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――ナサニエルの部屋で――
[案内されるまま、少女もルーサーの後に続き足を踏み入れる。
ベッドに横たわる美しい女性の姿が目に入り、少女は静かに目を閉じ、自らは捨ててしまった神に祈りを捧げた――]
せめて彼女だけは――安らかに…
[『眠っているよう――』
その言葉と共に毛布は、剥ぎ取られる。
途端に鼻を衝く異臭と――機能を失った内蔵の欠片が、無造作に体の中に納まっていた。]
――なんて…酷いことを…。
[薄紅色の唇は、ただその一言だけを漏らす――
それ以上言葉を紡がなかったのは、近しい人を失った者に掛ける言葉なんて無いことを、少女自身がよく知って居るから……]
……ナサニエルさん。
これは推測に過ぎないのですが。
犯行の動機に『ローズマリーさんの職業』が、関係しているかもしれません。
もしそうならば、『必ず食われなければならない内臓』が存在すると思うのです。
[銃をしまい込み、猟奇的な事を淡々と口にする。]
[銃を向けられ、其れが正確に額を狙っていると知り手を上げて]
聞いてたんですか?
もちろん冗談ですよ…そんな事をしても彼女は喜ばない。
彼女のもとに行くには早いでしょう?
仇を、討たないと。
でも、俺が人狼かも、とは思わないんですか、貴方は?
……ああ、すみません。
昨日、ローズさんから色々聞いたのですよ。
彼女の職業について、最初に誰を占ったのか、次に占うつもりだったのは誰か、を。
あれが最後の会話になるとは思わなかったのですが、ね。
……仕方無いだろう。
誰にだって、抱え込んでいるものはあるからな。
[ 謝罪の言葉に物珍しそうに――半ばからかうように――瞬けば、態とらしく肩を竦めて然う返す。視線が逸らされ何処か遠くへと向けられるも其れも一瞬の事。]
取り敢えず俺は、ルーサー神父に話を聞いて来るから。
[ 軽く埃を払って立ち上がれば、開かれた儘の扉の外へと向かおうと。]
……ああ。
[破顔する。]
私がローズさんに言った事と全く同じですね。
それはありません。
ローズさんは、真っ先に貴方を占った。
『信じたい』と思った、貴方を。
……そのうえでなおも一緒にいるのです。答えは明白でしょう?
[くすくす笑う。]
[からかいを帯びた仕種にやや、むぅ、とするものの、一瞬そらされた視線に戸惑い。
でも、その理由は何となく聞けずに]
あ……うん。
それがいいね。
[話を聞いてくる、という言葉に頷いて。その背を見送りつつ]
……ありがと。
[消え入りそうな声で、小さく、ぽつりと呟いて]
[ローズの仕事…それを思い出し少し目を伏せる。
自分はそれを気にしなかったけれど]
『喰わなければいけない内臓』……?
[そう聞いて、考える。
女性特有のもの……]
…子宮、ですか?
俺、そういう難しい事は知らないけど…
[それは果たしてどうだったかまでは思い出せず]
……そう。
おそらくはそれを隠す為に、他の内臓も食い散らかしたのでしょう。
…………だとすれば。
『その職業』に何か因縁のある人物か、コンプレックスのある人物。
そういった犯人像が見えてくる。
と、思うのです。
まあ、ローズさんが他に何処かで恨みを買っていると言うのなら話は変わりますが。
……おっと、殴らないで下さいよ。お年寄りなんですから。
[肩を竦めて。]
…占った?俺を?
それじゃ、ローズが……俺を、信じるために?
つまり、俺は人だと認めてもらえたと……?
貴方は、俺を殺さないと…?
[驚きと、そしてローズの思いに、声が震えて]
どーいたしまして。
[ 背を向けて答える声は素っ気無く、軽く手を振ってメイの部屋を後にする。
――其の後には神父への報告や昨夜の顛末を聞けば大分時間は掛かり、自室で休息を取っていれば、すっかりと夜の帳は下りていた。]
殴りませんよ…こう言う事です
[にやりと笑ってホールドアップ、すぐに手を下ろして]
其の職業に、ですか…でも俺には心当たりがないな…
貴方にはあるんですか、その…心当たりは?
ええ。
彼女は自らの命を賭してまで、貴方を信じようとした。
ただ、次に占う予定だったのがトビー君だった。
その理由は、結局分からないままなのです。
ナサニエルさんを占った理由と同じだったのか、それとも別の意図があったのか……。
[眉間に皺を寄せ、考え込む仕草。]
それを今必死で思い出しているのですよ。
この歳ですから、記憶力が著しく低くなっていてね。
……もし、私に何かあったら。
ウェンディをよろしくお願いします。
そして。私の情報を元に、事件の解明を。
[ナサニエルの両手を握る。意外に力が強い。]
−客室−
[――どれくらい気を失っていたのか。
鈍く痛む頭を抱え、よろりと身を起こせば、そこは馴染みつつある部屋のベットの上で。
ぼんやりと、生気が欠けた瞳で辺りを見回して。]
[ふと座っている寝台の微妙な振動に気付き]
[動き出す気配]
[見ると、少年が身を起こす所で。]
……気がついた?
[顔を覗き込む様に声を掛ける。]
トビーを?
[ルーサーが考え込むのを見、此方も考え込む]
トビーは怖がりだから、占って人だと証明できれば…そう思ったんじゃないかな…。
それにトビーは彼女を慕っていた。
信じたかったんじゃないかと、俺は思う。
[服の袖を掴んできたウェンディを見て。]
……ふふ。こんなに弱気じゃいけませんね。
天下の異端審問官とあろう者が。
しかし、私の言葉に不信感を感じている者は少なくないようです。
何せ、武器庫の鍵も一時的に誰かが持ち去ったようですからね。
おそらくは、武器を手に入れるために。
[ウェンディの頭を、わしわしと撫でる。]
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