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[画面の中、勝敗は決した。
どうやら自分の出番は無いらしい]
こうなりましたか。
『遊戯』は着実に終焉へ向かっていますね。
[その言葉は独り言に近く。
しかし小さなものでもない]
お待たせ致しました、004様。
私の用事は終わりましたので、ここはお使いになって構いませんよ。
[視線を少女へ転じると、尚もにこやかな笑みと声を向け、モニターの前から一歩下がった。
小さく漏れた疑問が聞こえれば]
…ここはそう言う場所ですから。
いつまでも仲良しで居られる場所ではないのです。
………さよか。
んー、話?
[その時、ピピッと懐の端末が電子音を響かせる。
それをチラリと見ると]
ああ、ちょうど今出来たわ。
いつもあんさんのそばにおった子。えっと、イレーネやったっけ。
今さっき、負けおったで。
[にこりと笑いながら、爆弾発言。]
<真実は虚実に戻りて朱は空気に溶ける>
[滑る感覚は血にも似ている。
色は、無かったけれど。
まだ固まりきらない液体が、癒しを手伝うなどは知らず。]
世界は、広い?
でも、空だって、「ここ」の一部だよ。
他には、存在しない、もの。
[浮かぶ表情は勝者のものなどではなく、まるで迷い子。
牙の刺さっていた腕に、握っていた小刀が滑り落ちる。地にぶつかると同時に、音色が、鳴り止んだ。]
イレーネは、知らないだけだよ。
知らないから、夢を見られる。
[いつかの繰り返しのようだった。
否定はすれど、わかっている。想う事は、強い。]
それすらも、思い込めばいい、って言う?
[纏わりつく体液が、
自分から流れ出た血液が、
虚実に呼び起こされた熱が、
徐々に冷えていく感覚が、気持ち悪い。]
しゅうえん……………。
[聞きなれない難しい言葉にきょとんとしていれば
オトフリートは自分の用事は済んだようで
少女はあわててぺこりとお辞儀。]
[頭の位置を戻す頃には、呟きの答えをもらい。
その答に悲しそうに相手を見つめる]
[返事がどうであれ、問答を続ける気にはなれないから、ピアノの所へ戻るつもりだった。
その矢先に、告げられた言葉に]
……え……?
[蒼が、揺らいだ。
恐らく、ここに来て初めて見せる──微かな、動揺]
イレーネ……が?
[誰に、と問うより先に、身体が動いていた。
少女を置いてきた、ピアノのある場所へと、走る]
[戻り始めた視界はまだ狭く、気を抜けばふつりと飛びそうになる]
貴女は、でも――空の全てを知ら、ない、よ。
だって、飛ぼうと、しない――んだもん。
「ここ」の空は、空の、一部。
貴女の見てる、空は――空の中の、小指の先くらい、だよ、きっと。
[薄っすらと開いた瞳の色。
それはずっと憧れ探し続けた空を閉じ込めた――色]
夢は、幸せのために――見る、の。
夢を見るのは、大変、だ、よ?
貴女もきっと――知ってる、よ。
[ほんのりと、笑って]
[ピアノのあった場所へと駆け戻る。
でも、そこに姿はなくて]
ちょ、冗談……。
イレーネ、どこ行った!
[名を呼びつつ、もう一度周囲を見回して。
目に付いたのは、さっき、それ越しに雪を眺めた窓]
[少女が見せる悲しげな表情。
それを見て浮かべるのは苦笑]
出会ったのがここで無いのならば、ずっと仲良く居られたかもしれませんけれどね。
この『遊技場』は戦うための場。
己の力を示す場。
自分の未来を掴むために、他人を蹴落とさなければいけないのですよ。
[そこまで言うと部屋の出入り口へと向かい、少女へと向き直る]
それでは私はこれにて。
どうぞごゆっくり。
[丁寧なお辞儀をすると、そのまま部屋から出て行った]
[思い込めば良いと言うのかと問われれば、微かに首を縦に振る]
思い込む事、は――信じる、事、だから。
ね、知ってる――?
どんなに寒くても――寂しくても――。
私が私を暖めたら、私が私を愛したら。
寒く、ないし――幸せで、いられる、んだよ――。
[だからいつだって、私は幸せを忘れないよ、と。
ただ一つ、伝えておきたくて]
[色々なものを諦めていた。
諦めて、求めるのを止めてしまっていた。
だから、ブリジットの空は、とても狭かった。
傷よりも、何処か、知らない場所が痛い。
何かが、壊れそうだ。
春の緑は、すっかり冷え切ってしまっている。]
――なん、で、笑えるの……!
[自らの表情を隠すように、顔を覆う。
涙は流れないけれど。
頽れたイレーネに近寄れず、逆に、後ずさった。]
[無残に散り解けた翼の残骸が、その姿を追うようにはたりと動く。
しかし、届くはずもない。
失われた質量は、体から搾り出さなければ戻らない]
――…‥?
わかん、ない――。
強いて、言うなら――つらそうだか、ら。
さて、と。
[モニタールームを出た廊下。
誰も居ないことを確認すると、ぱきりと言う音と共に影を剥ぐ]
それじゃあ欠片の回収でもして来ようかしら。
ついでにあの二人にも会っておこうかしらねぇ。
[剥がれた影の中から紅が現れる。
クスリと笑みを漏らすと、足元の影を巻き上げ己を包み込み、そのまま影の中へと沈んでいく]
[窓辺に駆け寄ったのは、多分、直感。
その向こう、広がる光景に]
……。
[刹那、言葉は失せて。
冷静な一部分は、『起きた事』を理解している。
それから、多分、容認も。
けれど]
……イレーネっ!
[叫んでいた。
朱の紋様が。
皆を護ると、哀しませぬと。
そんな誓いと共に刻まれた朱の花が、痛くて。
叫ばずには、いられなかった]
[イレーネの敗北を告げたときのアーベルの動揺。そして、詳細を聞かないままに走り去っていくのを、黙って見送ったが]
……くふ。
ああ、美味しい。やっぱり人の絶望はいつ味おうても甘美やわぁ。
[陶然とそう呟いた後、その場をあとにする。残されたティルには*見向きもせず*。]
そ、っか――知らない、んだ。
いつか、寒い時――とか。
寂しい、時に、試してみたら――良いんだ、よ。
[自分が大切なら、自分に大切にされてる自分は幸せだから。
誰もいなかったから、それが当たり前だと思ったりもした。
人に撫でられる事を知ってからは、そうでもなくなったけど。
でも、人に撫でてもらえるようになってからも、
少女は自分が大好きだったから]
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