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[広場の端まで来ると、人々の姿を不思議そうに見て]
どうして、みんな、嫌うんだろう、ね?
……気持ちいい、のに
[翼を拡げてふわり、高台へ向かって飛ぶ。その背中にはうっすらと一点の染み]
[仕種も声も、いつもと変わらない。
それだけ見ていれば、昨夜捕えたものは自身の錯覚か、とすら思える。
否、それは思いたいが故の惑いであると、自覚はあり]
ちょいと、人探しをしててね。
ま、折りよく見つかったんで、手間は省けたけどさ。
[軽い口調で問いに返し、それから]
……ねぇ。
なんで?
[投げかけたのは、酷く唐突な問いかけ]
[唐突な問いには、目をきょとりと開いてぱちぱちと瞬き。
何の事か、等と口は動いたが声は発せられなかった。
変わりに、眉尻を下げて親しい人にしか見せない情けない笑顔を作る。]
…疲れた、んだ。
[ぽつり、言った。]
……疲れた?
疲れたって、何に……?
[ぽつり、と零された言葉は、思いもよらず。
戸惑いを込めて、ゆるく瞬く。
肩のラウルもくぅ? と鳴いて首を傾げた]
[ 本の最後のページを読み終わる。]
………幼馴染…ですか…。
興味深いですね…。
[ 手元の本の主人公は幼馴染の女の子。
ありきたりな恋愛小説。
どこにでもあるファンタジー。]
さて…こちらはどうなるのやら。
御力を見せて頂きたいものです。
[ 大切だったものを、壊していくのを見るのはいい。]
―――――――…。
[ 残念なのは、"それ"がないから自分では見れないことか。]
[ラウルの声には、更に眉を下げて口は笑み。
ふる、と首を振った。]
…全部に、だ。
[ふと肌寒くなり、薄金の翼で自身の体を包んだ。]
全部……? 全部って何さ。
まさか、生きる事から何から何まで全部とか、そんな……。
[右の手がぎゅ、と握られ、力がこもる]
……そんな、甘ったるい事、言うんじゃないだろうね……?
[低く問いつつ、翼に包まる様子に微か眉をひそめ]
甘ったる、い…?
…お前に、何が…分かるってんだ…っ!
[ゆら、と立ち上がり。
アヤメの首元に、その手をゆっくりと伸ばす。
その目は仄暗く、揺らめく。]
[高台の上に降り立つ。穏やかな風を受け、空を見上げて遠くを見る。しばし瞳を閉じ、心に残るもやもやしたものを吹き掃うように、空へ。島の沿岸に沿い、白い海を眼下に飛ぶ。羽ばたきを止め、滑空。ふわり羽ばたき、急上昇、急降下]
あはは、飛ぶのって、楽しい……
……堕天尸も、巫女も、長老も、関係ない……ね……
護りの陣……って、言ったっけ。あれがなければ、どこへだって、行ける……のに
[拡がる海の向こうを見つめ。目を閉じ、すうっと息を大きく吸い込むと、風の匂いに胸が洗われた]
[やや手持ち無沙汰な時間の中、施療院の仕事を、のんびりとこなす。
その途中、足元に擦り寄ってきた、小さな金茶色の翼豹を抱き上げると]
……ふぁあ。
[小さな欠伸をひとつ]
……わかるわきゃないじゃないのさ!
アンタときたら、人の世話はうるっさいくらい焼きたがるクセに、自分の事となると閉じこもって話しゃしない!
[暗く揺らめく目。
首に手が伸びるのは気づいていても、臆する事無く、それを見返して]
いっつも、自分は大丈夫って、そればっかりで、カッコつけて!
挙句、それに押し潰されてりゃあ、世話ぁないね!
[投げかけるのは勝気な言葉。
それでも、瞳には微かに哀しげな色彩]
[返事はこない。聞いてもいないのだろう
それでも言う。]
なんで…清めるのかな。
楽しそうだったよ。なのになんでかな…
[そういって、そっと手は首へと添えて。
だが力をこめることなく離して笑う]
でも、ここから出たいからいいや。あはは
[その場にへたり込んでいたのは、いつまでだったか。
記憶は朧げだったが、
とにかく、湖を渡り森を歩んで、開けた道へと出た。
広がる蒼穹は、時の移ろいとともに、色を変えてゆく。
陽が闇におちるまで、金糸雀色の眼差しはずっと注がれた]
[そして降りて、水鏡の前に戻る。
アヤメとラスの映像が写されているか
山。川。森。島の端。誰かがいる光景をみたいとかではなく赴くままに映像を移したが
あっさりと水鏡の主導権を奪われた]
五月蝿い…五月蝿い五月蝿い…っ!!
そんな事、あんたやジョエルに言われたく無いね…っ
[暗い目には何も感情は映らず、ゆらとその背から黒い波が泡立つように立ち上る。
片手はアヤメの細い首にかかり、もう片手は手首を取ろうと伸びる。
背の薄金の翼は黒との斑に裾から染まっていき、みるみる闇色へと変わる。]
[ 淡く光る金色の羽根を大きく広げ、空へ上がる。]
さて、何から手をつけましょう。
[ 目を閉じて気配を探ってみる。
そして眉を寄せる。]
これは……一体何でしょうか…?
[ 高台の辺り、動く者が。
知っている気配だからこそ、の違和感。]
……くっ。
[首にかかる手。それを避けなかったのは、半ばわざと。
手首を捕えようとする手は、舞い上がったラウルが牽制し、そちらの自由は確保する]
こんの……バカっ……。
[闇色に染まった翼。
重苦しい気配に、息苦しさと息苦しさが重なる]
人の……人の気も、知らないでっ!
[言ってない、との突っ込みは、多分素通りさせつつ。
片手は首にかかる手を掴みつつ、自由な手で試みるのは頬に向けた全力の平手打ち]
[時はゆっくり、確実に過ぎていく。傾いた太陽を眺め]
先生、遅いな。
……行くか。
[客足もとうに途絶えた施療院に、念のため、張り紙をすると、ラスの家へ向けて、露台から飛び立つ]
[ 高台の辺りに近付いていく。]
……オーフェン?
どうも、こんな所でどうしたのですか?
[ いつもと変わらない様子に見えるが。
先程感じた違和感は気のせいだろうか?]
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