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ああ、別に其処まで気を使ってほしい訳ではなくてね…
でもユリアンが良いと想ったのなら遠慮しなくてもさ
[おろおろしながらも、如何しようかと娘はクロエにも同意を向ける。
―――内心としては、きちんと大切に扱えるかの方が解らなく自衛団が考えを改めないのなら…という想いも娘の心中に或る。
だからこそ、愛らしい人形たちが血に濡れることなく、如何か良い人たちにめぐり合ってほしいと望む訳で。]
うん、本当に可愛いよ
[悟られぬように二人へ極めて常の笑みを向けると、手にした本をぎゅうと抱きしめた。クロエに不安そうに思われたのか背を撫ぜられると、有り難うと耳元で囁いて。]
― 宿→自衛団詰め所 ―
[話もそこそこに向かう面々達に声をかけて宿を出る。
宿から其処まで遠くない場所に詰所は建っていた。治安を守る名目よりは寧ろ鉱山で採れる瑠璃の産出量を取り締まる事の方が常の仕事ではないかとも娘は感じていた。だからこそ今回の騒ぎで村を掛け回る団員達の姿に違和感を抱くのも当然の事で。
当然、此処までの道のりも前にも後ろにも団員達が付いてきた事もあり、処置の為された手首を撫ぜながら不安そうに娘は俯く。時折脚の歩みが遅くなる事もあり、後ろに居た人とぶつかりもした。娘は謝りながら詰所内へと急ぐと其処には先程宿屋で処刑の取り決めをした自衛団長の待つ執務室へと一向は通される事となる。]
―――ギュンターおじいちゃん
[団員達の鋭い眼光に萎縮こそすれど逃げるわけでもなく。娘の脚が小さく震えるのは恐怖では無く、得体の知れないものに脅かされた人間の空気で。]
僕の聞きたい事、それは――――…
[震える唇はやや云い淀むが、
それでも言の葉を紡ぐことは辞さず。]
10年前、僕の双子の弟のエドガーが死んだのも
もしかして人狼の仕業だったのかな…
[不幸な事故だったとその時の人は云う。雑木林で野犬か獣に襲われたと確かあの時はそう結論付けられた筈で。…けれど娘は見てしまったのだ。弟が無残な屍に成り果てた事を。
其の時の人狼と、今回の事件が重なるとは思ってはいない。けれど、如何しても近視感を拭う事が出来ず老年の自衛団長に恐る恐る訊ねた。返事が返らずとも言葉が濁されても、其れも一つの答えとして娘は受け入れたのだろう*]
─宿屋・食堂─
あ、それ可愛いよね。
女の子も猫さんが一緒だから寂しくなさそうで。
うん、やっぱりカルメンさんのとこの子は可愛いな。
…あ、そうだね。
もうそろそろ行かないと爺ちゃんも忙しいだろうしね。
ごめんねカルメンさん、また後で見せてもらっても良いかな?
[ゲルダも一緒に人形を見てくれれば、安堵したように微笑んで。
ベッティやブリジットも交えてどれが可愛いなどと話をしただろうか。
背を撫でたことに対してゲルダから耳元で礼を言われれば擽ったそうに微笑んで。
結局自分は明確にどれが欲しいとは言わぬまま、ゲルダ達とともに自衛団詰め所へと向かった。]
─宿屋→自衛団詰め所─
[詰め所へと向かう自分にキーファーはついてきただろうか、ついてこないなら大人しくしてるんだよ?と声をかけ、ついて来るならそっと抱き上げ連れていっただろう。
詰め所へと向かう者達の前後を監視するかのように自衛団員たちにつかれ居心地の悪い思いをしながら道中を行き。
途中ゲルダの歩みが遅くなることがあれば大丈夫かと問い手を差し伸べた。
そうこうしている内に詰め所につき、執務室へと通されれば自衛団長がそこにいて。
ゲルダが自衛団長へと問いたことを聞けば、彼女の憂いの一因を知り驚きに目を見開いた。
かける言葉は持っておらず、彼女の細い肩をそっと支えることしか出来ず、自衛団長の返事を待っただろう。]
[ゲルダと自衛団長の話が終わっても彼女の傍についたまま、連れ立ってきた面々が自衛団長と話すのをただ聞いていて。
結局皆の話が終わるまでゲルダの傍を離れなかった。
皆が帰ろうとする頃合、どうしようか、と悩んでいるところに自衛団長からクロエ、と名指しで呼ばれはっと顔をあげるとこちらを見つめるその人の姿があって。]
ギュンじい、ちゃん。
[話があるのだろう?と問われれば躊躇いがちに小さく頷いた後、言って良いのかどうかわからぬまま、こんな希望を述べた。]
出来れば、爺ちゃんだけに聞いて欲しい。
[その言葉を聞けば周りの自衛団員は止めただろうが、自衛団長はわかった、と頷いて人払いをしてくれた。
ゲルダ達はどういう反応を示しただろう、それに対しては彼女達の方は見れぬままでごめん、と謝罪だけして。
誰かが自衛団長の方を見ていれば、気になるならば聞いていろ、と目配せされただろうか。
そうして、二人だけになった部屋の中。]
ギュン爺ちゃんは、おじいちゃんから、聞いてたんだね。
私の、目のこと。
[その言葉は、問いではなく確認だった。
頷きをもって返す自衛団長をまっすぐに見つめたまま、震える声で言葉を続ける。]
……だから、私を村に置いていたの?
