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……死ななければ、終わらない。か。
[聞こえた子供の声。
呟く]
……結局、終わらせる力には、なれんかったな。
[子供が、自分にそれを望んでいたか否かは知れぬけれど。
誓いを違えた事には変わらず。
その結果は、僅かに、重い]
[その日の夜は眠れなかった。
ベッドに腰掛、さまざまなことが頭をめぐり疲れたように俯いている。
自室をノックする音]
誰だ?
[問いかける言葉に答えたのはよく知った妹分の声]
ナタリーか、適当にはいってくれ…。
[ベッドの上に座ったまま俯き、ナターリエの説明を聞いていた。
上の空、適当に返事を返し、
最後に心配する声をかけられた気がする。
適当に手を振りながら]
ちょっと疲れてるだけだ。休めば大丈夫だ。
ナタリーはまだ用事があるんだろう?
[こちらの言葉に頷き、部屋を後にするナターリエの姿を見送った]
お。
なんだァ、昨日ヤられてた奴じゃねェな。
[視線を逸らし]
[存在][眼を細め]
さては、喰われたか。
そいつはご愁傷様だ。
[口許][笑みは絶えず]
……あれを、喰われた、と称していいのかはわからんが。
いずれにせよ、奴らにやられた事だけは、間違いなかろうな。
[返すのは、ぬけがらを見て認識した事実そのまま。
笑みの絶えぬ口許。
余りにも異なる様子に。
暗き翠には、疑問の色彩]
ハ。
あんな甘ったれと一緒にすんな。
[呼ばれた名][一笑に伏す]
さァて。
相棒、兄弟、…それとも、分身と言うべきかな。
[口許を歪め]
[はぐらかすよう]
……まあ、確かに。
一緒にするのは、いささか……苦しいものがあるか。
[ぽつり、呟いて]
分身……。
と、いうよりは。
反側面、とでも称したい所だな。
[はぐらかすような物言いも、やはり、知る姿とは違うよで。
窺うよに見つつ、綴る言葉は淡々と]
[膠着していた場が動いた時ですら]
[彼に動きは無かった]
[床に膝を突いたまま、何事かをぶつぶつと呟いている]
[その呟きは極小過ぎて他には聞き取れなかったことだろうか]
[心の中で黒が渦巻く]
[負の感情]
[それが徐々に全身へと広がって行く]
[刺されたナターリエが倒れた後も、身動ぎ一つすることなく]
[本来の薬師としての行動を何一つ為さぬまま]
[ただその場に留まっていた]
[哄笑]
ッハハハ。
なるほど。
上手いコト言うなァオマエさん。
[ふと][片眉を上げ]
…おや。
噂をすりゃ、お目覚めのようだ。
[自らの隣][眼を遣る]
[どれだけの時をそうしていたであろうか、ふと顔をあげる]
ああ、そういえばナタリーが…。
[何かいっていたなと思い出し]
ヨハナさんの部屋か…。
[目の下にクマを残しながら少しふらつく様子で向かう、
部屋につくころにはきっとベアトリーチェとナターリエの決着がついたころであろう]
笑いを取るつもりは、なかったんだが。
[哄笑にも、さらり、返して]
……目覚めた?
[動く視線と言葉に、訝るように呟いて。
目の向けられた先に、自分も目を向ける]
[同時][散り散りになった存在]
[集まり][形を作る]
[先程までそこに居た『彼』][全く同じ姿で]
…う、
[眉を寄せ][眼を開けた]
[果たしてあがった悲鳴は、ベアトリーチェではなく、ナターリエのものだった。
気丈にも叫びはせず、呻くような声を吐き出すのみだったが、ぐらとよろめいた身体は傷の大きさを物語る。
ウェンデルの位置からは、少女が具体的に何をしたのかは見えないが。
その表情は微か、驚きを抱いているようにも思えた]
…随分、「お上手」ですね。
[ナターリエが油断していたとは思えない。
だからこそ、そう言葉を吐いた。
彼女の傷を心配する言は、今はない]
ナターリエ!
[何が起きたのかまでは見えなかった。
けれど、ナターリエとベアトリーチェの間で動きが有ったのは確かで。
そのうえ、ナターリエがふらついて、銀の粒子が散っていく様が翠玉に映ったから。
狭い部屋の中、駆け抜ける勢いでナターリエをベアトリーチェから引き剥がす。
宙に、紅の筋が二つ、舞った]
……な。
[拡散と、再構築。
目の前で起きた事態を、把握できずに一つ、瞬く]
……アーベル、か?
[こちらを呼ぶ声は、自身も知る者で。
つい先ほどまでとの違いに、名を呼ぶ声は問うような響きを帯びた]
[ヨハナさんの部屋につくとまず聞こえたのがゲルダのナターリエを呼ぶ声で、
そのただならぬ様子から意識が自然とそちらに向く]
どうした?
[中に入ると見えたのはナターリエとベアトリーチェを引き離すゲルダの姿だった]
また、何があったっていうんだよ…。
ナターリエ、…ナターリエっ!
薬師さ――
[幾らゼルギウスを呼ぼうと、意味はない。
その直感が、手を動かすことに繋がった。
身に纏うエプロンを剥いで、ナターリエの傷口に押し当てる]
なんで、傷口…ふたつも!?
[床に伏せさせ押さえるも、両手それぞれで塞いだ場所が紅へと染まっていく]
ナタリー!
[構えていても介入する余地など無かった。
動こうとした時には既にナターリエの声が上がっていた]
ゼル…は無理か。
ゲルダ、手当て頼む!
[ベアトリーチェを半ば突き飛ばすようにして。その先には老婆の眠る寝台があっただろうか。
ゼルギウスを見るが、何か呟いているだけで動かず。
ナターリエを引き離したゲルダに、背中を向けたまま声をかけた]
今、何をしたんだ。
[鞘に入ったままの短剣を右手に握って、ゲルダとナターリエを庇うような位置に立つ。
ウェンデルの声が淡々と響いて。その意味は分からず眉を寄せた。
ベアトリーチェの説明――ナターリエは自分の鎌に、というのを聞いて、眉は更に寄った]
[ずぶり、と。すり抜けると思っていた刃が手応えを返すので、わたしは慌てて爪を戻した。]
[…やられた。ハッタリだ。]
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