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ナターリエさんっ!!
[床に倒れかけている状態で、ナターリエが闇の馬と対峙するのを見る]
だめだ、これ以上は…!
[震える左腕を上げる]
―――っ!?
[水の盾で防いだそれは、自分と同じ流水の属性を感じた。
それはエーリッヒから感じたものよりも更に直接的で]
『力ある剣』―――「聖魔剣」を持つものの仕業ですわねぃ!
やはり、お主か……オトフリート!
[推測は、完全に確信へと変わった]
――東殿・回廊の端―
[さっきまで何処で何をしていたのやら。
…ちょっと前までじつに大変な目にあっていたのだが。
まぁそんな気配は微塵も感じさせずに、唐突に現われたのは荒事事情の遥か後ろ。]
おおっと、何か丁度大変そうなのが。
がーんばーれよー。
[ものすごく他人事のように、隠れた場所から声だけかけた。]
[力を使い、翠の目は暗く闇を帯びる。
背をそり、羽根を生やす。]
[答えはしない。]
[ただ、微笑んで、呪文を唱える]
飛べ
[地面の石が、浮かび、窓へと飛んでゆく。
いつのまにか指先は噛み切られ、僅か赤い。]
理屈としては通っておるの。
< この場において、それ以上老竜に言及することは叶わない。
エーリッヒに視線を向けようとした刹那、再び硝子の割れる音。水の盾に防がれ、飛沫となって散り失せる >
――…、
< 闇に紛れ仄かな灯りの生む薄い影が蠢き、
靄の如くに猛る水竜――ナターリエに絡みつかんとする。
現状で闇と影の違いを察せるのは、対たるものか、影輝の力を宿した剣を持つもののみか >
―東殿/回廊―
[影輝の竜がショールを掴んで退くのを視界の端に、機鋼の仔竜の光る左ではなく右の腕を掴もうとした。
だがその前に光る腕が上がる]
――…!
[首筋までの侵食と幾何学模様に目を見張り、記憶に刻もうと伸ばした手が鈍る]
機鋼の!
話は後よ!
[エーリッヒから何事か叫ばれたが、ナターリエにそれに反応する余裕はない。
左手の盾で、相手の一撃をなんとか受け、右手に生み出すのは、丸ノコ]
……ダイヤモンドすら切ることの出来る水を、舐めてもらっては……。
[啖呵を切りながら、ダイヤモンドカッターの一撃を食らわそうとしたときに、窓の外から飛んでくるのは、多量の水の矢]
……くっ!
[瞬時にダイヤモンドカッターを解いて、そこに集まった水を、自分の周囲を包む泡の盾と変えて、それを防ぐ]
[呼応するような影に、羽根で闇を打つ。
闇は姿を変じ、蝙蝠に。]
[音を立てて、その窓めがけて飛んでゆくのを見る。]
こちらに、来たらどうですか――?
[口唇に笑みが浮かんだ。]
[ナターリエの前で、光は網のように展開して、攻撃の力が触れると、瞬時にその反属性、或いは等価の属性を造り出して中和していく]
オトフリート…さん、が?
[疑いの中にはあった人物、限界までの力を使い、焼き切れそうな意識の中で、その名を聞いた]
[頭の上に置かれた手。
いつもなら、撫でんな、と振り払う所なのだが、どうにもいつもとは違うようで]
……は?
なにその、訳のわかんないの?
[クレメンスの言葉は、封じられし記憶に関わるもの。
『消えた』母竜と、彼女から受け継いだ『力』。
嵐竜王からの、『諌め』の傷痕。
成長の滞る身体。
それらを結ぶのは、齢50に満たぬ仔竜には、余りにも残酷に過ぎた過去の出来事。
封じられたそれは、目覚めを拒否し、頭痛という形で振りかかり]
……あ、れ?
[その場に、ぺたり、と座り込んだ]
砂塵・蜘蛛網!
[馬の脚に絡みついた砂はすぐさま蜘蛛の巣のように広がり、その身体を覆おうと浸食を始める。絡みつけばその動きは鈍ることになろうか。
それを相手している間にも別方向から何やら攻撃が続いていて。それを防いでいたナターリエの言葉を聞く]
オトフリートじゃと!?
早く止めねば…!
[そう紡ぐ間にも続いて石がこちらへと飛んでくる]
ええい、次から次へt……。
[言いかけて、ハッとノーラへと視線を向けた]
止めよ、ノーラ殿!
[叶うなら、纏った砂がナターリエへと向かう影を抑えんとうねりを上げる]
だめ、だ、オトフリートさん。
[届くはずもない言葉を口に乗せる]
剣は、剣の力は、本当に、危険……
[うわごとのように、それは聞こえたか]
ティル殿…っ?!
[ぺたりと座ったティルに、駆け寄った。
クレメンスの手が何かしたようには見えなかったから、驚いた表情で。
手を伸ばすも癒しの技も使えぬ自身には何も出来ないと、小さく口の中で舌打ちをする。]
[泡の盾。左手に生んだ盾とは違い、全方向をカバーすることは出来るが、それに伴い、強度は弱い。
ましてや、「揺らすもの」の影響か『力ある剣』の影響か、力を強化したものの攻撃を受けきるには弱すぎた]
―――まずい、か!
[防いだと思った、次の瞬間には、その泡の盾を破り、ナターリエへと襲い掛かる水の矢。
致命傷だけは避けるように、自らの体を変容させようとしたとき―――光の幕がナターリエを包んだ]
……!?
[それは、攻撃の力が触れると、瞬時にその反属性、或いは等価の属性を造り出して中和していく]
この力……?
卵…。
[思わぬ呼ばれ方に一瞬気が抜けた。
が、その直後]
ティル殿!?
[その詳細までは知る由もなく。だが記憶の封印というものは、方向性が違えども、自らも知るもので]
…予定の通り食堂まで、行きましょう。お疲れなのやもしれません。
[そっと提案してみた]
[動けない様子の機鋼の仔の前に出て、大地の竜の側に寄る]
お手伝いしましょう。
[青年の手が、添うように黒の腕輪へと伸びた。口元には笑み]
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