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[岩の上、いつの間にか寝転がり。]
[掌には水の球。]
[あの時飛ばした雫が映し出す場面。]
結局、彼女を変えたのは、貴方のやり方じゃぁない、って事かね?
世界を構成するのは、いろんなモノたち。
そして混沌はそれらを内包するもの……じゃないのかな?
[その呟きが届くかどうかは知らぬけども。]
[取り巻いていた薄い紫の光が、更に薄れて弾けた。
光はそのまま周囲に溶け込んで]
ごめ、ん……あり、が、と……
[切れ切れの声は二人のもとへと届いただろうか]
[それまで遮断しきっていた周囲の気配も少しずつ戻ってくる。
しかしそれ以上は意識を保つことが出来ずにバタリと倒れ。
2本ほど緩んだ鎖細工がシャラリと*音を立てた*]
[へたりこむ彼女のすぐ後ろ、ひざをつく音。
体を反転させると、赤い血を滴らせながらもオトフリートが痛そうな表情をしているのが見えた。]
…正しいのか、わからないけれど。
[言い訳のように呟いて、オトフリートの傷に手をそっと当てる。
やわらかく、生命の癒しの力が染み込んでいく。
彼女はその生命の焔が揺らめくのを、目を細めてみた。]
[生命の力、それが傷を癒す感触に、ほっと息を吐く]
ありがとう……助かったよ。
[ふわり、浮かぶ笑みがどこか無防備なのは。
力の感触が、養母を思い出させたためだろうか]
[礼を言われ。
眉間に僅かに皺をよせながら口の端は少しあげるといった複雑な表情をして、うつむいた。]
…あ。
[そのまま、くらりと眩暈を感じて両手を地面についてぎゅっと目を閉じた。
転んだ時にすりむいた手足や顔を癒すのをすっかり忘れていた。
眩暈が治まっててを見ると、薄紫の光がそっと消える所だった。]
あぁ。
[この光のおかげだったのか、と思う。]
―墓地・明け方―
[癒しの眠りに着いた竜は、その弛緩した寝顔を晒したまま。]
[流れた血は乾き、大地へ落ちた血は吸い込まれ、むせかえるような甘い香りもいまは無い。
ミハエルは、立てた膝のうえに腕を置き、その上に頭を載せている。]
…様々なものが失われていく。
私にはそれを留めるすべが無いのだろうか。
[呟いて片方の手を伸ばし、ダーヴィッドの傷口に血糊で張り付いた木の葉を剥がす]
[そういえば、と思い出して。]
…何かあったら…うらまれ…?
[先ほどのオトフリートの言葉を小さく小さく呟いた。
そしてあの甘い囁きをくれる魔と。
色んな思いがよぎってまた何かが溢れ出しそうになり、まるで押さえつけるかのようにぎゅっと両肩を抱いた。]
−午前/ベアの家−
[アマンダは、一人でベアトリーチェの家を訪ねていた。
けれど、ちょうど留守だったらしく、誰も出ては来なかった。
もしかしたら、帰らぬ娘を心配し、探しに行っていたのだろうか]
……ここに、置いておくね。
[扉の傍にスケッチブックを残して、踵を返す。
「また、明日。」
そう彼女は言っていたけど、今度会う時には忘れ物を返すだけの余裕はないだろうと思って。]
[小さな呟きに、ああ、と頷いて]
約束したからね、俺は、養母殿に。
必ず君を見つける。そして、一度は竜郷へ連れて帰ると。
若竜……ダーヴィッドも、同じ事を頼まれているようだし。
彼は彼なりに、君の事を心配しているようだしね。
[冗談めかした口調で言いつつ立ち上がり、肩を掴む手に、自分の手を重ねて]
……とにかく、いつまでもここにいると、皆心配する。
これからどうするかは、ゆっくり考えるとして……一度、一緒に戻ろう?
―西・桜の木の下―
[コエはないけど。気配は感じ。
きっと「消されて」はいないことに安堵]
[それでも不安を完全には消えない。
せめてコエだけでも聞き、姿だけでも見たくて]
[探し回るも少年の姿は何処にもなく]
[...は考える。コエも花もない世界で、
彼が翠樹の魔を見つけるのに頼れるのは己のみ]
[そして思い出す。
さっきKirschbaumで少年が言いかけたコエを]
――すこし、森にいきたかっ……
そうか、森にいるんだなティルは。
なんで今まで思いつかなかったんだよ。僕の馬鹿
[...は慌てて森へ走った]
[ゆっくりと顔を上げて、オトフリートの吸い込まれそうな目を見つめて言葉を紡ぐ。]
…貴方の、養母?
