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[ぎっ、とユーディットを睨むように視線を向けて]
消去法で俺が人狼だと!?
お前が言ってることが正しいと言う証拠はどこにある!
アーベル本人から聞いたわけじゃない。
聞いたのはお前だけだ!
[押さえつける腕を振り払おうとするも、上手く力が入らず動けない。
女の身でこんな力が出せるのか──?]
っつ。
[痛みの走った胸元を押さえる。
それは恐らく幻痛のようなものであったけれど]
そんなこと。
私も彼も知っていましたよ。
[相も変らぬ青年に、顔を顰めて返す]
人間だった頃の私も大概性質が良いとは言い難かったですしね!
[暴れようとするユリアンを押さえつける。
ただ普通の女性、というには鮮やかすぎる手腕で。]
信じられない?
信じられませんか?
アーベルが偽でなければ、ユリアンは人狼ですよ?
そして貴女はアーベルが本物だと認めましたね?
ユリアンは人狼です。
貴女が偽者でない限りは!!
そうそう。偽っているだなんて話、初めて聞いたよ。
それなら尚更、放って置いたほうが楽しかったかもね。
結果が分かれたときが、見物だったに違いない。
嘘を吐く気があったかどうかは知らないけど。
[失点という単語に、思い出したように言った。
後の指摘には、口唇が弧を描く]
良い利用の仕方だと思うけど。
[向けられる視線。
緑は感情を抑えたまま、それを見返して]
ああ。
確かに俺も、アーベルの占いの結果は聞いた。
本人から、直接。
[結果には触れず、それだけを告げる。そこに、偽りはないから]
っ……。
[エーリッヒの言葉に息を飲む]
…そんなの、嘘だ。
だったら、お前らアーベルに騙されてんだ!
アイツが力を持ってることが、嘘なんだ!
俺は…違う…。
人狼なんかじゃ…ない…。
[身の潔白をしようにも、言葉だけでは足りず。
悔しげに、声が徐々に小さくくぐもったものへと変わっていく]
自分の身体の変化に、気付かないでいるには。
生業の知識も、邪魔をしてくれまして、ね。
[ふぅ、と息を吐いて手を下ろす]
必要とあれば完全な嘘もついたと思いますよ。
躊躇う気も無くなってきていましたしね。
やり方はともかく、貴方の挑発に乗ってしまったのでは意味がありませんでしたから。
[もっとも、この青年が挑発のつもりですらなかっただろうことはもう理解させられてきてもいたが]
…悪い面ばかり見て決めてしまうのも早いのでは?
人間は素晴らしい力も持っていますよ。私はその両方を教わりました。
[丁度脳裏に浮かんだのは、あの虹のように煌く空を表した絵]
まあ、この場面を見て。
それを言うのもどうかと、自分でも思いますが。
[ふと、口を噤んだ。
深呼吸をするかのように、何度も深い息を*重ねる*]
未だ、痛みが在るんだ?
[緩く、首を傾げて問い、
必要とあれば、と聞けば、尚更、残念だと笑った。
直後には、収まりを見せたが]
悪があるから正義が存在するように、
美しい面があるから醜いのだという価値判断が出来る。
本当に醜いものばかりであれば、そう思う感情すら存在しない。
そんなのは、理屈では、理解はしているけどね。
[期待するのはもう飽いた。
言外に、そう、台詞は続いていた]
ちがう、違うっ!
私が信じられないのは、貴女です!
[ユーディットの言葉を肯定したエーリッヒの――だがその以前、困惑した様子は見逃さなかった。
何か違うと、警鐘が鳴っていた。]
うそを、つかないでください。
[それはエーリッヒにも向けられた言葉か。]
アーベルさんが私と同じ力をもっていたかどうか、それすら私には分からない。その可能性があったとしか、もう分からないのに。
それにアーベルさんが死ぬまでの間、そんなに何人もの人間を見分けることが出来るはず無い。
この力は、占いという力は、絶対じゃない。
例えその力の元が違ったとしても、一日に一人が限界のはずです。
まずユーディットさんを視たんですよね、次に、ハインリヒさんを。
だったら、どうしてハインリヒさんを視た日に、お医者先生を視に行くような真似をしたんですか?
その日は占う事は出来ない。なら、見に行くのはその次の日じゃないといけないはずです。勘でお医者先生を追及しに行った?そんなこと、占い師ならまずやらない。視えることができるというのに。
[滅多に見せる事の無い怒りを露にした後で、急に萎むように項垂れた。]
…どうして、そんな事を言うんですか。
どうして、嘘なんかつくんですか?
