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─二階・自室─
[朝から色々と騒動があったようだが、それでも中々目を覚まさなかったのは、さて、何故か。
諸々の疲れや、例によっての夢見の悪さなど、色々とある……のかも知れないが。
多分、一番の理由は、『ベッドで寝るのが久しぶりだった』からではなかろうか。
……何せずっと、従魔にベッドを使わせてソファで寝てたわけで。
昨夜は、獣態のままだったから、そのまま一緒に寝ていたというオチがつく。
……周りに知られたら、怒られる事請け合い]
[目を覚ましたのは、頬に触れる感触のため。
てちてちと、碧の獣が頬を叩く、その感触に、意識は眠りから立ち返る]
……ん……セレス?
[どうした? と問いつつ、ぽふりと頭を撫でて]
[でも半分アルが食べて、半分残ってるって事は、]
…オレも、食べて良いのかなぁ?
[いつもは「残して」って言わないと…、――…言っても。
誰がやるか、ってリンゴは全部食べられちゃうんだけど。
今回は、何故かちゃんと残ってた。珍しい。明日雪が降りそう。]
いただきます。
[へらりと笑いながら、手を合わせて一口。
ゴスゴスしてて食べにくいけど、…うん。やっぱり美味しい。
贅沢言うならもうちょっと早く食べたかったけど、
でも美味しいからいいか]
―果樹園―
[属性には反するはずの翠樹の精霊力の満ちる果樹園を、ゆっくりと歩く]
この世に絶対は存在しない、か…
[昨夜、人の子の少女の言った言葉を口にして、地面に視線を落とす]
[彼女は、裁定者たる雷撃の精の問いに、笑みを浮かべた]
[それは、覚悟を決めた者の笑み]
[身に覚えの無い疑いを被った人間の表情では有り得ない]
[どこか不安げな従魔を、ぽふり、宥めるように撫でて]
……大丈夫。
さて、取りあえず……やれる事をやっておかないと、ね。
[言いつつ、身体を起こして。
乱れた長い髪を整えたなら、白と碧を肩に乗せ、部屋を出る]
さて……部屋に、いるかな?
[軽い口調で呟きつつ、目指すのは精神の同族の部屋]
─夜明け頃・屋上─
[あのままここで一夜を過ごしたのだろう。屋上に寝転がり空を見上げている。傍らには多少干からびたリンゴの芯]
[昨日ミリィに、皆に告げたことは真実。精神の少年から得た情報に偽りは無い。それはあの時ミリィが見せた僅かな表情の変化が物語っている。そして、リディがミリィを庇ったことも。どこか、リディの言動に違和感は感じていた。誰も見たことの無かったドロイドの形状を口走ったこともそうだ。いくらSF小説か何かで読んだとしても、その形状は様々ある。あの時のリディの口ぶりは、まるで見てきたかのようで]
[うだうだ考えているところで精神の少年が屋上へとやってきた。アル探しのためだろう。頼む様子に快く了解の意図を伝え、多彩に姿を変えるという妖精を捜しに出た]
[結果は収穫なし。どこに居るかさっぱり分からなかった。屋敷に戻り、少年と別れて。彼に背を向けた後に大きく息を吐いた。捜すのに疲れたのもあるが、大半は昨日のことが頭を占めているからであろう]
[少年と別れた後、足は自然と屋上へと向いていた]
―屋敷二階・廊下―
[ぽとり]
ん?
……どうしたの? !
[くう]
……寝てるし。
もー。
疲れてるの?
[屈む。床の上でへたばって……あまり健康そうには見えないが、寝息だけは健やかな猫の背を撫でた]
[猫を抱え上げ、廊下を見回した]
ライデンは……部屋、じゃないか。
[階下へ]
陽光の?ヘルガさんかな?
[近付きすぎないように、足を止め、僅かに屈み込んで目を細める。最初にその種を植えた天聖の気配も、僅かに感じられた]
麒麟殿かあ…
[翠樹は誕生の力、陽光は遍く命の成長を助け、生命は癒し、天聖は見守る]
[かしり、とリンゴを齧っている最中に、ドアがなった。
きょとんと視線を向けると、続いて響く声に
あぁオトフリートだな、って判る。…どうしたんだろ?]
うん、いるよ。
ちょっと待って、今開けるー。
[座っていた寝台から飛び降りて、
リンゴを握ったまま駆け寄ると、扉を開けた]
─現在・やはり屋上─
[屋上に寝転がる。さぁっと風が吹き抜けた。今まで以上に風の声が聞こえる]
……煩ぇ。
[これも対が消えた所以か。コントロールが上手く出来ない。聞こうとしなくても、風が運んでくる。それを押し止めるために瞳を閉じ、コントロールするべく集中した]
や、おられましたか。
[開いた扉の向こうに立つ姿に、にこりと笑って]
ちょっと、話があるんだけど……大丈夫かな?
[問いかける様子は、いつもと変わらず。
それでも、異眸に宿る色彩の真剣さは容易に伺えて]
─果樹園─
[唯一一名に限って、探し人を見付けることは容易い。
木々の間に向かって呼びかけた]
ライデンさーん、おとどけものですよー。
さっき戻ってきたばかりだけどね。
[廊下に立つ相手に、へらりと笑う。
扉の向こう側の相手は予想通りだったから、特段驚く事も無く
続く言葉に、僅かに蒼を瞬いて]
――ん、どうぞ。
[相手の瞳に宿る色に気付いたか、
顔を出すように開けていた扉を、招き入れるように押し開ける。
廊下で話す事でもないのは、容易に理解できた]
生モノです。
猫さん。
[エーリッヒを地面に降ろして撫でた]
ライデンに会いたがってた。
寝ちゃったみたいだけど、あんまり具合が良くないのかな。
元気で居て貰わないと困るんだけどね。
[撫でながら、僅かずつ己の力を移す]
―屋上・天球儀の部屋―
[部屋で休んでも何だか落ち着かなかった。
だから見張りと称してこっそり玄関前に行ったりもして。
朝、一度部屋に戻りながら更に上へと向かった。
微妙なタイミングで誰ともすれ違わなかったようで。
小さな部屋の中へと入り、静かに目を閉じた]
―果樹園―
僕に?何だろうな。
[特に猫さんに探される理由に思い当たらず、首を傾げる。尋ねようにも本猫(ほんにん)寝てるし]
そうだ、お嬢。ゆうべのことだけど。
[猫に生命の力を分け与える少女に、目を細めて問いかける]
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