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[ワンピースの胸元をきゅっと握り締め
鞄を腰に跳ねさせながら、別の方向へと、駆けた。
自分の家へと駆け込み、棚をガサゴソと探し。
大きなものを引っ張り出して、胸元へと手を突っ込んだ。]
[独りごちた事を予想外にも拾われて困った顔をしたり。
漏れ聞こえる断片に、絵師って大変そうだなぁなんて感じいったり]
… … …。
[あとどれくらい云々。短いからこそ人の生――]
[ふと止まって、
エーリッヒさまってすぐにしんじゃうの?
とでも訊きたい気もしたが、口にはしなかった]
[生って短いほうがいいのかなー
長いと良いことってあるかなー
あ、それだけ多く絵を描いてもらえるかー]
[そんな事を思考しつつ、泉へ行って遊び**]
[息苦しさが鎮まった後、名を呼ばれたような気がした。
こちら側ではなく、あちら側で]
…………。
[それに引かれるように、ふらり、と移動する。
移動した先で目にしたのは、自分の『絵』と、それを見つめる幼馴染]
……お前もお前で。
一体、何をしたいんだよ……?
[問いは届かず、当然答えなどは返らない**]
[だが、はっとあることに気がつくと、リディの服を探る。
そこには絵筆はなく、周りも見渡しても隠しておけるような場所もない。]
…………ま、さか。リディ一人じゃない?
[呆然とそう呟くと、次に思考が行き着いたのは]
!? ミハエルがあぶねぇ!!
―海水通路―
[駆け抜けて、海が見えるところにつけば、ユリアンが海の中でリディを抱えている。
ミハエルがアトリエのほうに走っていったのは見ていたから事を成した。ということだろうか。
かける足を止めて、息をつく。とにかく絵筆。絵筆が戻れば、思っていたところに、ユリアンの叫び声が届く]
どうしたんだ!?ミハエルがどうだとか聞こえたが、絵筆は?
[こちらへとやってきたユリアンに聞くも、リディを頼むと言われて]
わっかんねーけど、わかった。診療所のほうにつれてっとくからな
[と何かわからないまでもその雰囲気から察してリディを受け取り承諾した声は、ユリアンに届いたか否か]
なん、だ。
[描かれたばかりの絵に、力なく拳を当て。
絵具は既に乾いていた]
…これじゃ、
なんにも、変わらないじゃないか。
[酷く掠れた声が、己を厭う。
この絵は街の為ではなく、己の為に描いたようなもの]
─アトリエ─
[ノックなどお構いなしにドアを蹴破るように開けて中に転がり込むと、そこには絵に向かい何事か呟くミハエル。
…………そして、その背後からミハエルの『ココロのチカラ』を引きずり出さんとする絵筆のチカラの『視覚イメージ』。]
っ!! ミハエル、危ない!!
[まさに絵筆のチカラがミハエルの身体からチカラを抜き出さんとするところで、ミハエルを押し倒し、狙いから外させる。]
[息を落ち着けてからリディを背負い来た道を歩いて戻る]
怖かったのは、溺れたのがか?外に出れないと思ったのがか?
…どっちもかが?…ま、この先ずっとここにいなきゃならないと思うのは結構怖いよな
[一月後、一年後、十年後。それも今までと変わらぬ生活であると想像すると
酷く投げ遣りな喪失感を覚えるが]
自分で試してみてからじゃねえと止まれないだろうけどよ
[昔、父に言われたが、試しきるまで止まれなかった自分。挙句溺れて死にかけたり、それで怒られたり等などあった過去を思い出して苦笑する。
リディを捕まえたことで終わるのだろうか。ただ、絵筆が、絵師が戻っても]
俺らの代で、登れるのかなぁ
…え、
[俄かに騒がしくなる外と。
乱暴な音をたてて開かれた扉]
ユリ…ッ!?
[振り返った先、その名を呼ぶ間もなく。
アトリエがぐるりと回った]
[否、傾いたのは自分のほうだった。
と認識した時には、地面に叩き付けられた後]
…痛、
[ぶつけた頭を擦りつつ、半身を起こし。
困惑の入り混じる目で、ユリアンを見た]
[どんがらがっしゃーんと、傍らに置かれた画材をばら撒きつつも、キッと絵筆のチカラの方に視線を向ける(とはいえ見えてるのはユリアンだけなのだが)と、そちらに右手を翳す。]
……古よりの盟約に従い、抑止の血脈の末裔たるユリアン=エルデミッテが命じる。
心の力を蓄えし絵筆の力よ。今はその力の矛を収めよ!!
[そう叫ぶと、絵筆のチカラはびくんと反応し、ユリアンの右手に吸い込まれていく。
そうしてチカラを吸い取ったその手の平から腕に掛けて、黒い模様が浮かび上がる。]
[それからは何一つ呟くこともなく。歩く。
途中図書館の前を通ったがエルザは既に居ないため帰ったのだろうと思いつつ診療所へいって]
―診療所―
やっほ、ブリジット。って、今回は患者だよ。俺じゃないけど
[いってリディを示せば既に前例があるからブリジットも心得たもの。
ベッドに運ぶ。海で濡れた身体を拭くためにということで、ブリジットに部屋から追い出されたりした後、それらがすんで]
ああ、そうそう、ミリィ先生だけど、助かる…っぽいのかな。オトフリート先生がいうにはだけど
[内容は知らないまでもそれを伝えればブリジットもほっとした様子。絵で封じられた。などがない分不可解だったしな。と同じように安堵して]
んじゃ俺はこれで…ぇ?また手伝うの?
[人手が足りないんです。私が倒れていいんですか。とかブリジットにいわれる。
一人になったことで腹が据わったのだろうか。
とりあえず妙に仁王立ちが似合うようになったのは気のせいだと嬉しい]
いや、まあいいけどね。少しぐらいなら
[結局昨日同様手伝うことに。ただやっぱり女性は強いと*思ったのであった*]
[勿論、己の目には力の動きは見えないから、ただ瞬くだけだったが。
右腕の黒い紋様には、流石に目を見開き]
それ、
大丈夫、なんですか…?
[安堵の息を吐くユリアンの、その腕に手を伸ばし]
[ミハエルの言葉に、ん?と黒い模様を浮かべたままの右手を見やるが、笑顔を浮かべ]
ああ、大丈夫大丈b
【──どくん。】
うぐっ!?
[言葉の途中で突如胸を押さえ、苦しそうに蹲るが、直に意識を失いぐったりと倒れ臥す。
……そして、右手に刻まれた模様がじわり、と肩へ向かって僅かばかり伸びたのに、その場にいたミハエルは気づいた*だろうか*。]
ちょっ、
[頽れるユリアンを止める手は間に合わず。
慌てて両肩を引き寄せ、仰向けにする。
と、]
…え?
[黒が僅かに伸びた気がした。
困惑した顔で見つめた]
[暫く見つめたが、それ以上の変化はない。
ふ、と緑の目を伏せて]
…ごめんなさい。
僕は、守られてばかりだ。
昔から、何も変わってない。
[小声で謝罪を落とした。
気を失ったユリアンに、その声が届くとは思わなかったけれど]
[やがて表の者達が入ってくるのに、はっと顔を上げる]
済みません、手を貸してもらえませんか。
彼を、診療所に。
[そう告げて。
アトリエは残る見張りに任せて、己もその後に*続いた*]
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