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っ!?
[突然、足元が揺らいだ。
こけかけそうになりながらも、視線を足元へ移せば、自らの影が、離れていく姿]
これ、は……!?
─西殿・地下階段前─
[身体は鈍いが動かぬわけではない。傷の残る右手が僅か震えたが、握り込むことでそれを押し留めた。ミリィも共に辿り着いた地下階段前。エルザがその扉を開けた]
…ぬぅ!
[闇より飛び出す何か。形が変ずる最中の欠片だった。身構えた直後、ミリィが鎖の付いた肩当てを投げ、欠片の縛を試みる]
変じ始めの欠片が居ると言うことは、やはり剣はこの下か!
[右腕をローブの中へと引っ込める。ローブの中に隠し、腰に据えていた何かをその手に掴んだ]
[三人のうち、二人を引き離せたらと思えども、闇の蝙蝠が見るのはやはりさすがと言える光景。
蝙蝠たちは抱えた欠片をそこにめがけて叩き込む。
触れた竜の属性をしめす形になるだろうとは予測がついた。]
< 全ての影は一箇所に集まる。
結界のものまでを奪う事は、さしもの影も出来まいか。
存在の欠片とも言うべき他者の影を奪い凝縮し一つに固め、黒の――加減によっては深紫にも見える、靄にも似た一匹の巨大な竜へと変わり果てた >
―西殿地下への階段―
ありがとうございます。
[大丈夫、とは言わなかった。
探査の疲れ、力を抑えなくしたための疲労、それらは軽いものではなかったから。だが決して弱くは無い笑みでミリィへと感謝を述べる]
っ!
[そして階段への扉を開けるとほぼ同時だった。
顔を庇うようにして咄嗟に一歩後ろへと下がる。
直後鎖が飛び出してきたそれへと絡みついた]
―東殿・回廊エントランス―
リーチェ!それに、ナギさん!良かった、無事で――
[そこまで呟いたところで、流水と翠樹の影が――それだけではない。
様々な影という影が、揺らいで見えた]
これは……剣の影響……!?
それとも、ノーラが……!
心の底から。
[小さく繰り返す]
オレ、さ。
このどたばた始まって、その根っこにあるのが『願い』って聞いて。
それからずっと、わかんねぇんだよな。
オレにだってほしいものあるし。
叶えたい事あるし……ま、それって無理だけど。
でもさ。
……上手く、言えねぇんだけど。
たくさん、色々、哀しませて、それで叶う願いって、寂しくねぇのかな……?
オレは……たくさんを哀しませた『願い』を託されて、生きてて。
……すっげ、寂しいんだよ……ね。
[呟きは、とても小さなもの]
…っ
[蝙蝠が叩き込んだ欠片のひとつがみぞおちにヒットし、体を折って飛んでさがる。
鎖を戻し睨むと、もくもくとした雲のようなモンスターに変容するのが、見えた。]
…雷、その始点の雲、ですか…
物理的に攻撃しにくそうですねぇ、これはまた…!
[宙に浮くそれから注意は外さず、ザムエルとエルザの方も視線を飛ばす。]
ノーラ……?
[当然、影を使役するのは、彼の竜でしな成し得ない訳ではあるが、それでも、ここまでの力を使用するべき場面とは一体?]
……再会の喜びや、情報交換とかは後回しにしたほうが良さそうねぃ。
ノーラが影を使役しようとするならば、この先にノーラの姿があるのは明白。
その場所に行くのが先決ぽいですわぁ。
[言いつつも、影が向かう先へと走り出す]
ブリジット。
そこの仔のフォローは任せるわよ。私はあまり面識もないですしねぃ。
――…!
[自らの影が奪われし行く先――強大な影が視界へと入る。
其の姿か力にか幼子は小さく息を呑んだ。
無理も無かろう、その姿は私ですら圧倒される。]
…っ ノーラ、
[水竜殿や、氷竜殿から掛けられた声にすら幼子は気付かぬ様子で
新緑の足跡を残し、其の足は竜の姿がある中庭へと向かい始める。]
[半分見失いながらも、なんとか他の影が向かう先も計算に入れつつ、走り続け―――辿り着いた場所は、影と精神のいる中庭。
そこでナターリエは、巨大な影の竜と化しているノーラを見つけた]
影と、精神が、対立している……?
