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─ 庭園 ─
[殺されるわけにはいかない。>>3:82
その言葉に、浮かべた笑みが深くなる。
どんなものでもそう、生きている限りは生を望むもの。
そこに理由や理屈をこじつけるのはひとだけだ、とは祖父の弁だったか]
[踏み込みはほぼ同時。>>8
僅かに速度で勝るものの、刃は巡礼を捉える事はなく。
とっさに身を引く事で、向こうの一撃も空を切った。
非力ではない、との宣に言葉を返す事はせず、正確さを求めた一撃をかわす事に意識を集中させる。
踏み込まれるぎりぎりまで軌道を見た上で大きく横へと身を滑らせ、急所への一撃は逸らすものの、突き出された剣は身を深く喰い破った]
……やってくれる。
[口の端、浮かぶ笑みはひとのそれか、それとも獣のものか。
は、と一つ息を吐き、唐突に、巡礼の左側へ向けて大きく跳んだ。
隠された左の目、そこに光がないとは知らぬが。
視界は狭いはずとの判断によるもの。
死角との読みは正しく、巡礼の反応は、鈍い。>>9
躊躇う事無く繰り出した刃は、左の肩にあかの花弁を散らした、が]
(……ち。
やっぱ、一口しか喰えんかったのは、厳しいか)
[こんな大立ち回りをしないのであれば、ひととしての食で十分事足りるが。
日中に力を引き出すには、獣としての糧が足りていない。
せめて、天にあるのが陽ではなく月であるなら、と。
横道にそれた思考は集中を欠き、力が足りぬ事とも相まって、振るった刃に伝わったのは軽い手応えのみだった]
(……異端の獣、ねぇ)
[そんな言葉が出るのは、彼が教会に属すものだからか、他に理由があるのか。
ちょっと聞いてみたい気がしたが、そんな余裕はないらしい]
(…………ごめんな)
[ついで浮かぶのは、同胞への言葉。
コエとして発する余力はなく、それが届く事はないだろうが。
もう少し色々と教えてやりたかったのに、という思考は、胸に突き立てられた剣のもたらす冷たさと熱さに飲まれて消えて──]
― 前日・食堂→ ―
はいはい、いますよ。今用意しますねー。
[>>4食堂を訪れた人の気配に気づいて顔を出すと、切って焼いた肉とスープ、キッシュを並べた。
>>3ヘンリエッタには具の無いスープと、キッシュ一切れを出しておいたがまるまる残され後で代わりに自分が食べようと思った。ヒューバートもまたきちんと食事を進めている所から、案外人間って図太いもんだなとは再認したりもしたが。
後でユージーンとハーヴェイが食堂を訪れないようなら様子を見に行った。ただ結果を知る為にという理由が大きかったが。そして、ハーヴェイは死んだのかと知る。]
ところでハーヴェイは人狼でしたか?
あとご飯はどうします?
[問いと食事の有無を尋ねて、望みの通りに給仕した。
答えがどうであれ、笑むようすは何時もと変わりはない。]
[何時もと同じように笑いながら、読んでる本のタイトルを横から覗いた。人狼に関しての本らしく、勉強熱心だねと呟きもしたが。]
そういう姿はサマになってるよね。本当に偉い人っぽい。
ところでさ、ラッセル様。
ラッセル様が金持ちだった頃住んでたお屋敷って、壁が白くて部屋が20くらいあって赤い屋根で、庭に盛大に薔薇のアーチ作ってた所じゃない?