おねがい、ユリアンを、離して…。
[俯きからは、嗚咽が漏れた。]
……力がある、と偽るのであれば、尚更、隠しておく意味はないだろ。
それこそ、見える場所で伝え、疑惑を撒くものだ。
……先生が、死者の声が聞こえる、と唐突に言い出したようにな。
[息を飲んだユリアンの叫び。それに返す言葉も、淡々として]
嘘は、ついていないよ。
聞いたのは確かな事だ。
[イレーネに返す様子も冷静なまま]
[叫ぶイレーネを静かな眼差しで見つめる。]
うそはついてません。
エーリッヒ様も、うそはつきません。
貴女が視たのでしょう。エーリッヒ様は、人間だと。
判らない、で止まるんですか。逃げるんですか。
考える頭があるでしょう、貴女には。
何故――視てもいないのに、ユリアンが人狼でないと、そう言い切れるんですか。
そこにどんな証拠があるんですか。
色んな人がいるんです。
力に多少の差異が生じることもあるでしょう。
何故、自分が視た者の言葉を信じようとしないのです?
占いの力は、確かに万能じゃない。
そして、いつまで使えるかもわからない。
なら、それにのみ頼り切らずに動くのもまた、力あるものの姿のはず。
アーベルがどう思ったかはわからんが。
それは、占い師として、間違った行いとは言えないんじゃないかな?
[イレーネに向ける問いは、どこまでも静かなもの]
貴方が視る者なら、結論はひとつです。
ユリアンが人狼!
今一度、聞きます。
貴女は、本当に、人と狼を見極める力があるのですか?
……アーベルが本当に力を持ってるんだったら。
俺にはお前らが事実を捻じ曲げているとしか思えない!
何で俺なんだよ!
調べたわけでもないのに!
アーベルの行動だけでお前らはそれを信じるのか!
それがアイツの作戦だったらどうするんだよ!!
普段から平気な顔して嘯くような奴の言ったことを鵜呑みにするってのか!
[錯乱したかのように叫び続ける。
その瞳には信じてもらえない悔しさからか、少しずつ雫が溜まり始めていた]
痛み、など。
感じないようにすれば、感じないものですけれど、ね。
[軽く睨むようにして]
精神的修行の足りない身ですから。
マゾヒスムではないので、嬉しいとは思いません。遠慮します。
…私よりよほど困難な道をいらしたのですね。
それでも美しいと感じたものは、本当に何一つ無かったのですか?
ユリアン。
[押えつけながら、耳元で囁く。]
私はともかく、エーリッヒ様が嘘をつく必要はないはずです。
作戦って、何ですか。
アーベルが嘘つきなら、何故彼は殺されたんです?
ユリアン。貴方がもし人狼でないなら、答えはひとつですよ。
違う違う、そうじゃない!
力に差違?それもアーベルさんが言っていたんですか?
自分の勝手で動いたアーベルさんも、ユーディットさんも、私には信用できない。二人のやり取りを全く知らないんだから当たり前です。
そうです、エーリッヒさんは人です、それだけは分かってます。でもそれだけです。あなたがさっき何か驚いたのも見ました。
私は人が嘘をつかない生物だとは思っていません。
[冷静に返すユーディットに、伏せたまま淡々と返す。]
…私は、最後まで信じられる人は信じぬく。
それが、ミリィが残してくれた遺言だから。
ユリアンは人だと信じています。
だから。
今私に分かっているのは、貴女が、貴方たちが信用出来ないという事です!
[顔を上げ、ユーディットを睨んだ。]
そんなの知るかよ!
人狼の仲間内で何かあったんじゃねぇのか!
[囁きには叫びで返す]
アーベルが偽者だったらてめぇの正体は知れねぇ。
てめぇがついた嘘に、てめぇを信じきってるエーリッヒがただ言葉尻に乗っただけかもしれねぇじゃねぇか!
俺はエーリッヒから、アーベルが誰を調べたかなんて聞いてねぇし!
困難なのかな。
そうでもないかも知れないよ。
感じ方なんて、人、それぞれだろうしさ。
[問いかけを耳にして、僅かばかり、赤は揺れた]
……さあね。
裏があると思えば、美しくとも、そう思えなくなる。
貴方がそう思われるのならそうなのかもしれませんね。
[ゆるく頭を振る]
………。
まだ時間が残されていたら。
ミリィの部屋にある絵を見てきてみて下さい。
それもまた、貴方を変えることは無いかもしれない。
けれど何かを見せてはくれると思います。
/中/
……若干。表が、心配な。
ユーディットは自吊りに仕向けているのであって、
ユリアン人狼だとしても吊る気はないと思うのだけれどな。
尻尾を出してくれれば儲けもの、程度で。
死者の身が恨めしい。
つい中身が出ました、失礼。
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