エレオノーレの半身。
両の目で見つめながら青年は囁く。その心に染み入るように]
私の『願い』を手伝ってくれるなら、私もあなたを手伝いましょう。
…どうしたら。
[ゆるり、足取りは重くなる。
階段を上がる途中ふと足を止めて窓から外を見る。
まるまる封じる結界。
王達に会いたい、そう思っても開かない会議場。]
─西殿・食堂─
ふむ……聖魔剣はこちらに、神斬剣はあちらに、ということじゃろうか。
神斬剣の気配はここにはない。
クレメンスがここに居ることから、アーベルが持っている見て良いじゃろう。
となると、聖魔剣を持って居るのは…。
[脳裏に浮かぶのは知己の姿。少し苦い表情となる。行くと言うエルザに気付くと]
待て、お主だけでは…!
[そう言ってその後を追う。騒ぎの原因はそのままに向かうことになるだろうか]
[思いを馳せながら目線を巡らせる。
ふ、と息を吐いて背筋を伸ばし、頭を振った。]
いけません。
前向きにならないと。
……理を打ち破る力を。
影は影で在らぬよう、
己は己で在れるよう――
< 沁み入る赤紫は、影の色を変える >
剣を。
< 傍に在りながら王の手に在り、触れられなかったもの >
なんもなくても、押さえとかねぇとあぶねぇだろ。
[返す言葉は素っ気無い。
エルザとザムエルが動き出すのは目に入っていたから、そちらの邪魔をされるのが困る、というのも大きいのだが]
っつーか。
おっちゃん、この状況、楽しいのかよ?
[それでも、跳躍されたら自分にはどうにもできないとわかっている。
ならせめてもの時間稼ぎを、と、問いを投げかける。
それは、少なからず気になっていた事でもあって。
声はいつになく、真剣な響きを帯びていた]
―東殿・回廊―
…、ん。
[数歩その小さな足を進めては仔は立ち止り、辺りを見回す。
それを幾度として繰り返す様子は、何かを捜している様であった。
何を求めているかまでは私には判らぬ。
しかしどうやら機竜殿が目の前にて姿を消してから――
幼子の様子は常と異なっていた。]
[寂しいのは、自分なのか、それとも、精神の竜への想いなのか、或いは…もっと違う何かなのか]
封じられた、願い…
[精神の竜の心の欠片は、無機の心に響く]
だから、あなたも封じる?
それでは、永遠に…終わりは来ない。
―東殿・回廊―
[命竜の所から離れてから、あちこちを探していたが。
やはり疲れが溜まっているのか、歩みは遅かった]
……、早く、見つけてあげないと……。
[翠樹の仔の心配をしながら、他の竜が残っていないか探し回る。
雷竜や風竜、剣の所持者である闇竜すら見当たらない。
ここ暫くどたばたしていた所為か、まともに情報が整理できていなかった]
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