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[聖なる獣の申し出に、う、と言葉を詰まらせた。昨日の今日、あの天敵と顔を合わせるのは正直辛い。殴られるかもしれないから]
あーうー……分かった。
[しかしそれを断るわけにも、と思い直し。殴られる覚悟をしつつ承諾の意を示す。子供に「行くか?」と声をかけた]
お前さんはどうするね。
もう少しここに居るかい?
[それを口にするより早く、口を開いたのは黒髪の子供であった。
雷の人が怪我して、猫がびりびりして、子供がぺしゃってして、猫と子供が消えちゃった。
そんな事を言って、また黒猫へと戻ってしまう。
飼い主の元に戻りたくない心境なのか、単に風の男が嫌いなんかはわかりはせず。
その気紛れに揺れる尻尾を、傍らの子はじっと見ていた]
[あ、スルーしやがった、と思いはしたものの。
告げられた言葉は、それをひとまず横に置かせて]
彼が、か。
……セレスも、彼には何か感じていたようだけれど……機鋼竜と関わりがあったというなら、納得も行くかな。
しかし、邪魔者は排除する……ね。
なら、そうしなかったのは、君をそれと認識しなかったから、というのもあるのかも知れないが。
[確かにちぐはぐ感はあるかな、と呟いて。
それから、ふと、昨夜の違和を思い出す]
……そういや、彼って。
軽口叩くとかそういうの。今まで、やった事、あったかな?
−北西部:針葉樹林−
[集う粒子][人の形を象る][青の青年]
[何故、其処に現れたかはわからない。]
……、
[座標を誤ったか]
[三対の一に惹かれたか]
[懐かしき気配を感じたか]
[深い色の中、淡い色彩がちらつく]
最初から、違和感はあったから、僕にとっては今更なんですが。
機鋼の精霊力を強く感じるのに、封じられたものが別にあるような…いや、別に、じゃないのか?…説明が難しいですけど。
[もどかしげに頭を掻いて、時空竜の軽口という言葉には、首を傾げた]
は?軽口?アーベルが、ですか?
軽口どころか、まともに喋るのもたまにしか聞いてませんが。
[黒髪の子供が告げた言葉は昨日風により齎された情報と一致していて。そう言えばこの子も傍に居たのか、と思い出す]
ユリアンが怪我…大丈夫なんかね。
[彼の者も自分のことを心配していたとは知らず。同じように無事だろうかと考える。その話を聞いても、特に驚く様子は見せないか]
[黒猫に戻った子供がこちらに背(尻尾?)を向けるのを見れば]
…やっぱ嫌われてるかな…。
[処置なし、というような様相で息を吐いた]
[さく、][ざく、]
[薄い白を][落ちる緑を][踏む]
[鎖の音は柔らかなものに飲まれて]
……、冷えるよ。
[人影に声を投げた。]
[彼の服装では説得力など無いけれど]
封じられたもの……。
[思い出すのは、先日の夜。
「……おさえ……られ?」と呟いた従魔の言葉と、そして何より]
違和感は、俺にもあったよ。
俺は昔……竜郷で、彼に良く似た魔と出会った。
その時は、機鋼の属はそれと感じなかったけれど。
でも、少なくとも、今のようにぼんやりとした感はなかったし……あの、枷もなかった。
[300年前の事を思い出しつつ、告げて]
……なかったよ、な。
ほんの一瞬、一言だけだったんだが……物凄く自然に、言われて驚いた。
何、か。変わり始めているのかもしれない。
[微妙に口ごもりつつも了承を示す男と、何やら不満そうな黒猫の様子に、私は首を傾げて一人と一匹を見やる。
飼い主と風の男の昨夜の一幕を知らぬ身には、疑問符が浮かぶのみで。男の呟きへの感想は口にせぬ事にした]
『…では、エィリ殿と…どなたかが、ここで?』
[黒猫は言葉がわかったか否か、にゃぁと一声鳴くだけで、またうろうろと探しに行こうか]
『ユリ…殿が怪我を?』
『今日お会いした時には、お元気そうでしたが』
[目の前の男も重症だったと知らず、私は雷精の様子を告げる。
行くかと言う問いには、素直に首を振った。
