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―工房『Horai』客室―
ひゃ……。
[突然鳴り始めた雷に、小さな悲鳴を上げた。]
やだ、通り雨かと思ったら……。
思ったより強いみたい。
[そうして立ち上がり、少し窓の外へと近づいて、様子を伺う。
雨足は強く、時折光っては暗くなった周囲は強い光に照らし出される。]
―宿屋―
[一通りの戸締りを確認した後]
ユリアンは、どっかで雨宿りできてるか?
[連絡をとる術はなく、それでも村内にいることは間違いないので、
宿に着くことができてなければどこかにいるだろうと]
この天気じゃ、今日は飲みに来る客もいそうにないな。
[外に出て行ったアーベルのことを気にしながら、
タオルを手に裏口の側で戻るのを待つことにした]
─工房『Horai』客室─
ミハエルさんの言う通りだわ。
[自信を持つべき、というイレーネへの彼の言葉に、賛同して頷く。
彼女の話の途中、ミハエルに話題が及べばちらりとそちらを見て]
ふふ、そうそう。
[若干、含むような笑いがあった]
光栄なことだわ。
[そう言って、カップに口を付け]
……5と、3、ね。
なんともびみょーなお答えです事。
[苦笑しながら、ポケットにダイスを戻す。
厩舎の客は、戻らぬ相方に思う所があるようで。
その様子に苦笑しつつ、空いている方の手でもう少し宥めてやり]
ん、多分大丈夫だから、な。
雨も風も、すぐに鎮まるだろうから、な?
[言い聞かせるような口調で言って。
次に向かうのは、薪小屋。
濡れて使い物にならなくなる前にと、勝手口との間を数回往復して、薪を中へと運び込む]
―工房『Horai』/客室―
うん。修道院の子どもたちのことも気になるだろうけど。
でも、君に何かあった方が、子どもたち哀しむと思うよ?
じゃあ、奥へどうっ……―――
イレーネっ!!
[踵を返した直後に鳴った雷の音に、慌てて妻の身を案じ客室へと。
それはまるで、妻の上げた小さな悲鳴を聴きつけたかのよう。
背後の喉の鳴る様な笑みには、気がついているのかいないのか。
客室へ辿り着くと、外を伺っている妻の様子を見て、ほぅっと息を吐いた。]
あんまり窓には近づかない方がいいかも。
通り雨かと思ったけど、嵐に近い感じみたい。
[やはり人目を憚らず、叶うなら妻の身を己の方に引き寄せようと手を伸ばした。]
[響く雷鳴と閃光にぱちりと瞬き、カップから口を離して、窓の外を見遣った]
随分と強いわね。
[悲鳴を上げるとか怯えるような素振りはなく、ただ少し眉根を寄せる]
無理に帰らなくて正解、だったかしら。
―工房『Horai』/客室―
[ゼルギウスに考えていた事を言い当てられ軽く笑った]
よく分かったな。
ん、ああ……、無茶はしねぇよ。
[ゼルギウスに遅れること暫し。
青年が客室へと顔を出す。
先客であるミハエルとカルメンの姿を見つけ会釈する]
邪魔するぜ。
[一言声を掛けてからイレーネへと視線を向けて]
商談の方は無事済んだか?
……と、相変わらずの過保護っぷりだな。
[空が幾ら荒れようと怯えた様子は微塵もなく常のように、
否、夫婦の遣り取りに仄かに呆れたような声で問い掛けた]
─宿屋─
あー……大体、こんなもん、か。
[一通り、薪を移動させた頃には当の本人はずぶ濡れで。
長く伸ばした前髪が張り付くのを、うるさそうに後ろに払った]
っかし、ひっでぇ雨だな……山道の方、何てことなきゃいいんだが……。
─工房『Horai』・客室─
[カルメンの含み笑いは悪天候に気を取られ、気付くことは出来なかった。
雷鳴の後に客室へと戻って来るゼルギウスと、新たな訪問者のライヒアルトに気付けば]
む、ライヒアルトも雨宿りか?
[そんな言葉を投げかけて、会釈に対し頷くような仕草を返した]
―宿屋―
[勝手口の方でずぶぬれのアーベルにタオルを投げてよこして]
ありがとな。
山道か…、一本道だしな。
まぁ、なるようになるんじゃないか?
