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[暫しの間気を取られていたが、]
……。
[少女の言葉を聞いていなかったか]
[或いは歩くのは無理だと悟ったか]
ん。
[膝をついた少女の背に腕を回す]
[「だいじょうぶ」「つかれて、しまう」「おれも、いるから」
つたない程に真摯な声に、私は瞳を揺らして近づく彼を見つめる。
言われたとおり、無理をした私の身体と精神は悲鳴を上げていて。
言葉もなく、長い首を垂れる]
………ぁ
[項垂れた視界の中、青年の足が消え白の獣が現れる。
脚に擦り寄るそれから本能的に逃げようと脚が震え――なれど白き猫を傷付けたくなくて耐える]
……私は大丈夫、ゆえ…
[言葉と裏腹に崩れかけた脚に、私は獣の姿を解く。
人の身へと変じた肢体は、擦り寄る猫を抱き寄せるように蹲る]
< きずついているのでしょう
伸びてきた手に抵抗などせず、むしろ望んでそこにゆきます。
にゃあ、にゃあ。
なだめるように、おちつかせるように。
猫は、猫であることを感謝しました。だって、言葉にはなおせないのです。
せめてあたたかい体で、すこしでも ほっとして もらいたくて。
なんども、なきました。
おちついて、だいじょうぶだよ。
そう言うように、なきました。 >
あれ? あれれ?
[なかなか戻ってこない感覚に、小首を傾げるが、突如背に腕を回され、抱っこされる。]
は、はわわ……
[いきなりのことで狼狽。顔はさらに赤く。]
[小柄な少女の身体]
[様子を気に留めず片腕で支えて]
[変わる一人と一匹を見つめていたが]
行く?
屋敷、……休める、場所。
在るから。
[赤い果実は地に落とされたままに]
[問いと共に誘うように手を差し伸べ]
[じゃら、][千切れた鎖が音を立てた]
[望みのまま手の内へと滑り込む白に、私は瞳を閉じ温もりに縋る。
人の姿など見たくはない。見ていたら、落ち着けはしない]
[何度も何度も鳴く声が、柔らかな温もりが、緩やかに私を癒す。
少しづつ鼓動が落ち着いて、私は震えの残る指先を離さぬまま、瞳を開ける。
淡い菫色の瞳が、白き猫を見下ろす青年を映して揺れる。
白金の蓬髪に絡んだままの葉が、鬣であった事の名残を示した]
[彼女がアーベルに抱っこされる形で真っ赤になっているその懐からモゾモゾと顔を出したのは彼女がシノと名づけた魔獣の子供。
とん…と、彼女の肩からアーベルの肩に乗り移ると、ぺろりとアーベルの頬を一舐めする。]
休める、場所…
[誘いの言葉と共に差し出される、忌々しい響き。
目の前に差し出された――その手首を、足首を戒める枷に気付けば、声なき悲鳴が上がる]
――ぃやーっ!
[腕の中の存在も何もかも脳裏から消える。
私は鎖から、忌むべき過去から逃げようと身を翻し――身体が横へと大きく揺れる。地面へと倒れゆく身を支える事無く、震える片手が衣の前を握り締め…私は*意識を手放した*]
わ、
[肩にかかる僅かな重み]
[頬に濡れた柔らかな感触]
……、…増えた。
[新たな存在に気を取られたのも少しの事]
[翻る衣、頽れて地に伏す女性の身体]
< だんだんと落ち着いてゆく、それを肌でかんじました。
猫はそれでも、そっとないて、だいじょうぶ、と伝えます。
だけれどその音……そして >
――――ナターリェ!
< 悲鳴。かしぐ体。
その腕から瞬時にぬけだし、猫は姿をへんじます。
かしぐ体を、腕でうけとめようと―― >
< 気をうしなう時にまで、気をつかわなくて 良いのに。
猫の手は、わずかにおそく、倒れたその体を、ゆっくりと起こしました。 >
……
いたい?
< 返事なんて、あるわけもありません。
それから、かれの手を、くさりを見ました。 >
だいじょうぶ、だよ
[きょとり、]
[緩やかに瞬いて]
[二人の様子を黙して眺め]
[向けられた視線の先、]
[自分の手へと目を落とす]
[けれど何が原因か、知る由もなく]
運べる?
[近づく事はなく少女を抱え直して]
[茂る草木と土とがクッションになったようで]
[怪我は無いと判断しての問いかけ]
< かれの言葉に、猫はこくり、うなずきました。 >
はこべる、よ
……休める、ところ、どこ?
< 力の抜けた体を、抱きあげます。
だいじょうぶ、と、猫はもういちど、うなずきました。
向かう先へ、*ついてゆきます* >
はわ、大丈夫……ですか?
[突如倒れるナターリェと呼ばれた女性と、それを抱き起こすエィリと呼ばれていた青年に心配そうに声をかける。
そして、アーベルに抱え直されるのもされるがまま。実際のところ、すでに三半規管の麻痺は収まり、歩くこともできるはずなのだが、*何故かそうする気にはなれなかった。*]
ん、
[首肯]
……行こう。
[踵を返し森を抜けていく]
[その足取りに迷いはなく]
[自然の道から無機質な路へ]
[澄み渡る青空の下を]
[広がる緑の原を進んで]
[言葉少なに屋敷まで辿り着く]
[四人を出迎えたのは機竜の従魔]
[簡潔な説明でも事情は把握したか、]
[気を失った者を空き部屋へと導く。]
……ん。
それじゃ。
[少女を椅子に座らせると]
[ふらりと広間を*出て行った。*]
探偵 ハインリヒ が参加しました。
─人間界・穏やかな風が吹く草原─
[腕を頭の上に組み、芝生へと寝転がる。そこはちょっとした高台になっていて、起き上がれば街が一望出来るようにもなっている。しかしそんなものには興味は無く、ただただその穏やかな風を身に受け、眠るでもなく瞳を閉じている]
「……やーっぱここに居やがったか、この風来坊」
[光を浴びていた瞼に影が差す。聞きなれた声。ああまたか、と心の中で一人ごち。陽を遮られた双眸をゆっくりと開いた]
俺を探すのが巧くなってきたなぁ、ディーデ。
そろそろ一人立ちの時期か?
[見下ろす男に向かってへらりとした笑みを向ける。ディーデと呼ばれた男はその言葉に呆れたような表情になり、見下ろす状態から身体を起こした。光が妨げられていた影がなくなり、開いた瞳に鋭い光が差し込む。眩しげに目が細められた]
「ばーか、俺が居なくなったら誰が依頼のやり取りすんだよ。
そもそもお前が居そうな場所なんざ、限られてるじゃねぇか」
はは、違いねぇ。
[一本取られた、とでも言うように笑うと、ディーデはやはり呆れた表情を浮かべている]
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