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ああ。
まあ……人違い……だとは、思うんだけど、な。
[リーチェと呼んでいた少女がいなくなった後、取り得る全ての手段を駆使して探したけれど、結局見つける事はできなかったから。
そして、昨夜確認した端末のデータは、同一人物であっても……素直に喜べる内容でもなくて。
ブリジットに答える、というよりは、自身に言い聞かせるように、言葉を紡ぐ。
そんな風に意識を集中させていたせいか、続いた小声は聞き取れずに]
[異国の響きへと視線を向けかけ、
小さく、空腹を訴える音が聞こえた。]
あ。
[ぱちり。]
……食べられる、かな?
[猫の方は、問題なく?食べているようだけれど。
机の上に置いていたサンドイッチを、二つ、少女へと差し出す。
後で食べようかと思っていたものだから、具はオーソドックスに、新鮮なレタスにベーコン。]
……。
[先程の声の主に目を戻すと、
どうやら、当の猫の、飼い主らしく。]
ええと。
もしかして、拙いものあげました……?
[恐る恐ると、問いかけた。]
「こちらの建物で待機を。私はこれで」
[広間の前まで来ると事務的に告げて男は去った。
その後姿を面白くもなさそうに見送り、携帯端末を取り出す]
使えないみたいだな。
さて、どうしたものか。
[呟いてポケットに戻し、一瞬悩んだ後広間の扉に手を掛けた]
―…→広間―
[たくさん、たくさん知らない人が増えていく
……けれど、注意はすぐにぶりじっとが差し出す
パンと野菜とお肉…が、一緒にされた食料に向かい。]
[こくこく。]
…………♪
[すばやく頷くと、とてとてとぶりじっとの方へ
お友達を抱えて駆け寄り、
差し出された食料を受け取り…はむり]
…♪
[はぐはぐ]
あ……別に、気にしなくてもいいんだけどな、それは。
[オトフリートの謝罪に、軽く、肩を竦める。
正直、何を話せばいいのかわからない、という部分もあるわけで。
何となく彷徨わせた視線が、新たに広間にやってきた姿を捉え]
と、お。
起きたか。
[大丈夫か? とイレーネに問う表情は、『身内』にしか見せない、穏やかなもの]
[広間には幾人かの人がいるようで。
好奇心と少しの緊張を表すように、床を摺っていた翼は擡げられ。
扉の端からそろりと中を覗いた空色の目は、やがて一点に留まり]
――アーベル?
[そわそわと、翼が緩く開閉する。
ぽつりと落とされた呟きが届いたか否かは分からないけれど]
[イレーネ、と口の中でその単語を繰り返し、それから少女のことを蓮娘(レンニャン)と呼ぶようになったかもしれない。
彼女が嫌そうな顔をすれば、単純にレーネ、と呼んだだろうけれど。
彼女がついてきているのを知らなくて、単純に振り返ったら彼女がいて軽く驚きはしたけれど]
よ。
[そういって、軽く手を振って。
おろおろする片眼鏡の人に、苦笑をひとつ漏らす]
わーるい悪い。
俺ね、ユリアン。ユリアン・フェイ。
よろしくー。
[サンドイッチに齧りつく少女を、固唾を飲んで見守る。
猫への食事は芳しいものではなかったようだから、緊張は増した。
自分用を作ることはあっても、他者に食べさせることなど、滅多にない。ましてや、子供では。
新たに増えた存在に気を配る余裕もないようだったが、大人しく食べている様子に、とりあえずは、ほっと胸を撫で下ろした。]
[名を呼ばれれば、たた――と彼の方へ駆け寄り
問いかけにはこくこくと頷く]
アーベル、アーベル。
お引っ越しした――の?
[彼女にとって、別の研究所へ移される事は多々あった事で。
どうやら、今回もその類の移動だと思っているらしく]
ここに、住むの?
