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いた。
よかった。
< 返ってきた声を聞いて、安心した声がでました。
とびらをあけて、身をおこそうと しているのを見て、あわてて、近寄ります。あんな状態だったから、しんぱいなんです >
ナターリェ、無理しちゃ、駄目だ。
……大丈夫?
ってつめたっ!
[熱い筈と思っていたシャワーが冷たくて、思わず肩をすくめる。
細い肩を掴んだまま、首にかけていたタオルでがしゅがしゅと顔をふこうと手を伸ばす。]
[建物の扉を叩く。
返事がある前にあけてしまったのはなんとなくなのだが。
肩にぶら下がっていた猫は、軽やかに着地すると、我先にと細い扉の隙間からその建物の中へとかけてゆく]
あ、こら。シシィ、待てってば。
[猫は中へと身を躍らせ、くるっと同行者のほうを見るとニャーと泣いてたかたかと進んでいく]
…まったく、あの馬鹿猫は。
[どうすんだ、とつぶやきため息。
その割りに、仕方ないとか言いながらもこちらも気兼ねなく扉の中へと体を滑り込ませた]
[私は、近づく青年に怯える事なく、助けの手を受け入れる。
大丈夫と言う問いには頷いて、次いで声でも答える]
はい…大丈夫です。
またも御心配をおかけしてしまって…申し訳ありませぬ。
[気をやった時を思い起こし、私は細い眉を下げて謝罪する。
半身を起こせば、獣の時と同じく蓬髪を軽く振るい、草を払った。
仄かな草の香りと花の香りが、部屋に漂って消える]
[興味本位でついて行ってみれば、突如服を着たまま風呂に入るアーベル。
果てには、引っ張り出されて怪訝そう。
まあ、何というか]
良くも悪くも天然……ってところなのかなぁ。
[はぁ、と嘆息。]
お前、なんだ?
大丈夫か?
…一緒に入るか?
[濡れてへばりつくアーベルの服を見て、脱がすべきかどうするかちょっとだけ困っている。]
< ふるふると、首を横に振って、猫はナターリエを見ました。
草のにおいは、とてもやさしくて、好きなもの。
だけれど、なんとなく、ふるった頭に手をのばします。 >
大丈夫なら、いいけど。
無理を、してしまうのは、よくないよ。
疲れたら、いつでも、やすまなきゃ、だめだよ。
< そっと撫でて、その顔を見つめました。 >
[薄く開いた目は男を観]
何、が。
[問われた意味が解らぬ様子]
[周囲の思考も知りはしない]
一緒に?
別に。構わない、けれど。
[風呂は服を脱ぐものという概念が無いのか]
[言われなければ気付きそうにもない]
シーシィ?おーい、シシィってばー。
[不法侵入も気にせず黒い猫の名前を呼ぶ。
その間、呼ばれている猫のほうはといえば好き勝手館の中を移動中。
探すほうにあまり気合が入っていないので、なんともいえない追いかけっこの始まり始まり]
天然というか、なんというか……。
[思わず零れるのは、こんな呟き。
以前、竜郷で会った魔とは、明らかに違う様子に疑問は募る]
[仄かな匂いが消えても、部屋の中は自然に満ちた空気が漂って。
埃の匂いのないこの部屋が、心を込めて整えられたものなのだろうと思う。
髪へと伸びてきた手には、瞳を揺らすも逃げはせず。
私は、私へと心を砕いてくれる人を、見上げて、見つめる]
…はい。
私…ここから出られないと竜の御方に聴いて、少し疲れて…知らず眠ってしまったらしくて。
[落ち込むように垂れた頭を、青年の手が優しく撫でる。
自然のまま――梳かれる事なく流された髪は、少々引っかかりやすくはあるだろうけれど]
こんな…運ばれても目覚めないほど深く眠ってしまうとは…。
エィリ殿の言う通り…きちんと休むべき、なのですね…。
んーー。
とりあえず、服ぬげ、服。
…あ。
[アーベルのシャツに手をかけて、小さなボタンを取ろうとしたがぷち、と音がして一番上のボタンが指に残った。
すまん、と口の中で言って自分で脱ぐことを促す。]
……出られない?
< 引っ掛かりを覚える髪を、やさしく梳くように撫でていた手が、止まりました。
さすがにわからなかったのか、聞きかえして。
それから猫は、少し左腕に目をうつしました。青いきれいな布に。
だけれどすぐに、ナターリエを ふたたび見ました。 >
うん。
ちゃんと、寝ないと、後で、つらいよ。
それに、みんな、心配するよ。
< そっと、撫でて。 >
だから、つかれたら、無理は、だめだよ。
服。
[大きな指][不釣合いな][小さな釦]
[すまなさそうな男を見上げる片の青]
ん、わかった。
[水気の残る頭を緩やかに振ると]
[促されて水を吸った服を取り払う]
[下から現れる身体は青年のものではあれど、
その中に在る精神は少年にも満たぬよう。]
[彼方此方に存在するのは幾つもの軌跡]
[爛れた][縫合された][切り裂かれた][傷痕]
[どれも年月は経っているのか薄れてはいた]
[少々引っ掛かっても、木の枝などで慣れている私は痛みを示す事なく。大人しく梳かれるに任せて。
なれど手が止まれば、瞳は不安げに青年を見やる]
…えぇ。
私、囚われるは嫌で…道を探して。
なれど、天も果(はて)も……星の天蓋で覆われて…出られぬようになっておりました。
[蓬髪に覆われた細い肩を、力なく落とす。
青い綺麗な布への視線は私の目を惹いたなれど、私は彼の猫がそれを大事するを知っているから。
何も言わずに、私を見るあおの色を淡い菫で見返した]
……はい。
しばらく…この屋敷にてお世話になりまする…。
[撫でる手に、小さく頷く振動が伝わるだろうか]
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