彼の仔を連れて長く居るには、消えし場所たる此処は危なかろうと]
――…、おや。
[色彩の無い世界に、ゆるりと立つ色を視界に捉えて。
空へと向けていた視線を、其方へと向ける。
青年の纏う白に染む朱に気付いたものの、
蒼を一度瞬くのみで、顔色を変える事も無く。]
其れは、お互い様だ。
尤も私は此れ位で倒れる程、柔な記憶も無いのでな。
心配は、無用だ。
[小さく、笑う。
掌に包んだ雪華の欠片を、ぱさりと落として]
[黒猫が歩き出すのを見れば小さく溜息をつきつつ頭を掻く]
ああ…リディが、消えた。
[聖獣の問いには端的に答えた。隠していても、いずれ分かることだし、隠すことでも無いと思ったが故に]
どうもリディとユリアンがここでやりあったらしい。
その時に怪我をしたようだが…その後のことは俺も知らない。
[その時は自分もそれどころでは無かったし。今日会った時は、と聞けば安堵の息を漏らす]
そか、じゃあ大丈夫なんかな。
ヴィンターにでも治療してもらえたのかね。
[自分がしてもらったように。そう考えながら聖獣首を振るのを見て。じゃあ行くか、と移動を促す。黒猫はついて来ないだろうと諦めたらしい]
寒いのは、正直好ましくは無いけれどね。
冷たさを感じるのは、然程嫌悪する事でも無い。
[さくりと、雪を鳴らして相手へと向き直る。
僅かに頭を傾げば、さらりと銀灰が頬へと掛かった。
投げられる問いに、蒼を細めて]
イレーネ。
”エテルノ・イレーネ”。
――君とは少し前に、会って居るのだけれど。
覚えては居ないだろうね。…アーベル。
[ノイの名前を告げたのも、此処だったかと。
ふと、思い出して小さく笑う。]
―屋敷前―
[時空竜の記憶を告げられ、「変わり始めているのかも」という言葉に蘇るのは、意識の底で聞いた言葉]
…冷たさも、温かさも、
痛みも、
悲しみも、怒りも、
何も、
わからない。
……わからなかった。
[ぽつりと声に出す]
お嬢が…リディが言ってました。「命の無い存在」に会ったと。
あれは機鋼竜のことだったのかもしれないけど、僕はアーベルのことを思い出した。
命は、心の対…セレスが機鋼竜の命なら、アーベルの命はどこに?
―廃棄エリア:第二集積所―
< まだ残っていた食料をおいて、猫はねこの形で、とことこと歩いていきました。
そこからとことことことこ、出て行って…… >
[時空竜に向けた問いは、問いではなく、ただの独り言だったかもしれない]
[その問いに答えられる者は、今はまだ居る筈もないと知っていたのだから]
冷たいの、嫌じゃない?
……でも、嫌っていたよ。
[まるで足りない言葉]
エテルノ・イレーネ。
…………、
“わからない”名前だ。
[眉が寄る]
[次いだ言葉]
[ぱちり、瞬いた。]
覚えて、いる……?
< そろそろ みー って音にも、あきてきました。
猫は、またか、と思いました。
でも猫は猫なので、よっつの足で走り回ります。せいかくには、にげまわります。
みーみーみーみー
あっちこっちから襲ってこられて。
にゃーん。 >
[風の男の言葉に本から得た知識を思い出す。
生命の、少女。雷精の…関係せし者]
『…そう。皆…怪我を…』
[次々と出る負傷者の名に、私の表情は曇る。
白梟が治療したかもとの言葉には、曖昧に頷いて促されるままに歩き出す]
< 猫、ファクトリーの近くを通りますけれど、そのとびらはまるでないもののように通りすぎました。
あれれ、ふしぎね。そういうところがあったら、いつも逃げ込むのに。
――青い布の下、わずか、流水のちからが、強まっているようでした。
誘拐されたり、いやなところにつれてかれたり、そういうことをされても許してしまうだろうから、そうならないように、接触だけはとめようってことらしいんですけど……
そういうのも、場合に応じて、できれば良いものですね。
ちゅどーん。
ファクトリーへと通じるそばの壁に、ばくげき。 >
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