[アーベルの言葉にそう返しながら、薪を手に]
すぐに風呂沸かすから、風邪引く前に先に入っておけ。
[そうアーベルに言い残して風呂を沸かしに風呂釜の方へと]
─工房『Horai』客室─
[玄関の方からイレーネを呼ぶ声と、急ぐ足音が聞こえ。
そこから推測される通りのゼルギウスの慌てた様子と、人目を憚らずに妻を引き寄せようとする様を目で追い、つい笑みが零れた]
あら、修道士さんだったのね。
ごきげんよう。
[呆れた声に振り向けば、先程の客の正体も知れる。
夫婦に気を使ってか若干顰めた声で、ライヒアルトに会釈を返した]
―工房『Horai』/客室―
…………。
[青年はやれやれと肩を竦めた]
客が居るの忘れてんじゃねぇか。
ま、何時もの事だが……はぁ。
[主にゼルギウスの方に呆れた眼差しを送っていれば
ミハエルから声が掛かり一つ頷く]
イレーネに用があってきたんだが……
難儀な事に降られちまって、な。
あんまり酷い嵐にならないといいけど…。
[嵐になると言う夫には、少し困ったように見上げて。]
クロエちゃん、家に戻ってるかしら。
急に降り出したから、小屋のほうのままなんてことにならなければいいけど。
[湖の近くであれば、そこも荒れるかもしれないと。
彼女の事を心配そうに今は思った。
その思考は、一時幼馴染の声で中断はされる。]
ライ、いらっしゃい。タイミング悪い時に来ちゃったね。
[幼馴染の訪問に、一旦は嬉しそうな顔を見せたものの。
外の様子を思えば、やや困ったような視線を彼に投げたのだった。]
うん、さっき終わった所。
[商談の話をされれば、>>7立ち上がる前に、代金は受け取っており。
雨宿りの旨は、どうぞ遠慮なくと笑顔で承諾を返した少し前の事を思った。]
―工房『Horai』/客室―
[カルメンの挨拶にゆると目を伏せる]
ごきげんよう。
人形作家殿。
――…そろそろ名を覚えては頂けませんか?
[肩書きで呼ばれた事に苦く笑うのは
彼女が村に来てもう三年も経つから]
…そうだね、こんなこと聞かれても困っちゃうね。
今度、君の足に飼い主さんへのお礼のお手紙でも括らせてもらおうかな。
[困ったように首をかしげてみせる蒼鷹に苦笑してこちらも首を傾げ。
怯える自分を励ますような仕草や鳴き声には、青褪めながらも大丈夫だよと微笑んでみせた。]
…でも、今日は。
ちょっと、いつもより荒れがひど…きゃあ!!
[また雷鳴が轟いた。地を揺るわせるようなそれに、叫んで目を瞑り蒼鷹にしがみつくように抱きついた。]
―――――は、は…っ、驚いた……!
幾ら夏場は天候が安定しないからって、
いきなり嵐になる事無いじゃない
[二度目の吃驚に心臓が飛び出しそうになる。足元が縺れかかりそうになると肩を抱きとめられ半ば寄りかかるように凭れ]
ユリアン――――あ、りがと…?
本当、吃驚したよ… あんまり大嵐だとお店が倒壊しかねないや
[助平と想う間も無く、ふらつきが収まる頃合いを見計らい手を借りた。その間指摘するまで肩に手が添えられていると、何故だかくすぐったい気がして。娘は二度三度瞬き暫しの間ユリアンの手指を見つめていた。]
ン――――… いいよ
助かったのだよ、有難う
[転びでもすればまた傷を増やす所だったかもしれない。想うところは有るものの先ずは礼を述べた。]
ごめん、商談の途中だったね…僕のお肌は高いのだから、
君が下心で触れるとすってんてん、間違い無しさ
[そう冗談めかして瑠璃細工の値切りには少し考えたのちに、]
…ふむ、絹織物が此処で売れるか如何か解らないけれど、
担保として貸し付けるのは十分にありだね。
[スカーフを見せてもらうと手触りの好さそうな素材と意匠に、
ほう、と嘆息を漏らす。銀を織り込んだ其れは間違えるまでも無く
高価な物と知れる。]
―宿屋―
あぁ、出ることはできないかもしれないけど、なんかが来る心配もないんじゃないか?
[去り際にけらけらっと笑いながら冗談めかしてそんなこと言ってから、
風呂を沸かしながら]
まぁ、このままずっとってわけには、いかないよな…
[小さく呟いて、ため息の変わりに一息釜に噴いた]
―工房『Horai』/客室―
[身を引き寄せて、流石にそのままとはいかずとも、手を握られ傍にイレーネがあることでやっと本当に安堵したという表情を見せる。]
だって、奥さんは大事なのだもの。
[遅れてやってきたライヒアルトの言葉に、少し拗ねたように唇を尖らすも]
……ん。でも、皆、止まってくれてて良かった。
帰してしたら、ずっと無事かなってやきもきしてたと思うから。
嵐が過ぎるまで、狭い我が家だけど、好きにしていいからね?
[すぐに子どものような笑みを浮かべて、そう告げた。]
紅茶好きな人は多いから喜ばれるはずだよ
ライヒ君なんかは飛びつくかもしれないね
[瓶の中の茶葉はさらさらと白砂のように細かく香り豊かな物。
仕入れるとの言葉に何度も頷き、そうしてほしいと云わんばかり。]
好いなあ…何処の地方で作られたのだろう
[村を出たことのない娘は外の世界に想いを馳せる。こうして品を手に取り、村には無い地方独特の形に触れるこの時期は忙しくも大変有意義なものでもある。ユリアンが持ってきた品々をそれぞれ見つめ、愉しげに瞳を猫のように細めた。]
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