いやだったら、私ここに勤める前に、
ラッセル様と顔あわせた事あったかもねーって思い出してさ。
(強盗に入りにね)
[返事はどうだったか。何時ものように軽口の応酬になっても、何かを告げられても、何時も通りに笑って別れて書庫を出た。]
― 翌朝・ラッセルの部屋 ―
[その日はわくわくしながら眠り、懐かしい夢を見た後、何も変化のない部屋にがっかりしながら目を覚ました。平時と変わらない時間に起きて、着替えて出て、竈に火を入れ湯を沸かしてから各部屋を回った。
ラッセルの部屋を回ったのは、何番目になっただろうか。
扉は少し開いていて、そこから慣れた臭いが漏れ鼻を通ると、あららと思わず口から落ちた。
大きく扉を開き、真っすぐ部屋へと踏み込むと、床には倒れた見慣れた顔が。床は血だらけで靴底はまた血の水溜りに汚れされた。倒れた人の傍らに、屈み込む。
そして初めて傷跡を見て目が丸くなった。]
へー、ほんとに人狼だったんだ…。
[傷跡は、ナイフや鈍器の類では無く獣傷。まじまじと眺めて、珍しい玩具にでも触るように、傷跡をつんと触れてみたりもした。指先が真っ赤な物を拾ったので、ラッセルの服の血の付いてない場所になすりつけたが。
さぞ無念な表情でもしていたか。それとも驚いていたか諦めていたか。
開いたままの表情を暫く感慨深げにみていたが。]
それにしても…。
[オードリーの時と同じように、手を翳し瞼を閉じさせ立ち上がる。]
ちょっと期待してたのになー。
残念。
[何をとは言わなかったが。
誰かが来たのなら惨状を見せて、寝台に乗せるなら手伝わずに任せる事にするだろう。なにせか弱い女手ですからと、笑って言いながら**]
― 庭園→屋敷 ―
[ハーヴェイの亡骸を抱えて向かうのは裏口。
流石に玄関を血で汚すのは躊躇われて。
浴室付近の棚から大きめのタオルを探して、未だ落ちる血を受けるために抱えたそれの下に敷く。
そうして、そのまま、二階の客室、ハーヴェイが使っていた部屋まで運んで寝台へと下ろす]
失礼…また後で参ります。
[生前にしていたように一礼して部屋を出る]
― 二階/自身の客室 ―
[自身の手は汚れたままだったから、一度浴室に戻った。
肩の傷を見遣って、手近にあった桶に水を汲み、タオルを一枚とって自身が使っている部屋に戻る。
肩口から流れた血は止まってはおらず、乾いたそれと絡んで服の袖を張り付かせていた。
上衣と下に着ていたセーターを脱いで、肩から腕、張り付いた赤を拭う。
その後で、寝台のシーツを剥がし、引き裂いて、肩に巻きつけて傷を覆い、縛る]
……着替えはないんですよねぇ。
[などと零しながら、結局、汚れたままの衣服をもう一度着なおす。
不快ではあるけれど、黒を基調にしているためそう血の汚れは目立たない、だろう。
そうして、少し考えた後で部屋を後にする]
― 二階/オードリーの客室 ―
[訪れたのはオードリーが眠る部屋。
手にアーヴァインの時のように本と灰とを携えて]
遅くなってしまって申し訳ありません、レディ。
[謝罪の言葉と共に一礼して部屋へ。
行うのは同じような弔いの儀]
……あなたを殺した相手は裁かれました。
だから、どうか安らかに。
[そう言って、部屋を出て、次に向かうのは……]
― 二階/ハーヴェイの客室 ―
[先ほど、亡骸を安置した部屋に戻る。
携えた道具は一度、寝台脇のサイドテーブルに置く]
「死者に罪は無く、全ての生きとし生けるものは神の愛し子」
と言う人もいますから、ね……
お気に召さないかもしれませんけど。
「仕事」ですし?
[ハーヴェイの顔を覗きこんでそう言って。
そうして、表情を消して、行うのはやはり弔いの儀。
それを終えた後、表情を、変える]
― 二階/ハーヴェイの客室 ―
……あなたが人狼だと言う確信はあるのですけど、ね。
でも、それが無くても、私はあなたを殺したでしょう。
私は、護りたかったんですよ……
例え、あなたが人狼で、わたしの力が敵う者ではなかったとしても。
[人狼を見つけるといった、信じてくれたヒューバートを
いつか必ず家を再興すると信じて疑わないラッセルを
家族を亡くして怯えるヘンリエッタを
行動が不可思議でもどこか憎めないネリーを]
……何の躊躇いも無く手に掛ける「あなた」から。
[ふわり、浮かべるのは場違いな笑み]
私は、それと引き換えに死んでもよかったんですよ。
[誰にも聞こえない告白は、そのまま空に消える]
― 二階/ハーヴェイの客室 ―
[人狼である事を最後まで自白しなかったハーヴェイ。
獣の力ではなく、人の力で最後まで向かってきた、彼]
……あなたは、人で居たかったんでしょうか?
