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[村の近くの森の中。
木々の間から、茂みを掻き分けるがさがさ、という音が響いてくる]
ふいい〜……な、何とか出られたぜぇ……。
無事かー、ヴィント?
[茂みを掻き分けて出てきた青年は、頭に巻いたバンダナについた木の葉を振り落としつつ、自分の肩に向けて問う。
そこにしがみついていたネズミらしき薄いグレーの生き物は、きゅ、と短く鳴いてそれに答えた]
[かじかんで赤くなった手に、はぅと吐息を零す。]
賑やかな…お祭り…。
臨時のお仕事…いただける…かしら……?
[ここであれば対価を求めても就労を拒否される事は無いはず、と淡い期待に震える胸をそっと手で押さえて。
村の門を通り抜け…ようと足を踏み出し]
しっかし、たまんねぇよなあ……。
なんで、一番いい石が手に入る辺りが露天風呂の近くなんだよ……。
おかげで、んなつもりなくても覗きと勘違いされちまうしよー。
[ぶつぶつと文句を言いつつ、ぱたぱたと身体についた小枝や枯れ草を払い落とす。
肩の上のネズミもくしくしくし、と言う感じで身づくろいをした]
ま、苦労した分、イイモン手に入ったし……村に戻って、細工細工っと!
[一通り身なりが整った所で、青年は手にした袋を楽しげに見やりつつ、村へ向けて走り出した]
6人目、ランプ屋 イレーネ がやってきました。
[ランプに火を灯す。
その淡い光に、闇は少しだけ逃げた]
…もうすぐ…よ。
もうすぐ、お祭が始まるわ。
[もう一つ。
ランプに火を灯せば、今度は緑の光が闇を退けた]
[村に戻れば、通りは祭りの準備でにぎわっており、行き過ぎる、見知らぬ人々が気持ちを昂らせた]
おおっと、今年も盛り上がりそうだなー。
[はしゃいた口調で言った所に、『妖精祭り実行委員』とでかでか書かれた法被を羽織った自衛団員に呼び止められ、アンケートを押し付けられる]
はい?
ああ、毎年恒例のコレね。ちょっと待ったー。
■名前:ユリアン・フェーダ
Julian=Feder
■年齢:22歳 ……だった気がする!
■自己紹介:えっと、5年くらい前からだっけ?
村の飾り細工職人に、工房住み込みで弟子入りしてるよー。
あ、これ(肩のネズミ)は相棒のヴィントな。
んー、あと何か書く事あるかなー……あ、細工で作るのは主にアクセサリ関係ね。まだ大した素材、扱わせてもらえねーけど。
って、そんなん聞いてない?
/中補足/
五年前に、村外れに倒れていた所を保護された青年。
過去の記憶を失っているが、それに対する屈託は全くと言っていいほど、ない。
現在は村の飾り職人のところに住み込みで修行中。
師匠の代わりに食事を作ったりもするので、料理は得意らしい。
相棒のヴィントは、保護された当初から彼と共にいる山ネズミ(らしい。詳細不明)で、ある程度は意思の疎通もできるらしい。
[…何度か繰り返された後、闇で満たされていた部屋は、七色の光によって照らされる。
ふと、ドアの軋む音…そして、ガラスのベルが客の来訪を告げた]
ようこそ、あたしのランプ屋へ。
…とは、言っても…アレ、でしょ?
勿論、あたしも参加するわ。
[入ってきた自警団の青年に軽く微笑み…
彼の持つ紙の束から一枚引き抜いた]
…ありがとう。
少し、待っててね?
[テーブルに紙を置き、ペンを走らせた]
7人目、未亡人 ノーラ がやってきました。
[軽やかなオルゴールの音に合わせ、口ずさむ声]
―――Midnight with the stars and you
Midnight at a rendezvous
Your arms held a message tender
Saying I surrender all my love to you..
[3度繰り返したところで、声は止む。退屈とは言え、奏でられる同じメロディに同じフレーズを重ねるのにも飽きてしまったから口を噤んだ]
[此方が歌を止めてもお構いなしに続く微かなメロディと、台所の薬缶のたてることことという音だけが響く]
…あ。
[其処まで考えて漸く思い出した。薬缶の火を止めに台所へと立つ]
[やがて一つ音は消え]
[つかまれた腕に反射的に小さな悲鳴を上げれば、慌てたように頭を下げられて。
驚いて声が出ないまま、祭事実行委員と名乗るその男から説明と共に「妖精祭り参加者アンケート」という用紙を押し付けられていた。]
あの…これを書けば…。
お仕事…探させていただけます…か……?
[人手ならいくらでも欲しい温泉旅館に口を利いてもらえると聞き、ぱっと頬に血の気が戻る。
震える指先で可能な限り大急ぎで文字を綴り、用紙を手渡した]
[やがてカップに注いだ紅茶を飲むでもなく眺めながら、そう言えばそろそろ切ったほうが良いかもしれないと指先で前髪を摘み、目を上げた丁度その時、玄関からノックの音]
[扉を開けて其処にいる男を見留め、穏やかな笑みの形を作った]
こんばんは。何か……嗚呼、もうそんな時期でしたね。
少々お待ち頂けますか?
