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[おねだりに律儀にこたえるアーベルににっこりと。
視線がゆれているのに気付かなかったのは、向こうにとっては不幸中のさいわいといったところか]
あ、でも、このねこちゃんも可愛いわねっ。
ながぐつ作って履かせたいわぁん。
[ひざを折って覗きこみつつ、手をのばすことはしない]
[ゲルダから大丈夫だと言われると、そうか、とだけ呟き。
表情や声からは安心した様子が読み取れるだろう。
クロエの様子には、やはり彼女もショックを受けているのだろうと思い。]
とりあえず一口だけでも、食え。
それでも、無理そうなら。
せめて、あったかいもんでも、飲むと良い。
何か飲みたいなら、もらってくる。
― 浜辺→教会の方角へ ―
[いつの間にか、陽は暮れていて、潮風が吹きすさぶ。]
…―――。
[風によって芯まで冷えた黒髪を、梳く指先。
くるりと踵を返し、サクサクと音を立てて歩く先。
教会の前に人影を見つけて、微かに目を細めた。]
こんばんは、ウェンデルさん。
……そちらは、キャルさんでしたか。
[どこかに出かけるのだろうか?と、
言葉にはせずに、問いかけるような眼差しを神父見習へと送った。]
ごめん、親方!寝過ごした…ってんあ。
ここ、どこだろ?
[どこかで見たような、それでいて見覚えの無い天井、眠っていたのは見知らぬ寝床。場所の確認と記憶を呼び戻す為に軽く首を振ったが、鈍い頭痛が戻ってくるのみ。]
ああ、そっか。あのまま寝込んじゃったのかな。私。誰が運んでくれたんだろ…?
[記憶をぎゅるぎゅると遡ると、ギュンターの顔が浮かび、その口から発せられた言葉が甦る]
あー、ほんとヤな夢見ちゃったなあ。身体弱るとヤな夢見るってのはほんとだね。どうにも。
なんか飲むだけでも、したほうが良いよ。
[クロエの様子に僅かに苦笑しながら告げて。
ヴィリーが安心したのが解ればにこりと笑みを浮かべる。]
ん、じゃあカヤの部屋に行く?
あたしは酒場のほうにもどっとこうか?
[どっちがいいだろうと首をかしげた。]
[重ねられるヴィリーの言葉に、視線が泳いだ]
ん……その方が、いい、よね、やっぱり。
[食べたくない、と明言はしないものの、遠回しに肯定して]
……あったかいミルクかなんかあると、嬉しいんだけど。
まずはこっち、何とかしないと、さ。
[言いつつ、視線を落とすのは持ったままの水桶]
───森───
〜♪
[鼻歌を歌いながら、少女は楽しげに歩いている。
昨晩の嵐の影響で、森の木々が倒壊しているものも多いが、あまり気にした様子も無い。
以前に森に入ったときは夜半すぎだったので、森の中はかなり闇が包んではいたが、現在の時刻ではそこまで暗くも無く、まだ歩きやすいほうだろう。
それでも、普通の人間が明かりも持たずに入るには多少躊躇するだろうが]
すっすめー すっすめー ものども〜♪
[何やら陽気に歌まで歌いだした]
あっ、そうだわ。
ベルちゃんにききたいんだけど…。
[あつまったひとびとのなかには、知らないかおもあって]
あのとき、ベルちゃんのとなりに居たおんなのこ。
名前、ゲルダちゃんであってるのよね?
それともうひとり、運ばれたこいたじゃなーい?
あの子の名前もきいていいかしらん?
[教会を出てすぐ、声が掛かった]
ん。
……あぁ、学者先生か。
[男は言い、傍らの少女は小さく頭を下げた後、じぃっとライヒアルトを見上げている。
なんとなく物珍しげに見えるかも知れない]
そう、キャル。
なんか眠れねぇみたいなんで、散歩にな。
[そう答えて少女の頭に手をやった。
しかし問い掛ける視線をきちんと受け止めての答えだったかは謎である]
先生はなにしてんだ、んなトコで?
[それから男もまた問いを返す]
[首を傾げるゲルダに、自分も同じように(といっても少しだけだが)首を傾げ]
まだ、寝ているなら。
あまり大勢は、邪魔になる、だろうな。
[そう言っているところにクロエからミルクが欲しいといわれれば、頷いて]
なら、クロエの分と、水差しだけ持って行こう。
お前も、カヤの様子だけでも、見ていくか?
