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[虚空を見上げていた頭が、ガクンと落ちる。
俯き、顔色の伺えない状況で暫し静止していたが、やがて細かに肩を震わせ]
………くす。
[小さく笑みを漏らすと、ばっと前髪を掻き揚げる。
そこから現れたのは、ナターリエ・ヘルゼーエンの微笑みとは異なった、嗜虐的な色を多分に含んだ微笑み。]
あーあ。さすがにそろそろ限界やったか。
まったく、最後の最後に銀翼のやつにネタばらししてしまいおってからに。
せっかく、おもろいことになりそうやったのに。
[泣き真似からけろっとした表情に戻すと]
やらないなんて言ってられないわよ。
アナタだって既に参加者。
いずれやらざるを得なくなるわ。
そんな素敵な力があるんだもの。
[イレーネの背中で逆立つ翼に視線をやる。
その少女がここへ連れてこられた大きな要因]
[目端でユーディットが瞳を閉じるのを見れば]
ちょーっとやりすぎたかしらねぇ。
回収前に死ななきゃ良いけど。
[加減難しいわぁ、などと呟いて。
しばらく後、手当て可能なうちにユーディットはスタッフに回収されることだろう]
[ブリジットの声に、視線を一瞬そちらへ流す。
細められる、蒼。しかし、言葉は紡がれない。
ユーディットが目を閉じる様子、イレーネの行動。
目の前の真紅へと視線を戻しつつ、それらを見やり]
……泣き真似すんな、気色わりぃ!
[一刀両断]
…ああ。
[なるほど、ユリアンはこの少女の絶対存在なのだなと。
おぼろげに理解する]
この座標軸だと、廃墟区画か。
大して遠くはなさそうだが。
[脇から操作盤に手を伸ばし、幾つかの操作を加える。
グリッドに合わせるように地図と映像を呼び出して重ねる。
それが簡単にできてしまうのは少女の能力の名残なわけだが]
直接行くか。
或いは君から呼ぶ手段はないのか?
――……………、
[涙は零れない。
泣き方を知らないように。]
痛いのは、嫌、
だけれど、わたしは……
それなら。
[ぽつり、ぽつりと、声を落とす。]
[そう言うと、んーっと伸びをして、手足の柔軟運動に入る。]
あー、肩凝った肩凝った。
他人の意識に体使わすと、疲れてもうてしゃーないわ。
出来るなら、もっと効率的な体の使い方してほしいとこやねんけど。
[そこまで言うと、にまりと哂い]
ま、しゃあないか。そんなん『見える』の、うちくらいなもんやろうし。
[そう言いながら、バキバキと凄い音の鳴る柔軟運動を続ける。]
やらなきゃいけないなら、それは遊びなんかじゃない。
貴女にとって遊びでも、私には遊びじゃない。
だから、私は遊ばない。
これは、遊びじゃない――っ。
[死ななきゃ良いけど、という軽い呟きに
翼は制御を離れて鎌首を擡げる。
羽先が針のように、勢い良く紅を縫い止めようと]
いやぁん、アーベルちゃんがひどぉい!
アタシ傷ついちゃったぁ。
[今度はうるうる。
本気なのかわざとなのか。
その様子からは計り知れない]
[あー、こいつ調子狂う、と思いつつ、額に手を当てる。
カッカとしたら負け、そんな事を考えた矢先に聞こえた声に]
……落ち着け、イレーネ!
[白の翼の動きに、とっさに静止の声を上げていた]
[データベースに入れられているデータ。実はその中に、彼女は要注意人物として登録されている。]
名前:フィーネ=ブリアー(Fine=Briah)
年齢:16歳
通り名:終焉
武装:サバイバルナイフと拳銃
スタイル:跳弾をばら撒きながらのナイフでの近接格闘
特殊能力:事象を数値化して認識する能力
「全てが数に見えるねん」というのは、昔潜入を許した際にカメラ越しに当人が言い残した言。
ありとあらゆる組織・団体から依頼を受けては、殺人窃盗誘拐までを呵責なく行なう特A要注意人物。
その目的は一切不明。テロ組織と強い繋がりがあるという情報あり。
[ぐしぐしと涙を止めようと…しながら
てぃるの操作をおともだちを抱えて眺め]
…………行く。
[てぃるの言葉に小さく。けれと、きっぱりと。]
[呼び出すしゅだんには触れず]
……撮影
[球体を一つ拾うと、レンズをモニターに向け]
[地図を撮影保存すれば、そこへ向かおと]
[静止が彼の声でなければ、止まらなかっただろう。
咄嗟に翼の動きに戸惑いが生じる。
その切っ先は空で止まったか、それとも、
勢い余ってそのまま何某かを貫いたか――]
だって――だって――っ!!