…ごめん、爺ちゃんがそんな人じゃないの解ってるのに。
[自衛団長の返答を聞く前に目を伏せて謝った後。
目を閉じたまま、しばらく逡巡して。]
…でも、私の目は。
生きてる人には意味がないことも、ちゃんと聞いてる?
…そう……なら、良い。私の目は、呪われた目だってことが、解ってれば、良い。
[暗い闇色の瞳が映すのはこの世ならざるもの、骸に残った念や本性。
死者にしか通用しない、この力は、幼馴染の誰にも話したことのないもので。]
爺ちゃんが、私に、この目を使うことを望むなら、私も、覚悟はする。
でも…ごめんね、爺ちゃん、今からは、ちょっと、弱音を言っても、良いかな。
…こんな目を持ってること、ゲルダ達に、ライ兄達に知れたら。
私、嫌われ、ちゃうかな。
この目のこと黙ってたこと、怒られる、かな。
こんな目持ってるくせに、黙って傍にいたって知られたら、私、皆から、どう見られるんだろう。
[そう小さな声で搾り出される言葉は、涙に震えていて。
人狼がいるかもしれないことよりも、自分も殺されるかもしれないことよりも、何よりも。
大切な友人達にどう思われるかが怖くて、*泣き崩れた。*]
─宿屋食堂─
[クロエ>>479が本の内容を保証すれば期待は高まる。
少なくともブリジットの本は巷の評価通りかそれ以上なのだろう]
へぇ、クロエはもう読んだんだな。
[本を入れた荷を担いで準備していれば
人形をめぐる遣り取りが聞こえる。
其処は当人同士の話だろうと青年は口を挟まなかった。
ゲルダに向けられるミハエルの話。
個人的な見え方はあれど説明は上手いものに任せてしまう。
ぼやきに吹き出すユリアン>>484には]
思えねぇし有り得ねぇ。
ってか、そんな例え聞かされる身にもなってくれ。
[げんなりしたようで青年は盛大な溜め息を吐いた]
――…はは。
[ゲルダ>>495に白雪色が似合うと言われれば
意外だったらしく軽く声を漏らして笑った]
―宿屋→自衛団詰め所―
[荷を持って詰め所に向かえば昨日とは明らかに違う空気。
片眉を上げて目を眇め団員達を見遣る。
ゲルダが十年前の話をすれば柳眉を寄せた。
慰めようとしてか青年の手はゲルダの肩へと伸ばされる。
クロエも傍についていたからそれは控えめに
触れたとしても一度軽くであっただろうが]
…………。
[掛ける言葉が見つからないのか黙った儘。
クロエと自衛団長が二人きりになりたいと言えば
クロエに一度案じるような眼差しを送りながらも
渋々といった風情で詰め所を出る]
─村の入り口─
[宿に戻る前に、もう一度入り口の方へ足を運ぶ。
野次馬の姿はその頃には疎らで。
団員たちが復旧の為の作業に追われる姿が見受けられた]
……ん……心配すんな、逃げやしねぇよ。
[物言いたげな自衛団員に短く吐き捨てて、谷の向こうへ視線を向ける]
……伯父貴……無事に降りられた、かな。
[気にかかるのは、降り出す前に発った伯父の事。
もっとも、ここからはそれを知る術はないのだが]
[しばしそうやって、谷の向こうを見つめていたものの。
こうしていても詮無い事と、団員から向けられる視線にため息をついて]
はい、はい。
……宿で大人しくしてますよ、と。
[大げさに肩を竦めながら言って、宿へと戻って行き]
─ →宿屋─
……あれ。
大分ひと、減った?
[自分が離れた時よりも確実に人数の減った空間に、きょと、と瞬きながら呟いた]
―自衛団詰め所―
[途切れ途切れに外に漏れる声。
内容までは聞き取れずただ話が終わるのを待とうとした。
一応保護者としてついて来たという経緯があったから
先に帰るなんて事は思いつかない。
話し声が何時しか泣き声に変われば流石に黙ってはいられず]
――…ちっ。
[舌打ちし出てきたばかりの扉を開ける。
泣き崩れるクロエ>>506が見えて自衛団長を睨みつけた]
住民を守る為にあるんじゃねぇのか自衛団は!
