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教えてやれたら良かったんだけどな。
俺じゃ、力不足だったらしい。
[面目ないな、と苦笑い。]
大丈夫か、嬢ちゃん。
……その髪と瞳、どうしたんだ?
[ブリジットの髪と瞳の色を見て、驚く。]
混沌を望むのか。
[辺りを包む闇は色を濃くして居たが、ベアトリーチェの手にある『鍵の書』の表はそれよりもなお黒く
月明かりを浴びた少女に暗闇を穿ったようにも見える。]
―Kirschbaum―
ごめんね、か……ハーヴェイ、ヴィオレット。
たくさん迷惑をかけた。
[それから、横たわる火の竜を見、
料理を嬉々として注文している風の子を見]
……僕は、また行こうかな。
もうすぐなんだって
[影の王にだけ届くように、小さな声で。]
……必要なだけだよ。
均衡を崩すことも、混沌を齎すことも。
[そう、教えられたのでした。]
新たな世界の創世のために。
え、うん。
[声を掛けられて目をぱちくり。
瞳の色は自分では見えないが、長く伸ばされた髪の色は見えて]
……やーん。
[まだ疲労が色濃く残っている身体をじたばた。
無理に力を使ったせいで変化の維持が甘くなってしまたらしい。
シャラリと鎖が音を立てる]
……誰か一人が悪いわけじゃない……と、思う。
[小さく呟いて、時計を一度額から放す。
異眸は静かに空間の裂け目の向こう、書を抱えた少女に向けられて]
[アマンダはその言葉を聞いて、哀しそうに笑う]
…ベアにとって、この世界は「いらない」んだね…
新しい世界(もの)を望む事は、今ある全て(もの)を捨てる事。
…そこまでして欲しいものは、なに?
[ぴちゃん、と小さな音に睫毛を振るわせる。
それが水の音だったのか。
それとも、どこかの誰かのこことの音だったのか]
…。
[何かを思ったのか、ただ静かに何かを空気に呟き、そして、ふ、とまた瞳を閉じる]
[アマンダの言葉へ、返る言葉を待つ。
精霊にとって、この世界は己と等しく、己は世界の一部。
ミハエルは哀しみこそしないが、怒りをもって。]
『世界』か。
変える方法なんて、他にいくらでもあるはずなのにな。
[ベアトリーチェは、知らないのだろう。
今、彼女が見ている『世界』は、ほんの一部だと言う事に。]
見方を変えるだけでも、世界は『変わる』ものなんだがな。
[ぽつり、と呟き。]
[かすかに、くちびるが動きましたけれども、それは音にはなりませんでした。
“わからないよ”。
そう呟いたのかもしれませんけれども、定かではありません。
ベアトリーチェが眼を伏せて緩やかに左右に首を振り、胸もとからそっと書を離しますと、黒の表紙に記された文字に、銀いろの光が走りました。]
その『見方』を、教えるものが……。
自身の想いに囚われた存在だった……という事。
……それだけで、済ませたくはないけど、な。
[小さく、呟いて。
時計の旋律を取り込み、傷を癒していく]
[ふいに、ぱちりと目が覚めた。
眠ってしまった時と、変わらぬ状況。
あぁ、フィロメーラは。]
…助けに、なりたかった…
[呟きは小さく小さく。]
[左手の鎖に気が付いて慌てて締めなおす。
けれど外れてしまった1本だけは元に戻らなくて。
大分戻ったけれど、やはり少し薄い色彩のまま]
この世界を閉じる。
新しい世界への道を結ぶ?
[聞こえてきた言葉に目を上げた。
ベアトリーチェの顔を見て]
それは本当に、あなたの望むこと、なの?
あなたが欲しいもの、なの?
[届かぬ問いがこぼれる]
新たな世界など必要ない。
流転することも、変わり往くことも、開くことも
私の前では認められない。
私は氷破の精霊。
封印を司るものだから。
[光の粒が舞うのに合わせて、低いところに冷たい霧が漂いはじめる。少女を見据える目は厳しく]
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