…ごめんなさい。
[しょんぼりした声で謝るが、苦笑ではない笑顔に勇気付けられ。
自分の分も何となくミルクを入れないままに口をつけ]
…やっぱり渋い。
もっと精進します!
[真剣な表情でポットを*見ていた*]
…わかりません。
[左右に一度、首を振り]
ただ、貴方を喪うのは、――嫌だと。
貴方を傷付けるもの全てが、なくなってしまえば。
[伝う緋を掬われるのに、小さく震え]
主、
[ゆらり揺らぐ瞳]
穢れます。
そう、凹みなさんなって。
……ま、これにゃコツがあるからな。
時間やら何やら、ちょっとした工夫で、美味くなるもんだから、さ。
[精進、という物言いと真剣な様子に、軽い口調でこんな事をいい]
有難う
[濃い目の紅茶を受け取って、青い顔が少し笑う。]
[苦めのそれは意識をはっきりさせるのにちょうど良くて。]
…そんなに力まなくても、大丈夫だ。
[と、降りてくるクローディアの姿。]
[何か嬉しげなのはもしかしたら会話を漏れ聞いたのかもしれない。]
[払われなければ]
[口は緋に触れた侭]
[くつり]
[不意に零れた笑い声は]
[篭った音で肩を震わせる]
お前の望みは、私と相反するのだな。
私は……直にでも。
[何をとは]
[言わない侭]
……叶うなら、お前に。
[最上の望みは]
[口頭に上りかけて]
[降りてきたクローディアに、よ、と言いつつ手を振る。
妙に嬉しげな様子に、何となくため息をついて]
なんつか……平和だな、妙に。
[ぽつり、呟く。
その短い言葉は果たしてどこに、何にかかるのか]
[零される笑いに。
浮かぶは困惑の色]
…………マイルズ様?
[揺らめき、震える。
声も、瞳も、身体も]
俺に…?
[声は僅か掠れるか]
[払わずとも、穢れるからと。
もう片手を伸ばすも、触れはせず]
昼間……?
昼間、なんかあったんか?
[シャロンの言葉に、一つ瞬いて。
訝るような問いを。
昼間、馴染みの雑貨屋─ついでに、情報源としても付き合いはあるわけだが─からある程度の話は聞いたものの、そのためにこの場を離れてから、何があったかまではわからずに]
何だか…
[ふと考える]
[名前を忘れたのか聞いてないのか。]
[まぁどちらでもかわないかと思い]
犬嫌いと犬好きの間に妙な険悪な雰囲気が。
[…とても酷い覚え方だった。]
どんな覚え方だ、それ?
[呆れたように言いつつも、誰と誰だか把握できるのは、一体どうなのかと]
……険悪……ねぇ。
[ある意味、それはそれで相反する存在同士っぽいから仕方ないんじゃ、とは。
さすがに、口にはせずに]
……ま、どっちも明らかにワケありだしなあ。
[声は直に消え]
[漸く手から口を離せば]
[其れは]
[紅のように唇を染めて]
……今は止めておこう。
其の内に……
[気付くだろうから]
[言葉は途切れ]
[口許を染める緋を甲で拭う]
[鳶色の瞳に部屋の灯が映り込み]
[其れは金色にも見えるだろうか]
[緑の瞳がその色を認めれば、
僅かに彼の身は怯えを抱くか。
伸ばした手は、自らの腕を掴む]
マイルズ様…
[奇妙に喉が渇く。
それでも、]
たとえ何であろうとも。
俺は、貴方の為ならば。
[その言葉は唇から零れる]
…仕方ないだろ、特別覚えておかなければならないわけでは
[少しすねたような口調]
…犬好きの方が何か隙をうかがっているような。
なんというか…
強者の立場にいたような気もしたが。
[だからその代名詞は(略)]
まあ、確かに覚えててもイミねーかもな。
[それでいいのかと、突っ込みを入れる者はいないようだ]
……へえ……。
[シャロンの説明と、自身の手にしている情報と。
照らし合わせて、状況を分析]
……ま、確かに、あんまり平和じゃねーかも。
そういうものだ。
どうせ旅にすぐに出る。 動く前に。
[と言ったところで、クローディアの苦笑。]
[少し、困惑。]
…星はまだ動いてないんじゃないのか?
[しかし回答はかえらず]
…平和が良いというのに。
[彼の動作に]
[怯えの色が垣間見えて]
[薄い笑みが浮かぶ]
[何処か奇妙に歪んだ]
[其れは今にも泣き出しそうに見えるかもしれない]
[言葉には]
[何も返さぬ侭で]
……下に行こう。
明日には此処を離れる以上、挨拶くらいはするべきだろう。
[彼の横を抜け]
[階段へ向かおうと]
[触れることは]
[もう]
[出来ない]
旅に。
……そう、だな。
その方が……いい。
[呟くような言葉。
刹那、瞳は伏せられたか]
平和なウチに……な。
[言いつつ。
何かを抑えるように、右手をぐ、と握り締めて]
…?
どうかしたか?
[カルロスの言葉、様子に、怪訝そうなまなざしを]
…タバコも分煙とか言ってたのに吸いながらここに入るし。
何かあったか?
[それを捉えれば彼の表情もまた歪みを。
主とは逆に微か儚い微笑のようでもあるが]
[その表情を見るものはいない]
…わかりました、我が主。
[開かれる扉。通り抜ける身体に。
幾度目か伸ばした手は、僅か掠め]
[けれど掴み取る事は出来ない]
いや……なんでもねえよ。
[問いへの答えは、長い嘆息の後。
……その様子を見るクローディアは、僅か、不安めいたものを覗かせたやも知れず。
浮かぶのは、苦笑]
…なんでもないようには見えないが。
[首をかしげ。]
何か、甘いものでも食べるか?
チョコレイトならあるが。
[クローディアの様子にも首かしげ。]
[チョコレートを二人に。]
[僅かに掠める手を]
[気配で感じ取れはしたけれど]
[立ち止まることを]
[心の何処かが望んだけれど]
[足は真っ直ぐに]
[階段に続く廊下を行く]
[一瞬の躊躇いすら見せずに]
ま、気にしなさんなって。
[明るい口調で言いつつ、不安げなクローディアを見やる。
星詠の少女。
彼女には、異なる色彩の瞳が見えるやも知れず。
それに対して向けるのは、その色彩に似合わぬ、静かな笑み]
……チョコ、ね。
甘いのはあんまり食わんけど……せっかくだし、もらっとくわ。