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[動体視力を頼みに、紙一重を狙い放った一撃。だけど水の柔軟な動きには敵わなくて。
かわし過ぎた正面からの水蛇、その腹が曲がり進路を食い止める]
くっ!
[後もう少し、と言う所で剣先は届かず、僅かにその豊かな胸元を掠めるように過ぎただけ。
急ぎ後ろに引くも斜め後ろから迫る両側の蛇、そして上からの大きな顎は浮遊で逃げるコトすら許さずに]
――――……!!!
[声は水に飲み込まれ、くぐもるように響き。
やがて水の蛇が引いた後、口から水零し気を失った姿が*残った*]
[その場にいたメンバーには、ちゃんとマリーが勝利し、リカが負けるという真実が見えていただろう。
・・・・・
久鷹以外は
見えたのは、リカの放った水の蛇によって飲み込まれ、地面の上にくたりと倒れているマリーの姿]
……え?
[久鷹の膝が崩れた。
目の前に起きた現実が信じられない]
<なら信じなければいい>
[駆け寄りたいが、足がまるで石になったように動かない]
<これが天界のやり方だよ。二対一でマリー一人を徹底的に甚振ったんだ>
[マリーが動かない。そう。動かないんだ。動かない。うごかないウゴカナイ動かないうごかないうごかないウゴカない動カナイウゴカナ――]
ああああああああアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!
[激しい絶叫が久鷹ののどから迸った。
其れは全てに絶望し、悲嘆し、悲しみに塗れた叫び。永
・・
遠に続くかと思われた叫びは、ソレによって唐突に打ち切られた]
まさか勝つとは思わなかったからな。たっく、態々コイツの視野全てに幻見せなくちゃなんねぇなんざ、面倒くせぇ手間取らせやがって。
[ソレは立ち上がると、髪をオールバックに寝かしつけて、九尾よりも邪悪に笑った]
マリー、手前は役立たず、だぜ。
[倒れた璃佳に近付こうと歩を進めた時だった。マリーが勝ったはずなのに悲痛な叫びを発する久鷹]
…おい、久鷹!?
[どうした、と声をかけようとして、言葉が切れる。先程の気配が、再び現れた]
…っ!
貴様、やはり久鷹じゃねぇな!!
[邪悪な笑みを浮かべる相手に叫び、一度九尾を小脇に抱えて、久鷹の横からマリーや啓子、倒れる璃佳を庇う位置へと滑り込む]
[殺到する蛇をかわし、こちらへ迫ってくるリカ。それに一瞬怯むが]
……くっ!!
[正面の蛇の腹を間に滑り込ませ、進路を塞ぐ。しかしそれでも放たれた一撃は、辛うじて紙一重で避けることが出来、胸元を通り過ぎる。切り裂かれるキャミ。
後ろに引き、体勢を立て直そうとするリカに胸元を押さえつつ、冷や汗を流したまま引き攣った笑みを浮かべると]
……そうは──いかないヨッ!!
[両側から迫っていた2匹の蛇が後詰めで背後から迫り、さらに上の逃げ口は上空の蛇が閉鎖。
結果、]
どしゃっ!!
[水の蛇に呑み込まれ、溺れた事で気を失ったリカが地面に転がる。
眼鏡は蛇に呑み込まれた時に、どこかへ飛んでったのか、びしょ濡れでぐったりしつつも可愛い素顔を晒す。]
はあはあ……水も滴るイイ女になったジャナイ。
[肩で息しつつ、皮肉を言ってみる。]
[リカの傍らへと駆け寄って、脈を取る。
大丈夫、気を失っているだけだ。打ち所が悪かったりもしていない]
はいここまで。気が済んだ、マリィ?
でもこれ以上は…!?
[喉を押さえながらできるだけ静かな声でそういい掛けた時。突然に上がったのはヒサタカの悲鳴。そして]
な、なにがっ!?
[思わず叫びかけ、喉に走った痛みに慌てて口を閉じる。
滑り込んできたサキに少しだけ安堵の表情を見せながら、リカをどうにかこうにか抱えようと試みる]
…………え?
[突如聞こえた声に、呆然とそちらを向く。
そこにいたのは、ヒサタカなようでヒサタカでない存在。
だってヒサタカがあんな髪型をするわけがなく。
だってヒサタカがあんな喋り方するわけがなく。
だってヒサタカがあんな邪悪に笑うわけがなく。
でも、その肉体は確かにヒサタカのもので。
だから、]
……アナタ、誰?
[その呟きは、非常に弱々しいものだった。]
[ぐるりと全体を見回した。
いるのは女ばかり五人。いや、四人と一匹か]
まぁ本当は九尾の力を回復するために全員魂を食ってしまいたいところだが、全員相手にして怪我でも負ったら骨折り損だ!
[そしてすっと両手を上げた。それはまるでオーケストラを指揮する指揮者のように華麗で、優雅に両手を振り下ろした。
瞬間、五人の周りに人影が現れた。
その姿に九尾は驚愕した]
「マリー、キョウヤ、サキ、ケイコ。それにヒサタカ……」
[そう。
本人がいるにも関わらず、今は別の場所にて終わるのを待っている筈なのに、それぞれを星型に囲むように、幻術で複製されたヒサタカ達が立ちふさがった]
ふっざけんなよ…!
[突如として現れた自分や恭也達の複製。それを見て舌打ちをする]
(実質今動けるのはアタシくらいじゃねぇか。
マリーはショックで動けないだろうし、
啓子も昨日のダメージが残ってるはず。
どうやって切り抜けたもんか…!)
[サキが考えている事は手に取るようにわかる。人間は――特に戦闘経験がない人間を守ろうと動く場合、えてして強者は身を犠牲にする]
ハハハハハハ! 何も知らない! 何も見ない! 何も考えない! 所詮はそんな屑の集まり! そんな天界の、しかも昨今に決められたような石ころ共が、何を考えても無駄なんだ!
[そう高笑いし、サキをすっと指さした]
考えているだろう? 実質動けるのは私だけ。ケイコは昨日タマキと戦い力が不足気味。リカはマリーに破れ、マリーは茫然自失。どうやって切り抜ければいいのか? なんて無駄な事をだ!
[片手で顔を多い、口元から見える八重歯を隠さず含み笑いを浮かべた]
だが、一応選択肢は与えてやるぜ。今死ぬか、それとも俺に服従するか。どっちがいい?
[言葉に合わせるように、複製が五人との間合いを詰めていく]
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