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違和感、ですか。
……既に均衡が乱れ始めているせいか、
未熟な身では捉えきれぬようです。
[ 表情は此処に入った時より、殆ど変わりはせぬ。
急に声を止めた機鋼の仔竜の反応に、影の眼差しが向いた。]
外からならば、手立てがあるってこと?
[ 問いは、率直だ。]
[クレメンスの声に、よー、と言いつつ軽く手を振り。
ミリィの言葉に、やっぱり、と返した直後]
……っ!
ピア!
[肩の上、相棒の真上に現れたソレ。
とっさに、反対側の手で払いのけていた。
そりゃもう、思いっきり]
―西殿前―
[たどり着いた先で、黒いふよふよとか言われて、疲れた顔が引きつる。]
げっ。
ここにもいるのかよ混沌のかけら!
それ絶対触るなよ!絶対な!
[つい先ほど、酷い目にあったばかりの身の上。
何時もと違い、口調はやや強くなったか。]
[ザムエルの言葉に、クレメンスの方へと目を向ける。
小さく会釈をして]
いえ、そちらではなく…
[声を、返した時。
ティルが手で払ったものを目の端で捕らえ、体に巻いた鎖を片手でもぎ取った。
その先についた片当てをぶら下げるように、ピンと手と手の間で鎖を張るように持つ。]
…クレメンス殿、ご存知なのですか?
[目はそちらを見たまま、じっと動かない。]
あちゃー…
[さすがにうっかり発言だという自覚はあった。口を塞いだ手で己の顔をぺしんとはたく]
…手だて、と言えるほどのものじゃないんです。それに、確実でもない。
[ノーラの問いには、眉を下げて弱い声で答えた]
黒っぽいものがふよふよと?
[ミリィの言葉に一瞬クレメンスに視線が向きかけたが、流石に違うだろうと考え直す。ティルの言葉には同意するように頷く。
ティルに視線を向けていたお陰で噂の黒っぽいものがティルの肩付近に居るのを視認。払われると同時にクレメンスの忠告が響いた]
混沌のかけらじゃと?
待てクレメンス!
知っているなら話していけ!
[逃げようとする後ろ姿に手を伸ばし、襟首を掴もうとする]
触るな、って、なにっ……!
[クレメンスの方を振り返りつつ問い。
直後、感じたのは、絡みつくような不快感]
……って!
[はっと、視線を向けたのは、今払いのけたモノ。
それは収縮を繰り返しつつ、形を変えていく。
縦に伸びたそれが象ったのは、背に羽根を持つ、巨大な蛇]
―西殿前―
あああちょ、掴むなよザム爺!
[襟首つかまれて足は前には進まない。
じたばたしていたが諦めてぐるり、ザムエルを振り返り、ミリィの疑問にも答える形に。]
混沌のカケラってのは…ああもう詳しい事は後で話すけど!
とりあえず、『俺らが触るとロクなモンにならない』代物だ。
詳しく知りたきゃティルが触ったそれ見てればいい…さ。
[いいながら、観念したように足を止めて。
ティルが触れたモノを、嫌そうな顔で見た。]
[クレメンスを捕まえたザムエルには、思わず親指を立ててさむずあっぷ。
それから巨大な蛇を見上げ、ますます眉間に皺を寄せる。]
……その姿は、私を挑発でもしているのですか?
[声は低く、ピクピクと額に青筋が浮かぶ。]
─西殿前─
[伸ばされた腕はがっちりクレメンスの襟首を掴む]
儂らが触るとろくなもんにならんじゃと?
[言われ疑問符が浮かぶが、クレメンスに倣うようにティルの方を見やる]
!?
何じゃこやつは!
[こちらに敵対意識を見せる羽をもつ巨大な蛇がそこには居た。驚きにクレメンスの襟首を掴んでいた手が離れる]
私もついぞ知覚出来ずにおります。
ティル様は風と親しき方、そちらからも何か聞いているのかもしれません。
[未熟というノーラには首を振り。
言いながらも僅かに自嘲が混じりかけるか]
エーリッヒ殿にも、何かお心当たりが?
[声の弱くなってしまったエーリッヒに、そっと問いかけた]
……それは、誰にでも出来ることではない?
[ 影は手をつけていないカップと顔とを、共に傾ける。]
他に話して有効と思うならば話したらいいし、
不利になりかねないなら、黙っていてもいいと思います。
情報は武器になるけど、時には諸刃の刃にもなるから。
[ 天聖の竜の問いかけの後に、ノーラはそう加えた。]
混沌のカケラって、なんだよそれっ!?
[クレメンスの説明に、ちら、とそちらを見やり。
それから、ふるふるしているミリィの様子にちょっと引いた]
……つか、よりによってなんでこんなのが出るわけ?
