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[長く伸びた髪は金糸の如く、
頭を覆う羽根兜と身に纏う甲冑、
そして手には銀に煌めく剣と盾。
閉じられていた双瞳が開かれれば、
その黄金には意志の光が宿る。
――其は名も無き天聖なる君に仕える、戦乙女(ワルキューレ)]
[彼女は溢れた力に押され、地に転がった少女を庇いて立つ]
「……ええ、望みました。」
[その声は鳥の時と変わらず、鈴を転がすかのように。
しかし其処には感情を押し隠すような響きがあったろうか]
[赤い翼ははためいて、青い瞳はそれを見つける。]
輪のなかに戻れぬから、その輪を壊すつもりなのか?
[小さな少女と小さな鳥に、静かに竜は問う。]
……そこまで、過干渉をするか……。
[現れた戦乙女の姿に、呆れたような声を上げる]
それだけの想いを、意思を。
何故、他に向けられん……?
[呆れたようなため息を一つ、こぼしつつ。
傷の具合を確かめる。
時計の旋律に癒され、傷は既に塞がっていた]
……最悪には、備えておくか。
[できれば、やりたくはないが、と。
小さな声で呟いて]
今もか?
[庇い立つ姿に、苗床はも一度問いかける]
今も、それを君は望むか、精よ。
かの女が、何も望むことのない状態で、生きているのだと君は言うか?
そう動かれて、本当に君はそれを望んでいるのか?
[人の子を一度見、苗床はじっと金の目を見つめる。
隙は、ない。
頭の片隅で警告が鳴る]
…子供の姿であるうちに、人の器に留まっているうちに仕留めて置けば良かった。
[アマンダへ答えることはしないまま]
[彼女の目の前で、凪払うように腕を振るった
腕には、鋭い氷の爪。それで、遮るものを斬り払うように]
[迷宮の奥の闇の柱が、びりびりと揺れて、見る間に粉々に砕け散る。傷一つ無く地に立つのは、今は影ではなく、黒衣の神父]
[翠樹の問いに、彼女は揺らぎを抱こうか]
「全ては、食い違ってしまった。」
[金の眼差しは静かな光を湛える。哀しみにも似た]
「私は彼女の望みを叶えるために動いていた筈なのに、
何時しか私は、……私の望みの為に動いていた。」
過干渉の理由、か。
ベアトリーチェに情が移っちまった。とか?
……ありえねえよな、それは。
[何気なく口をついて出た言葉に、苦笑い。]
あ、あ、あ、……
[どう見ても過剰な力。
均衡なんてあったものではないだろう]
うーっ。
[どれだけ無茶をしても避けてきたこと。
でももうそうも言っていられないかもしれない。
右手をそっと左手の上に持ってゆく]
[溢れる光にそちらを見上げる。
眩しいほどの天聖の気。
そして現れたのは――戦乙女(ワルキューレ)。圧倒される]
……!
[けれど、
氷の精が刃を転がる子どもに振るおうとすれば、大地を蹴って]
――させない!
[変じた姿は、大人程の大きさの、額に薔薇色の石を乗せた獣]
食い違っていることに気づいても、君はそれをやめないのかい、フィロメーラ?
[聖なる精に、しづかに尋ねる。]
君は、それに気づいても、
変えられなかったのかい?
……君の手はかの女に届いていたのに。
いや……。
[ハインリヒの言葉に、小さく息を吐いて]
案外、間違っちゃいないかもしれん、それは。
天聖と時空。
この二つの属は、他に心を傾けすぎる事を禁じられている。
無垢であり、また強き力を持つが故に。
……だが、それ故の孤独を持ち。
他に、惹かれる。
……俺だって、例外じゃない。
―遺跡―
[上空から皆の姿を見つけ、降り立とうとした瞬間、
あふれ出した光の奔流に煽られて。
なんとか苗床の横に着地して]
あんた、ベアトリーチェを見捨てる気なのか。
全然良くないよ!
[戦乙女に抱きかかえられた少女の姿を見た瞬間、
ふつふつと今まで感じたことの無い怒り。
――ぱりん。何かが砕ける音がした。]
[左手を握ったまま、オトフリートの方を見る]
対無きが故に強く、対無きが故に弱い属性。
[そしてベアトリーチェを、いや、フィロメーラを見る]
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