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そう、彼女を歌い続けサせてあげる義務と権利は私にある
だから、これは私が持つに相応しいんだ
ほかの人には絶対に渡サない。彼にも渡すわけにはいかない
だって私は彼女の……
―――…、
[ぱたん、と軽い音を立てて。扉が閉じる。
見慣れた荷物と共に、数冊の書籍が散らばる『青年』に宛がわれた部屋。
静かに扉へと凭れかかる。零れた呟きは室内へと響き。
…そうして、緩やかに瞼を伏せる]
[窓から月明りが差し込めば
―――"蒼"の光を湛えた目が、数回瞬いた。]
……ぇ、…
[薄く開いた口唇から零れるのは、驚愕の呟き。
赤を纏った女性が、オルゴールを奪った者であって
それを執事が「呑まれる」と指摘した。―――"そこまで"は覚えている。]
……また。
[記憶が、途切れる。…そしてそれは、日増しに長く。]
―――…っ、も…一体、何…、
[手に抱えていた筈の書籍が、力無く床へと落ちる。
扉へと寄り掛かったそのまま、崩れ折る様にズルリと座り込んで。
緊張か、浅くなる呼吸を抑えようと胸元を握り締める。]
[答えを、知らない。持ち合わせていない。
それが、こんなに。]
[握り締める力が、僅かに強まる。
月明りは、天を高く横切って。―――夜の帳が明けるのは、*まだ先の事*]
[暫く声を上げて哂っていたが、ピタリと笑いを止めると]
……足りない。まだ。全然。もっと。捧げないと。生贄を
ああ。そうだ。あの方がいい。そうだ。そうしよう
[ブツブツと呟きながらスクッと立つと、ふらふらとよろめきながら屋敷の中へ*消えていった*]
……あ
オルゴォル。
[口唇が震えた。
夜の闇。
紛れるように穴を掘る姿。]
どうして?
……あぁ、あなたも魅入られたの?
[返る答えなどあるわけない。
呟きながらいなくなった彼女。]
……歌より。
それがそれであるだけで。
…………あんなに綺麗な、色だったのね
─ホール─
[『自分』が戻るのと、魔の女性の消滅は、ほぼ同時だったろうか。
ぼんやりと瞬く視界に映るのは、ゆらめく真紅の花弁]
……『 』……?
[掠れた声が消え入りそうな声で名を紡ぐ。
しかし、答えはなく]
「……エーリ?」
[代わりに、カーバンクルが自分を呼ぶのが聞こえて]
ああ……大丈夫、だ。
[呟いて、真紅の花弁を見つめる]
それに、しても……。
[今の一連の出来事に、一つ、息を吐いて]
……危険すぎや、しないか……これ。
あんまりにも……色々……。
[続く呟きは、ため息に飲まれ。
音としての形を結ぶ事無く、*消えた*]
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