女子供泣かせて如何する!
[彼女が泣く原因が団長にあるのだと思い
啖呵を切ってクロエを庇うように間にはいる]
―宿屋・風呂―
[釜は沸かしていないのでお湯は沸いておらず、使うのは冷水に。
それでも今の状況と季節を考えれば自分にはそのほうがよかった]
たまんねぇな……
[冗談でしたで済む話でもなく、ともすればそれは本気の言葉であり、
その言葉の意味することは集められた誰かもしくは全員が死ぬということ。
一人きりで風呂場にいれば余計な考えも思い浮かんだりもし、失敗したかなという考えもよぎりながら]
本当かどうかより、問題はそっちだろうな。
[集められたのはほとんどが知り合いで、その中でも特に親しい者、その誰が死ぬのもいやだった。
もちろん知り合いじゃなければ死んでもいいというわけでもないのだが]
選べっていうのかい?
[何をとは口にできなかった]
あれは―――
…人や獣に為し得られるものとは思えない
[弟の亡骸は酷く鮮明な記憶として残っている。胸の真中がごっそり奪われたように、雑木林の緑に酷く不釣り合いな赤が辺りを染め上げていた。あれがただの獣に出来ようか。幼いころからの疑問は今に至るまで尾を引き、今ここで娘は答えに到達する。]
もしも僕の目論見が当たっていたのなら…
人狼は、本当に”いる”という事だよね
それでも―――僕は皆の中に狼が居るだなんて思えない
何かの間違いだよ…だから、もう一度調べてほしいんだ
そのためなら僕は何だってするよ、だから……御願いだよ
[娘の懇願は受け入れては貰えないだろうか。答えは返らず、一点張りをするばかりで。]
――――…おじいちゃん
―宿屋・食堂―
[風呂上りに髪をタオルで拭きながら食堂に戻ると人形の話になっていて、
どれがかわいいかと聞かれれば]
んー、これじゃないか?
[おそらく三人とはずれた人形を指したりとかした]
私にはこれが一番可愛いと思うんだ。
このあたりとか、キュートだろう。
[昔から相変わらずの感覚には3人とも首をひねるようなそんなポイントを指しただろう]
─小さな丘─
[顔を伏せた後、当然ながら声を掛けて来る者はいなかった。
監視の名目で自衛団員が着いて来て居たかも知れないが]
────………。
[幾許かの時が経過した後、膝から浮かせるくらいに顔を上げた。
その隙間に腕を滑り込ませ、擦るように動かす]
っ、はぁ……。
……どうすれば、良いんだろうな……。
[人狼に対する恐怖は拭えず。
その対処法についても恐怖は拭えず。
縋れるものも居らず、覚悟を決めるにも至らない。
自尊心の強さ故に、誰かに心情を打ち明けることも出来なかった]
[樹の下に座ったまま、宿屋に戻るかを悩む。
明日には誰を処刑するかを決める、と自衛団長は行っていたか。
今日は自宅へ戻ってしまうことも考えた]
…占い師…霊能者…。
伝承で語られる人狼を見つけ得る者。
……伝承と現実は違うから、ここに居ると言う確証は、無い。
どうやって、見つけろって言うんだよ…。
[呟いて、丘の上から村のある方へと視線を向けた。
遠くに見える村の出入り口。
今は通れない場所。
逃げたい気持ちは多分にあった]
[得られるものが無ければ其れまでで。団長の決意の表れとしての銀の刻印が示されれば其れ以上問う事は無く。娘はそれきり俯いて言葉を喪った。
そうして、詰め寄る人や話を頼む人の話に耳を傾けながら話を済ませるのを娘は唯待ち続けて。
クロエが傍についてた事が嬉しくて娘もまた離れる事は無く。ライヒアルトに案じられ肩に手を伸ばされれば支えて呉れるそれぞれの人達の想いを受け、まだこうして立っていられる事に対する感謝を伝えた。]
ン――――…ごめんね、心配掛けさせてしまったよ
[そうして、クロエが話を切り出す様子に、後を引かれそうに成りながらも渋々承諾をして。]
―宿屋 食堂―
なら、これはとっておくわ。
その気になったら取りにいらっしゃい。
[黒猫と少女の箱、その他にも言われたものがあれば分けて置いておく。
ベッティから指摘されたポイントは女にとっても意外だったらしくやや瞬いたが、その箱も別にした。
それから詰所に向かうという者たちを見送り、食堂は随分と静かになった]
あら、そうだったの。
それじゃ、ここで待たせてもらうわ。
[雑貨屋からはこちらの方が近いはずと、ユリアンに言い、駆け出して行くのを見送った]
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