それは、誰?
心配。
私を?
…私がすることをじゃなくて。
[手の上に重ねられた手の暖かさに少し安心感を覚えながら、ゆっくりと立とうとして、ふらりとフラついた。
思わずすぐ横の岩に手をつき…トラップが作動して、上から岩が落ちてきた。]
…あ。
[シャラリ、音に振り向けば倒れているブリジットが見えて。]
[ひょいと岩から降り、抱えて壁際へと。]
……チカラ使いすぎだってば。
皆、後先考えないんだからなぁ……。
[やれやれ、と肩を軽く竦めた。]
―墓地・明け方―
[アマンダは暫くその様子を見守って居たが、東の空が白みはじめる頃には、墓地をあとにした。少女の残したスケッチブックを小脇に抱いて。]
[ミハエルは何処にも怪我を負って居ないのに、血にまみれていた。血を吸った服は乾いて、肌に張り付いてとても不快だと思った。]
―森/暗みがかった緑の樹の根元―
[白い苗床の身体は少し脈打ち、
ゆると動く姿が生を感じさせる。
胎児のよに丸まって、
コエが聞こえたなら、その口元に微笑が浮かぶか。
優しいコエ。
力を受け入れ眠りにつくこと。
それは苗床として自然なことで、それでも今は]
起きなければね
命竜王ティアマット。
全ての命竜の長にして、母たる方だ。
って、君自身を心配するのは……。
[言いつつ、落ちてきた岩に向けて素早く光鎖を叩き込み、打ち砕く]
当たり前だろ?
−午後/教会−
[アマンダは、神父と子ども――鍵の書に深く係わる二人が好んだ場所へとやってきていた。
安息日だと言うのに、教会の中には誰も居ない。
町の人々は、それが異常だとも思わずに教会の扉をくぐることなく、訪れてはまた去っていく]
……ねえ、神父もベアも…鍵の書に何を求めたの…?
[呟きは静かに床へと落ちて消える。
精霊であるアマンダは、人間の言う「神様」に縋りはしない。
ここにもベアの姿がない事を確かめれば、踵を返すだけ]
ティアマット。
[その名前は、遠い記憶の中で聞いたことがあるような気がした。
薄れ掛けた、遠い記憶。もう場所や時は覚えていないけれど。]
養母…育てられた、のね。
[当たり前、との言葉には、どんな言葉やしぐさ、表情を返していいかが分からなかったので、きっと曖昧な表情になったと思う。
そして瞬時に砕かれた岩を見上げて目を見開いた。]
…ここ、何か危なそう。
昨日も何かに足を挟まれた。
[ふと、とらばさみが消えて足の傷も治っている事に気がついた。]
…あれ、今の…
[振り返った時、視界の端を過ぎった黒猫に目を瞬く]
『あの猫は…教会の……神父の? まさか…』
待って…!
[こちらの様子を伺っていた黒猫は、影へと入り、消えた]
―墓地からKirschbaum・明け方―
………。
[夜が明ければ、人に見咎められず行動するのは不可能だろう。ましてこの格好では、どう疑われても仕方が無い。
ダーヴィッドを一瞥し。
抱え起こして、傷の無いほうの肩を担ぐ。引きずるようにして、Kirschbaumへ向かう。幸い、店へ向かう途中で人間に見咎められることは無かった。]
[Kirschbaumの戸を叩くと、明け方だというのに店主は戸を開き、迎え入れてくれた。彼もまた、人では無いのだ。]
[ダーヴィッドをソファへ寝かせた。
宿の一室を借りて、シャワーを浴びる。
利用客は減っていた。]
[繰り返される言葉に、一つ頷いて]
俺には、正式に両親と呼べる存在がないから。
生命を育む命竜のお方様に育てられたんだ。
[答える瞬間、表情には苦笑めいたものが過ぎるか]
まあ……そも、この迷宮自体が危険だからね。
だから、単独行動はしない方がいいんだ。
−現在/中央広場−
[結局、アマンダは、黒猫もベアトリーチェも見つけることが出来なかった。子どもが遺跡へと近づこうとしない様子から、無意識にそこに居るという選択肢が抜けていたのかもしれない]
……困ったな…。
今夜また、あのうねりが来る前に…あの子を止めたい…ううん、あの子に止まって欲しいんだけれど、な…
[茜色差す空を見上げれば、一陣の風が吹く。アマンダの対]
…ユリアン? 何処へ…ああ、ティルの?
[投げかけた声は、届いただろうか]
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