[昨日毛布を掛けた少女が目を覚ましていて、レタスサンドを齧っているのを見ながらすっかり満腹とばかりに口元をミルクとツナでひっちらかしてごろごろ転がる藍苺に肩をすくめ、ポケットからちり紙取り出して拭き拭きしながら]
ん?ああ、違う違う、わかりやすく言うと…うーん。
あれかな。
幾ら可愛い彼女でも、ツナサンドを食べたあとにキスはしたくないって言う微妙な気持ち。
[そんだけ、と笑ってセーラー服の少女に告げる]
[良いんですか?とアーベルに訊ね返すが、言葉の壁におろおろしていたために、おろおろが別の意味に取られたかも知れない。
改めて異国語を話す青年から自己紹介されると]
あ、はい。
ユリアン様、ですね。
オトフリート=ゲルルと申します。
以後お見知りおきを。
[言葉が通じたことにようやく落ち着きを取り戻した。
その後ろに更に気配を感じると、視線を向けてお辞儀をする]
[はぐはぐ]
[寝込んでいた間の食事をとりかえすように
ぶりじっとが差し出した食料を勢いよく食べていれば。
先程自分を”りーちぇ”の名で呼んだ青年の後ろに現われた
…………人?鳥?人に見えるけど、
背後の羽は鳥みたいで。
どちらとも判断できず、目を白黒させる。]
[ユリアンの呼ぶ蓮娘、の響きには最初不思議そうにしていたが。
それが自分の事を指しているのだと分かれば]
れん、にゃん――れんにゃん。
[面白そうにその響きを反芻したかもしれない。
振り向いて少し驚いた様子の彼には小首を傾げて]
ほい、俺ですよ、と。
[名を呼ぶ声に、にこ、と笑って。
駆け寄って来た少女の問いに、あー、と困ったような声を上げる]
いや、俺は引っ越してきた訳じゃなくて、な……。
[自分も状況を完全には把握していない現状を、どう説明したものか、と]
まあ……しばらくは、ここに住む必要がある……かな。
[取りあえず、それはほぼ間違いないので、一つ、頷いて]
[扉を開き、ザッと視線を巡らせて確認する]
はじめまして、の人だけではないみたいだね。
こんばんは。
[誰に向けてともなく軽く会釈を送った]
……!
[猫の面倒を見る青年の答えに、一瞬、固まって、]
わかりやす…… く、
ない、です……!
[そういった話には疎いのか、動揺の気配を滲ませた。]
と、とりあえず、すみません、でした。
[謝罪を短く告げ、人の増えて来た辺りから離れて、最初に座っていた椅子に落ち着く。膝の上に、本を広げた。
意識を他所に向けようとしているらしい。]
お引っ越しじゃない、の?
[『なら何なんだろう?』と反対側に首をこてり。
けれど、単純に同じ場所に住むのだという事実を捉えると]
アーベルと一緒、久しぶり――嬉しい。
あのね、あのね。
前より上手く飛べるようになった、から。
今度、見てね。
[自慢げに背に負った翼をふわりと大きく広げる。
元々翼として生えているものではないそれで
飛べるようになるまで、随分と時間をかけたようだ]
[そう会話をしている中で、ふと自分へ向けられる目線に気付く。
金髪の小さな少女が困惑する様子にぱちぱちと瞬いて]
[更に現れた少年の姿に挨拶を返して。
相手が名乗ろうが名乗るまいがこちらの自己紹介は行う]
[でもそろそろ名前が覚えきれなくなってくる頃かもしれない。
必死に名前を反芻*している*]
はぁい、ユリアンです。
えーと。
よろしく、おっとさん。
[猫を抱えて青少年は笑う。
折角だから彼にも中国名の愛称をつけてみようと思ったのだが二・三首をひねったのはいい音がでてこなかったかららしい。
イレーネが小首を傾げたので、猫の襟首つかんで差し出してみた。
触る?と首をかしげたところで、なにやら小さな少年のような姿見えて更に反対に首ひねる]
ん?あ、いや、別に餌食わせてくれたことは感謝してるんだけど…。
はて。
[そもそも昨日なんて貝紐食べてるし、猫とキスするつもりだって毛頭ないのに何を少女は慌てるのかと首ひねり、本を読む姿ちらりと眺め]
[とは言え。俄かに騒がしくなった広間、意識を本へと集中させると言うのは、なかなか困難なことで。
結局、ちらちらと視線を上げて、周囲を窺う形になる。
異国の言語――世界が変わってからは、異国という概念も曖昧な上に、実のところ、話せはせずともおおよその理解だけならば出来るのだが――を話していた彼以外にも、ここに来てから初めて見る顔が、二つ。
その片方の背には、白い――翼が、あった。
目を見開いて、ゆっくりと一度、瞬く。]
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