っと。精神がいるなら考えてる暇ない、か!
[すぐさま視線が通らない物影に隠れて、自身は水鏡を移して、その鏡が映し出す映像で、中庭の様子を眺め始めた]
―中庭―
[影が集まり、黒にも深紫にも見える巨大な竜へと変わる。
それは【影竜王】の姿]
――『神斬剣』をどうぞ、【影竜王】よ。
[黒の腕輪を奉げ持つように青年は微笑む。
影輝の力と精神の力、二つが混じり合い、腕輪は剣の姿へ]
『真・聖魔剣』と成し、『律』をお断ち下さい。
[もう一つ必要なのは【皇竜王】と『聖魔剣』
ギュンターと竜都を引き換えに、エルザを、もしくは野心持つ天聖の竜を見つければいいと――…]
─西殿・地下階段前─
[掴んだそれを袖から投げ出すように引き出す。カカッ、とぶつかる音がして、その手に現れるは銀色の長い棒。ミリィが捕えた欠片に突きを放とうとして──目の前へと飛び込んでくる変形前の欠片]
くっ…!
[突きの形から変じてこちらに飛んでくる欠片の叩き落としにかかる。一つは棒に打ち落され、そのまま消滅。しかしもう一つ飛んで来ていたのには反応が遅れた。反射的に左手で払いのける。さした威力もないそれは消滅させるまでには至らず。地に落ち変形を始めた]
……ええい、厄介な。
[形作りしは人型。ただし、その材質は、岩石]
己が属たるものへ変化するとは…。
やりにくいことこの上ないのぅ。
[短い舌打ちをし、その相手へと相対す]
―東殿・回廊エントランス―
ええ、分かったわ。
[水竜へとこくり頷いて]
……っ、リーチェ!
下手に見つかったら大変だから……っ、待って!
[幼子を追うように、中庭へと掛けていく――]
[蝙蝠を見て、そちらへと肩当てを飛ばすもゆっくりのような早いような動きをする雲の化け物に阻まれ、舌打ちをする。
ばっとエルザとザムエルへ向き]
蝙蝠が、あちらへ!
きっとあそこに!
[声だけかけ、パリパリと音をさせて髪を逆立たせていく。
雲の化け物は、ゆっくりと腕のような部分を延ばして来、それを手から電撃を放つ。
宙の水分を伝い、雲が紫色と白色に光るが大したダメージは与えられているように見えず、眉を顰めた。]
[やってきた竜達の気配に青年は振り返る事なく、気配を生む]
邪魔はさせません。
[青年から生まれた混沌の気配に誘われるように、混沌の欠片が中庭に集い出す。まるで影が集まった時の再現のように]
[ミリィの声に顔をあげ、消え行く蝙蝠を視線に捉えた]
御師様、エミーリェ様。
すみません、お任せします…。
[蒼白い光宿した左手を翳して、一瞬の間を計る。
二つのカケラが変じたそれの、合間を縫おうと]
< 捧げられる剣。
竜は螢火を宿した眸で青年を見下ろす。
首を擡げる動きにつれて、影が揺らぐ。容は定まり切っていない。
逞しい腕の一本が伸ばされ、鋭い爪先が剣へと近付き――
触れた瞬間、白と黒の二色が弾ける。
反発。
揺らぐ天秤は、大きく傾いている >
…っ、ノーラ。
[駆け出した先の中庭へ幼子は戸惑いも無く足を踏み入れる。
水竜殿が身を隠している理由など、仔には些細な事である様であった。
ざわりと、仔の足跡を新緑が繁る。
尤も――その根元に足元に、影は、無い。]
……っ、
[庭の中程まで来した頃か。
見覚えのある欠片に囲まれ、幼子は漸く足を止めた。
触れてはならぬと記憶している。――しかし自らに様が在るは、この先。]
……っ、ノーラ!
[声を上げる。影竜殿が、気付いてはくれぬかと。]
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