[尋ねかけた言葉は紙に遮られた。頬に手を当て、もう片方の手で用紙を受け取る]
■名前:ユーディット
■年齢:…17
[小首を傾げて思案した後、ちらりと自分と年端の変わらない人間の書いていた数字を真似して書き込んだ]
■自己紹介:お仕事を…できれば…住み込みのお仕事を探しています…。
…それと………あの………お給料と休暇…を………
[寒さゆえかそれとも他に要因があるのか。
だんだんと文字は震えて…最後には消え入るように]
■名前:イレーナ=クデュリアリ
Elene Kudulali
■年齢:21
■自己紹介:
『ランプ屋「Fairy's fire(妖精の灯)」
実用的なランプから、儀礼用のランプまで、ご所望ならば何でも作ります。』
/中補足/
村の住人。ランプ屋を経営し、一人で暮らしている。
何でも作る、という言葉に偽りはなく、一般家庭にある様なランプも、色ガラスを使った芸術的なランプも作ってのける。
この祭りの時には観光客も訪れるためか、熱心にランプを作っていた。
暇な時には街にランプを売りに行くらしい。
元々の性格が暗めなためか、店でランプを作っていることが多いためか…人付き合いはあまり良いとは言えない様だ。
ほいっと、コレでいいよなっ。
[軽い口調で言いつつ、書き上げたアンケートを自衛団員に渡して、一つ身体を伸ばす]
さあて、とー。
師匠は騒がしいのは好きじゃないとかって言って、でかけちまってるし……。
宿の酒場で済ますかー。いざとなったら、賄い手伝ってもいいしなっ。
[お気楽な口調で言いつつ、のんびりとそちらへ歩き出す。
手にした袋の中で、何かがかちゃり、と音を立てた]
[…アンケートを書き終えると、その紙を自警団の青年に渡した]
はい。
それにしても…毎回出てるんだから、こんなの書かせなくても良いのにね…
年齢の所を1増やすだけよ?
[苦笑する青年と肩をすくめる女。
しばらくして、ガラスのベルは客の帰宅を告げた]
さて、と…
※補足
屋敷しもべ妖精だったが、主人が家を出る直前に紐の切れた靴に苛立って「あっちへ持っていって紐を直しておけ」のつもりで「持って行け」と言い捨てて飛び出て行ってしまった為に職を失った。
思いがけない展開にしばし呆然としていたものの、千載一遇の機会かもしれないと人間界での就職を目指して妖精と縁の深いこの村へとやってきたらしい。
お給料や休暇に憧れている。
なお、妖精なので背が低く、ゆえに実年齢より若く見える。実年齢は乙女の秘密らしい。
御主人様募集中。
■名前:ノーラ=ラヴレス
Nora=Lovelace
■年齢:24歳
■自己紹介:村の方は殆ど御存知でしょうし、今更紹介する程の事も無いのですけど。何時もお世話になっております。
補足)
村の片隅に建つ家で一人暮らし。以前は幼馴染で(自称)冒険家の夫と暮らしていたが、数ヶ月前に何処かの山へと出て行ったきり行方不明。生還は絶望的と言われているが遺体は見つかっていない。
特に職に就いているわけでは無い為、現在は時折村の仕事を手伝う等して生計を立てている模様。
[用紙と引き換えに、宿への道程を簡単に書き込んだ紹介状入りの紙片を渡され]
あ…。
ありがとうございます…ありがとうございます…。
[何度も頭を下げて旅館へと急ぐ。
一生懸命仕事に勤しむも、寒そうだからと靴下を与えられて再び職を失うとは*微塵も思わずに*]
[用紙を渡し、ついでにお茶でもと勧めたが断られ]
[忙しそうながら何処か楽しそうな法被の後ろ姿を見送り、微かにくくと笑い]
そんな時期…か。
[寒空を仰ぎ]
これはいよいよ死亡説濃厚、かしらね。
[まるで他人事の様に呟いた。
オルゴールの音は何時の間にか*止まっている*]
[淡い光をぼーっと見つめていたが、ふい、と視線をドアの方へ]
ご飯、どうしようかしら…
[何のことはない。
考えていた事をぽつりと呟くと、くぅ、と小さな音が聞こえた。
その音に微かに目を見開き…視線を落とすと自分のおなかを撫でる]
…酒場…なら、今の時間なら。
[少し頬を染めたが、ぽつりとごまかす様に呟く。
…ガラスのベルは主人の外出を、部屋にこもる闇に告げた]
[この男はまだ宿屋周辺で迷っていた]
この辺、だと思ったんだが…
[呆れたように鼻を鳴らす馬を撫でて]
そう言うなよルート。
今に始まったことじゃないだろう?
[威張って言うことじゃない]
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