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[倉庫を出たところでネリーの声が耳に入り、僅かにビクリとしてから振り返った]
あ、ああ、ネリー。
人を探してるのでは、無いわ。
[笑みを乗せた紅紫の瞳がネリーへと向けられる]
はいはい、わーったよちび。
終焉とやらが嘘でも本当でもどうせ短い付き合いだ、好きにしろ。
[ラッセルの訂正にも直らず、ちび呼ばわり。名に興味がないのは自分のも他人も同じ]
当たりかよ。
その割にゃ伸びてねえが…
[チリン]
[随分と人の少なくなった広間へと入り、スケッチブックを開く]
ああ、全て黒と白なのですね。
眼を閉じれば、花の色は垣間見えそうですけれど。
[暖炉の焔が、ちらちらと揺れ、手の中の風景に陰影を落とした]
[渋面を作りつつもちまちまと
飲み進めているところに手渡される砂糖。]
あ、ありがとう。
クーはやさしいね。
[闇に親い液体に白を雪のように混ぜ込み、
甘味を含んだあたたかさに息をつく]
バートも要る?
[台の上に砂糖の壺を戻して問いかけた]
人では無く。
では物をお探しでしたか?
[相手の緊張には気付いているのか気付かずか。
小首を傾げて再度尋ねる]
何かお手伝いできそうでしたら、手伝わせて下さい。
[かつ。
杖の音が止まります。
向かいからこちらに来る影が見えました。]
…どなた、ですか?
[色はよく見えません。
わたしは問いながら、灯を翳します。]
[適当に漁った小ぶりのナイフで硬いチーズに切り込みを入れながら話を聞く。返事をしたり口を挟んだりは刃物作業の合間で遅い]
ぎゃはは!
お子様にゃ珈琲はまだ早えみてえだな。
[舌を出すラッセルにいい気味だと笑った直後、ギルバートの髭の御方呼ばわりに痒み再び]
んな呼び方、やめやがれ!
まだネズミの方がしっくりくらあ。
[クインジーの鼠うんぬんにも好きにしろと鼻を鳴らす。切り取ったチーズをナイフに刺して炙る。端がとろけたところで大口開けてかぶりついた]
鏡。
客室にも広間にも無いじゃない?
だからどこかに無いかと思って。
[問いに簡潔に答える。後ろのリボンが若干傾いているのを、ネリーならば見ることが出来たであろう]
鏡が無いと髪を整えるにも大変で。
ついこのまま寝ちゃったものだから。
まだ見てない部屋もあるから、手伝ってもらおうかしら?
わかってなーい。
身長は、あれだよ。
きっと光が足りてないんだ。
光合成。
[名乗らぬ男との名のやり取りは諦めたか、
代わりに妙な理屈を並び立た。
一気に珈琲を飲み干し、
口許を袖で拭ってカップを置く]
ふう、ごちそうさまっ。
えっと、料理作れる人が要るんだっけ?
オレ、ちょっと探してくる。
[言うなり、忙しなくキッチンの戸を開く。
白を翻し、薄闇の中へと*姿を消した*]
……っと。
[時折立ち止まり、扉の向こうを確かめつつ進んでいた歩みがふと止まる。
進む先に見えたのは、薄暗い空間を照らす灯火]
灯りを持ってるって事は……『番人』……じゃあ、ないな。
[微かに聞こえた声は、無表情な男のそれとはかけ離れたもの。
ともあれ、止めた歩みを再び進め、そちらへと]
ああ。
そういえば私がお借りした部屋にもありませんでした。
普通はあるものなのですか。
[疑問を浮かべながらも頷いて朱色を見る]
よろしければ今は私が直しましょうか?
はい、探し物のお手伝いも。
てめえは植物かよ。
[ラッセルへの突っ込みはそれだけ。出て行く姿を見送らずもう一切れ切り取って炙る。頼まれでもしない限り分けてやる気は*ない*]
[灯に映し出され、近付いて来る色と、呟く声。
それには見覚えもあり、聞き覚えもありました。]
確か…
ハーヴェイ、でしたか?
[記憶を頼りに、声を掛けます。]
ああ、お前か。
[灯火に浮かび上がる青に、相手が誰かを認識して呟く]
そう、ハーヴェイ。
……何してるんだ、こんなとこで?
[問いに答え、逆に、問いを投げ返した]
あたたかく、動くものが好き。
それなのに描く事はしないのでしょうか。
[独白に似た呟きが落ちる]
[ぱたり]
[スケッチブックを閉じ、胸の前で抱えた]
返しに行かねばなりませんね。
[リィン]
[鈴を鳴らして、広間を出、声のする方角へと歩み出す]
あるべきものだと私は思うのだけれど。
ここではあるべきものじゃ無いのかも知れないわね。
[腕を組んで憤慨するような物言い。直そうか、と言う言葉に紅紫が瞬く]
え?
もしかして曲がってる?
直したつもりなのにー!
悪いけど頼めるかしら。
身嗜みはきちんとしておかないと、怒られ──。
[怒られる。誰に? つい口をついて出た自分の言葉に疑問が浮かぶ。組んでいた腕は解かれ、右手が側頭部へと当てられた。逡巡の後ふるりと軽く頭を振ってから]
それじゃあ、あの部屋見てみましょ。
[何事も無かったかの様な振る舞いで、廊下の先にある部屋を指差した]
[何処に居るかの当てはなく、足が向くのは男の声がする方へ]
[賑やかで、男の気配が多いのは、意外にも台所]
[その入口に立ち、女は首を傾げた]
随分と、皆さまお揃いの様ですね。
けれど…いいえ。いらっしゃいませんでしたか。
[探し人と擦れ違ったことを、女は知らない]
…良かった。
少し、散策です。
内部を知っておこうと思って。
[相手から肯定を得られ、安堵の息を吐いてから、問いに答えました。
それから、首を小さく傾げて見せます。]
貴方は、どちらへ?
そうですね。
ここでは何が普通なのか分かりません。
何をもって普通と呼べば良いのかも分かりませんが。
[答えたところで慌てる相手にきょとりと。
腕が解かれ、躊躇うように頭へと伸びるのを見ながら距離を縮め]
気になるのでしたら先に直しておきましょう。
[背後に回って手を伸ばした。
スルリと解けるリボンを慣れたように手早く結ぶ]
はい、それではあちらの部屋から。
[指差された部屋に視線を向けて、コクリと頷いた]
中を、か。
見せてもらった見取り図によると、わりと広いらしいな、ここ。
[返る答えに、ぐるりと周囲を見回し]
俺は、ちょっとした探し物を、な。
[言いながら、条件反射か左腕に滲む紅を抑えていた]
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