それとも、ただ誤魔化すため?
[そこまで言って、バン、と音を立てて、ハーヴェイの顔の脇に手を落とす]
……せめて、尻尾くらい見せてくれればよかったのに。
そうしたら、もう少しすっきりしますのに。
人狼だと、もっとはっきり判ったなら………
姉さんがされたように、もっと切り刻んで差し上げたのに。
[それこそが、人狼は殺すと明言した、本当の、理由]
― 二階/ハーヴェイの客室 ―
[俯いていたのは、ほんの数瞬。
顔を上げれば、いつもの自分自身に戻って]
……まあ、もう過ぎた事ですしね。
[落とす声もいつもどおりに]
……では、失礼いたします……ハーヴェイさん。
[最後は、やはり生前にしていたように声をかけて部屋を出る]
― 二階/廊下 ―
[部屋を出て、少し歩いた所で呼び止められた>>5]
……ヒューバートさん
[恐らく、硬かっただろう表情が少し和らぐ。
何よりも先に、肩口の傷を見咎められて、それには大丈夫と返した。
問われたのは予想通りの事で、こちらも、簡潔に結果を返す]
オードリーさんを殺したのは、やはり彼でした。
……彼は、恐らく人狼です……最後まで自白はしませんでしたけど。
[最後まで、その言葉で結果は知れようか。
自身がそう確信した理由を話して、最後に落とされた言葉には]
……仕方がありません。でも、これで終わるはずです。
[そう言って、その後わずかながらの会話を交わして別れる。
……終わらないとは、その時は思いもしていなかった**]
― 2階・客間 ―
[何があろうと、如何なろうと、夜は必ず明ける。
光差す部屋で男は緩やかに目蓋を持ち上げた]
……眠れて、しまうのだね。
[あれ程に感情が昂ろうとも。
石に奪い去られた精神力を補う為に身体は自衛行動を取る。
ゆっくりと上体を起こし、溜め込んだ呼気を吐き出した。
それからサイドボードへ手を伸ばし]
書く必要も、もう無い……か。
[それでも頁を手繰り、辿り着くふたつの名前の下。
記すのは此方に残されたメイドの名。隣に「人」の一文字]
[其れを、じっと、見下ろす]
[イザードの最後の当主となった男は、当初からその器では無いと言われ続けていた。
商才には欠け、騙され易く、そして何よりも精神が弱かった。
手にかけた事業はそのことごとくが芳しくない結果に終わった。
甘い話に乗せられ、または虚偽の脅迫に屈し、財産は崩れて行った。
そうして何度目かの強盗に押し入られ、妻を亡くしたその翌日、男は死んだ。
家族の見ている前で、笑いながら自らの喉を裂いた。
遺されたのは空の金庫と多額の負債。
長女は嫁ぎ先を追われ、幼い次女は何処かへ売られた。長男は苦渋の末、家を手放したという。
そうなるより一足先に、次男はその家を出ていた。
滅びた我が家について幾つも幾つも噂話を聞いたけれど、その真偽については語ろうとしなかった。
その代わり己の身分を隠す事も、己を変える事もしなかった]
― 前日/書庫 ―
……うむ、大体合っているな。
部屋数は35だが。
随分と詳しいじゃないか。泥棒にでも来たか?
[人狼関係の本より顔を上げて、声を掛けてきた>>14メイドを見た。
僅かに目を細めつつ、出てくる言葉はいつものように軽口めいて]
ほぅ?
お前のような女に覚えは無いな。残念だ。
[何せ泥棒なら何度も見たから、とは言わなかったが。そもそも泥棒だったかの確証もないので。
とかく何を言われても、いつもの調子を崩す事は無かった]
…… そうか。
奴は死んだか。
[知らされたその時には、然程大きな反応は見せなかったのだが。
ネリーが居なくなった後で、小さく呟いた。
本棚に目を向ける。あの時勧められた本のスペースは未だ空いたままだ。
手元の本に目を落とす。開かれた頁に狼のイラストが載っていた]
……。
[息を吐くと、元の位置に本を押し込み。
食事を取るべく書庫を出て行った]
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