[そう言うとゲルダの方を見て]
…あらぁん?
さっきまで、リィちゃん、ここにいたわよね?
[ふいに視線をめぐらして、その存在がかけているのに気付く]
アル先輩とは別行動のようだったし…。
ちょっとさがしてきたほうがいいのかしら?
[ひざを折った姿勢からたちあがり、窓ごしに宿屋のそとへと顔を出す]
―宿屋・酒場―
長靴って。確かにツィンは賢いけど。
[御伽噺のことを考えていたからだろうか。
別の絵本のことが思い出されてヘルムートに笑う]
…そうですよ。刺繍工のゲルダ。
見ての通りの腕前です。
熱出したのはカヤ。船大工の娘さん。
本人も修繕程度ならできるんですけどね。
[上機嫌で笑顔のままで、ずんずんと散歩。
その足取りは、まるで自分の家の庭を歩くようでもあった。
道という道はそこまで整備されてもおらず、ほぼ獣道のような道ばかりだが、やはり気にした様子も無い]
───。
[だが。
しばらく歩き続け、「その場所」に近づいてい来ると、その心臓が高鳴った]
……。
[先程までの楽しそうな表情はなりを潜め、不安そうな表情に置き換わる]
― 教会前 ―
キャルさんも、こんばんは。
[ウェンデルの応えと、少女のお辞儀に、
律儀に、少女に向けてもう一度挨拶を。
少女の物珍しげな視線には、気にした様子を見せない。
――…そんな視線には慣れているし、
そもそも、いつも気にも止めていない。]
私は、海の様子を見ていましたら、このような時間に。
…――散歩ですか。
[やはり短すぎて、会話としては成立し難い言葉を連ねて、
首を傾げる。]
大丈夫ですか?
[容疑者なのにこの時間に出歩いて大丈夫か?と問いたいらしいが、一人で飄々と出歩いてる学者が云えた口ではないかもしれない。]
[ヴィリーの提案に暫し考え。]
ん、でも……気になるけど、やめとく。
あんまりいっぱい押しかけたらしんどいだろうし。
[ふるふると首を振って遠慮した。]
[───やがて、少女はその場所へと辿り着いた]
……。
[森の中で空けた一つの場所。
広さ的には10mの円ぐらいの大きさだろうか。
自然に出来た場所ではなく、切り株などがちらほら見えるところから、人為的に出来た空間であることがうかがい知れた]
……。
[少女は立ち尽くす。
その瞳は、中央にある一際大きな切り株へと向けられたまま]
[遠慮している様子のゲルダに、ほんの少しだけ考えて]
起きたばかりに、物を持たせるのは悪い気もするが。
お前が、これをもっていってくれないか。
…俺が行くより、お前とクロエの方が、カヤは安心するだろう。
[そう言って、水差しとサンドイッチの乗ったトレイをゲルダに渡し。]
ミルクをもらってくる。
あとは、スープか何か、腹の温まるものがあれば、それももらってこよう。
[そう言うと酒場の方へ戻っていって]
[苦笑しながらのゲルダの言葉には、うん、と頷いて]
気ぃ使ってくれて、ありがと、ヴィリ兄さん。
んじゃ、とりあえず、行こか。
ここで突っ立っててもなんだし、ね。
[水桶を持つ手に力を入れ直し、カヤの部屋へと歩き出す]
んー、多分ここは、おっちゃんの宿の部屋なんだよね。部屋には泊まった事ないけど、確か天井こんなのだったし。うん。
[とりあえず起き上がってはみたものの、まだ足元は軽くふらついて。運んでくれた人の善意を無駄にするのも悪いと思い、ベッドから身体を起こすだけにする。それと同時に軽く腹の虫が無く]
あー…そいやクロエにちゃんとゴメン言わないとな。
[真に謝るべきなのは、其れを思い出した切欠が焼き菓子だった事のはずなのだが、彼女はそこには頭を持っていかない事にした。]
[───……なんでだろう]
[なんだかすっごく悲しい]
[なんだかすっごく寂しい]
[なんだかすっごく腹が立つ]
[なんだかすっごく苦しい]
[何も思い出せないのに、なんで?……───]
[トレイを渡されて交互にヴィリーとトレイをみやり。
兄さんは気ぃつかいだなあと僅かに笑んだ。]
ありがと、ヴィリー兄。
それじゃ、いってくるね。
[しっかりとトレイをもって、クロエに促されれば小さく頷き。
カヤが寝ている部屋へとはいっていった。]
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