[『風雷棒』に宿る、雷撃の気にでも干渉したのかも知れないが、それはさておき]
……ピア、下がってろ!
これ、ちょいと真面目にいかにゃヤバそうだ!
[伸ばした銀のロッドを前方、水平に構えつつ、相手の動きを伺う。
真白の小猿は、案ずるような声を上げた後、常磐緑のマフラーを翻しつつ、肩から離れた]
あ…。
[ノーラの言葉に、口に手を当てた。
どうしても焦りが先に立ってしまい、その可能性を忘れてしまう]
はい、どうしてもお聞きしたいとは私も申しません。
どうか、良いと思われる形で。
[溜息と共に視線が床に落ちた]
[紅い髪が、パリパリと静電気の音をさせて空へと向けて逆立っていく。
その舌から覗く先の割れた舌が、チロリと出て上唇を舐めると、手に持った鎖を頭上で一度振り回し、先の肩当て部分を投げつける。
それは、ピアが避けた後のティルの背中側からじゃっと音を立てて更に先の蛇の尾の横を通りぬけると、くいと手首を引く事でぐるぐると絡みつこうと回る。]
…我が雷竜王殿をも彷彿とさせるその姿、許せません。
[鎖を伝い、雷が走った瞬間
その尾がぐいと引かれ、鎖毎紅い少女の形をした随行者の体は宙を舞った。]
[怒りを露わにしそうなミリィ。ああそうだ、あの形は確かに彼女に馴染みの、そして大切な者の姿に酷似している]
ティルや、気をつけるのじゃぞ!
[混沌のかけらと呼ばれたそれに向かい行く若き風竜。相棒を自分から離し、混沌のかけらへと構えるティルにそう声をかけ、己は木の蔭へと隠れたクレメンスを追う。真白の小猿がこちらに来るようならば、安全を確保する意味を込めて拾い上げることだろう]
クレメンスよ、話してもらおうか?
あれは何で、何故お主はそれを知り得るのかを。
[油断ない視線を向けながらクレメンスに近付き声をかけた]
っと!
[過ぎていった鎖、それを追うよに前へと転がり、距離を詰める。
ミリィの攻撃のタイミングに合わせ、突き上げの一撃を叩き込もうと思ったのだが]
……雷撃の姉さんっ!
[宙に舞う、紅。
体勢を支えるべく風を繰ろうとする所に迫る、牙]
……ちっ!
ざってぇな!
[吐き捨てるよに言いつつ、迎え撃つよにその鼻面に突きを叩き込んだ]
―― 東殿・食堂 ――
…多分、今、ここでは俺しか。
[ノーラの言葉にこくりと頷き]
情報として有効かっていうより、俺も実地に使ったことがない力なので今ひとつ自信が持てなくて。
[情けないです、と苦笑してから、影輝竜と天聖竜に一礼]
お二方とも、お気遣いありがとうございます。出来れば俺のうっかりはしばらくご内聞に願います。
…っっく。
[宙でなんとか体制を整え、壁を一度蹴って地面へと戻る。
体制を整え易かったのは、多分疾風の竜が風を操りかけていた名残だろう。
着地した瞬間、鼻面に突きを放つのを見て、体からもうひとつの鎖と肩当てを剥ぎ取り、二つを同時投げると、宙でそれらふたつが交差してその翼を絡め取った。
パリパリと、青白い音がする。]
…ティル殿、後は尾にのみ気をつけてください!
[翼は押さえたから、と、声を掛けながら鎖に再び雷を通す。]
─西殿前の木陰─
説明しよう!
混沌のカケラっていうのは、実体はなく、知能も殆ど無くて、普段はふよふよと漂う影の切れ端のような物体だ。
だが接触した相手を敵性判断するとモンスターの姿を象り、襲い掛かってくるものだ!
ちなみに生命の海にも出やがったから、おそらく竜郷全域に潜んでると思われるんだぜ!
[そんな解説口調で、木陰から遅まきになった説明を。]
ちうわけで。頑張ってね。
[戦えない身の上では、あとは丸投げレッツゴー。木陰から手だけふりふり]
─西殿前の木陰─
[近づいてきたザムエルには、小さく息をついて。]
…大昔、別の場所で見た事あんだよ。
名を知ったのは、ずいぶん後になってからだけどな。
[微か、逸らした視線はどこか暗い。
が、ザムエルに合わせる時には、疲れてはいたが何時もの快活さを帯びて。]
尤も、普段は竜卿なんかに出てくるモンじゃ無いはずなんだけどな。
あれか、これも竜王が封じられた影響ってやつか?
[そんな事を軽く言ったり。]
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