[握り締めた拳、何故咎めるのだと訴える表情は
行き場のない感情に歪んで]
そりゃあアナタ達にとっては遊びじゃないわよねぇ。
でもあのお方にとっては遊戯でしかないのよ。
アタシ達はその遊戯の駒。
決着がつくまでこれは続くの。
理解してくれなくても良いわ。
しようがしまいが、ここからは逃れられないんだもの。
[クス、と笑みを漏らす。
イレーネの翼がこちらへと向かって来ると一度瞳を瞬かせ]
ちょっと連戦は勘弁してくれなーい?
これでも結構力使ってるのよぉ?
[針のような羽先が近付いても調子は変わらず。
アーベルの制止も聞かず尚も羽先が近付くようなら、未だに分散していた影の槍がルージュの前に現れ、鍔迫り合いのように押し留めることだろう]
……それでも。
いきるにはそれしかないんだよ?
[ゆらりと立ち上がり、
視線を向けたのは、イレーネに対してだった。]
いきられなかったら、意味が無い。
いきていなかったら、何も無い。
[彼女とは対照的に、声は静かだった。
表情は、負けないくらいに、歪んでいたけれど。]
あたしたち――?
貴女は、自分が遊び道具でも平気なの?
変、変、おかしい、おかしいよ!
もし、それを理解してここから逃げられるとしても。
そんなもの、理解したくも――ない。
[静止しきれなかった羽先は影の槍に阻まれ、
すぐに元の翼の形へと戻される。
まだ羽先は怜悧な輝きを宿したまま]
……今、ここで大騒ぎしても仕方ねぇって。
この手の相手とは、話したってどうにもならんし。
だからって、そんな風にカッカしてたら、勝てるもんも勝てなくなる。
だから、今は、落ち着け……な?
[諭すような口調で言いつつ、ぽふぽふ、と頭を撫でてやる。
どこまでも、調子を変えない真紅の言葉が聞こえれば、ゆるり、と蒼をそちらへ向け]
……ま、連戦したがるタイプじゃねぇのは、みりゃわかる。
[だから]
また後で、お相手願うさ。
……あんまり、かかわりたくねぇタイプだがな。
[最後の部分は、本音だろう、きっと]
[不意なところから向けられた声と目線を感じれば、
紅に警戒心を残したまま少し彼女の方に向き直り]
生きてても、活きれないなら生きてない。
私は活きるために生きたい。
活きれないなら、活きたい。
それでも活きれないなら――逝きたい。
[何を言っているのか、自分でも半ば分からなくなりながら。
それでも、単に息をしている事が生きているのとは違うと
彼女はただ、そう言いたかった]
煩いコねぇ。
ここに放り込まれた時点で選択肢は無いの。
だったらやれることをやるだけよ。
アナタみたいに逃げてるだけじゃ何も解決しないの。
アタシの未来はアタシが切り開くわ。
それにアタシの場合はこれに参加することが今回の仕事だしぃ?
仕事はきっちりとこなすのが主義なの。
[イレーネの羽が戻っても槍はその場に浮いたままで。
ルージュもまた油断なくイレーネの様子を見ている]
あらぁデートのお誘い?
イイオトコから誘われちゃったら断れないわよねぇ。
アタシはアーベルちゃん結構好きよ?
[どこかうきうきとした様子で両手を頬に当てる。
もちろん頬を朱に染めて]
[遣る瀬無い、遣る瀬無い。
撫でるその手を受け入れる事で平静を保とうと、必死に。
ばさばさと、荒れる翼]
あんな“おばさん”なんかに、私のみらいは――あげない。
絶対、絶対、絶対――あげない。
[酷い地雷をぶち抜いたような気がするが、気にもせず]
次会ったら、知らない、から。
ああ。
それじゃ、また。
[短時間とはいえ、敵となりうる相手であることを忘れた。
そのことに苦笑しながら、それでもただその姿を見送って。
少女の姿が消えれば再びモニターへと向かい]
さて、こっちは…
[少女のように短時間では探し出せないが。
幾つかの風景を呼び出してゆき――瞬間絶句]
…なぁ、蛇。
ギリギリまで出てこないのじゃなかったのか?
確かにあのままでは辛かったが。
……もっと酷いことになる可能性の方が高そうだ。
[大きな溜息を吐き、右手で顔を*覆った*]
[アタシの未来はアタシが切り開くわ、と聞こえれば]
おばさんのみらいなんて、切り捨ててやる、んだから。
[天然挑発]
逃げるとか、何とか。
後ろと前しか考えられない人と、私は違う。
[アーベルに対する態度を見れば、また翼をばたつかせて]
アーベルを変な目で見ない、で!
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