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< おれたちを、ここに、つれてきたの?
猫は、そう考えました。かんがえて、やっぱり、血の出ていないほうの手で、ふれました。 >
< そのとき、
空気の流れか、他のものか。
振り返った先に、アーベルの姿。 >
……アーベル?
< すこし、首をかしげました。
機鋼の竜からは、手を離して。
もう片方の手は、あまりうごかさないままに。 >
―屋敷・自室―
[結局、昨夜オトフリートがこちらの言いたい事を判ってくれたのかどうかは甚だ疑問だった]
て、ゆーか、ぜってー本質的に判ってねーな、あれ。
[ごろり、寝台の上で寝返りをうつと、バンダナを外したままの髪がばさりと揺れ、パチパチと紫の光を散らした]
此処まで声のしない場所はそう無いからな。
――流石の私も、居心地は良くない。
[精霊には辛い、との言葉に一つ頷いて。]
了承した。丁度先程一周巡ってきた所だからな。
問題ないよ。ならば、真直ぐ向かおうか。
最終的にはまた此処には辿り着くように
繋がっているようだから。
何処から巡っても問題なかろう。
器?
< 言葉に、アーベルを見ます。
かれは、なんだか、変わったような。
そう思って、猫は、かれのそばに、よろうと思いました。
なんだか、わからなかったから。 >
─影輝界・中枢─
不意に駆け抜けた衝撃は、精霊界の全域を揺らして。
『均衡』を領域と為す界の中枢。
貴紫の六翼広げし影輝の王は、閉ざせし瞳をゆるりと開く。
「……揺らいだ……か」
掠れた呟きが零れ、影輝王は手にした刀を握り直す。
「……外からの干渉は、不可能……出来うる限り、支えはするが……」
できるのは、それだけ、と。
零れるのは苛立ち帯びた、呟きか。
「……頼むぜ……」
機鋼界の内にある者、その姿を思いつつ。
音を立て、六翼を羽ばたかせる。
舞い散る粒子は、影輝の波動。
それは軋み、揺らぐを機鋼の界を支えし力となるべく、精霊界を*渡り行く。*
エテルノでも、か。
さっさと出たいところだが、そう簡単にゃ許してくれないか。
[がりがりと頭を掻く]
ああ、そっちはもう回ってきた後か。
二度手間になりそうですまんな。
けど繋がってるってならひとまず安心だ。
そこまで迷う可能性は無いだろう。
[謝罪を入れてからからりと笑って。第一集積所から通路へと移動した。どこへ向かおうなどとは考えず、足の向くままに歩く。部屋の名を示すプレートを眺めながら]
─第一集積所→通路─
……?
じゃあ、どうして、
ここに、おれたちを?
< 手をのばそうかと思って、
猫はそれを、やめました。
少し宙をつかんで、にぎりしめて。 >
アーベルは、
わからないの、わかった……?
─二階・自室/昨夜─
[屋敷に戻り、状況を聞いて。
色々とため息をついたりなんだりしつつ、セレスを連れて自室へと]
……て。
なんですか、コレ?
[それで、差し出された物にちょっときょとりとしていたりとかは、緊張の中でののんびりとした一コマ]
もらってない、もの?
……ひとつめの、もくてき?
< 猫は、何がなんだか、わからなくて、じっと、彼を見ました。
つめたい。
心の中まで、凍えてしまうような。
ためらいがちに握られた手を、開いて、その頭の方に、のばしました。 >
…アーベル、じゃないの?
あなたは、誰?
……アーベル、は?
世界には、あらゆる声が満ちているのが常だったからな。
こう、声の聴こえない場所は…或る意味では貴重だよ。
歓迎すべき物では無いがね。
…事が済まなければ。
出る事は――少し、難しいかも知れぬな。
[小さく苦笑を零す。 肩へと止まった鴉を一瞥すれば
相手の後に続くように、一歩踏み出して。]
いや、手間など構わぬよ。興味本位で廻った所だったからな。
此処で迷ってしまっては――
事が終ってからでも、出れぬかも知れぬぞ?
[冗談まじりに、けらりと笑って。
無機質な通路へと足を踏み入れる。ふと、思い出したように]
そういえば、御仁は噂の機竜を見たか?
[その後、いくつか言葉を交わして。
……セレスは少し、機嫌を損ねたりもしたようではあったけれど。
それを笑って受け流しつつ、眠りに落ちて──翌日]
―ファクトリーエリア―
< 手を払われて、猫は、驚いて、まっさおな目を向けました。手を、自分の方に、ひきよせます。
だけれど、つづいたことばに >
エテルノと、ノイ、と、おなじ?
< 少し、かんがえながら、口にして >
……アーベルは。
ひとりが、いっぱいで、だけど、ひとり?
ふほんい?
< 何が、不本意なのか。
猫にはまったくわからずに。 >
……アーベル、は?
さっきまでの、アーベル、が、嫌い?
─二階・自室─
[目を覚まし、最初に確かめたのは呪印の具合。
痛みはなく、それなりに安定している様子に、一つ安堵の息を吐く]
……ヴィンター、悪い。少し、頼む。
「……まったく」
[処置なし、と言わんばかりにばさりと羽ばたく白梟に苦笑しつつ、癒しの光を印に受け、痛みを抑える]
さて……んじゃ、どうしたもんかね。
[落ち着いたところでぽつり、零れたのはこんな呟き]
いつも聞こえるものが聞こえない場所、確かに貴重だな。
常に聞こえるものが煩わしいと思うなら、歓迎しそうになるかもしれないが。
俺もここは歓迎出来ん。
[風の声が少ないから。風により情報を得ていた自分としては、手足をもがれたかのようで。気分の良いものではない]
事が済みここから出れるのが先か、界が揺らぐのが先か。
事が済むにしてもその行く先がどうなるのか。
見通しが出来ないな。
あー…出れるようになっても出れなくなるのは、勘弁。
[うへぇ、と嫌そうな表情。きょろきょろと見回しながら問われる言葉には]
ユーディットの鏡でちらっとは。
直接は見に行って無いな。
[鏡で見た機鋼竜の姿を思い出す。訊ねたいことはあるのだが、果たしてあれは答えてくれるのか]
[しばらく行った先で、足がぴたりと止まる。とある部屋の前。何かを感じるのか、その扉の奥をじっと見るように]
…たしかに、おれは、くわしくないけど。
< 今までのアーベルでは、言わなかったことでしょう。
そう思って、猫は、あおい目で、ただ、彼をみました。 >
アーベルは、
いまから、
……なに、したい、の?
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